4歳馬が優勢

東京競馬場は春の5週連続GⅠ開催も終わり、いよいよ夏競馬へ移っていく。先週から2歳新馬がはじまり、クラス編成も3歳以上に変わり、新シーズン突入を印象づける。東京開催は残り3週間。春と夏の境目のような時期に行われるのがエプソムCだ。春の重賞戦線を戦い抜いた馬とこの先に向けて飛躍を誓いたい馬が交わるレースであり、戦力比較が難しい。端境期にある重賞はどれも難解なものが多く、思わぬ波乱も頭に入れておこう。データは過去10年間のものを使用する。

エプソムCの人気別成績,ⒸSPAIA


1番人気は【1-2-1-6】勝率10.0%、複勝率40.0%で信頼度はイマイチ。とはいえ、2番人気【3-0-2-5】勝率30.0%、複勝率50.0%。以下、5番人気までで9勝と上位人気拮抗の図式がそのまま結果に反映されやすい。6番人気以下は20年9番人気1着ダイワキャグニーこそいるが、基本は複勝圏内まで。10番人気以下の好走は同じ年の18番人気3着トーラスジェミニ1頭で、大穴提供の場面はそう多くはない。

エプソムCの年齢別成績,ⒸSPAIA


次に年齢別成績。4歳が【6-5-4-21】勝率16.7%、複勝率41.7%と中心で、5歳【3-2-2-35】勝率7.1%、複勝率16.7%、6歳【1-3-3-30】勝率2.7%、複勝率18.9%と続く。時計が速い東京が舞台ということで、基本は若い馬優勢で組み立てよう。ダービー卿CT1着のインダストリア、3勝クラスを突破したカワキタレブリー、メイS2着マテンロウスカイなど4歳勢に注目だ。

ジャスティンカフェとエアファンディタの末脚比べ

しかし、今年は安田記念を除外になった5歳ジャスティンカフェや昨年のエプソムC2着以来のガロアクリーク、都大路Sを勝ったエアファンディタなど古馬勢も実績馬がそろった。傾向通り4歳中心でいいのか。いま一度考えよう。

エプソムCの前走クラス別成績,ⒸSPAIA


前走クラスで注目はGⅠではなく、GⅡ【3-2-2-14】勝率14.3%、複勝率33.3%。GⅠを戦った馬は宝塚記念へ向かう組を除き大半が夏休みに入るこの時期だけあって、前走GⅡ組が質量ともにいい。前走マイラーズC【1-0-1-7】は京都開催だと【1-0-1-6】。着順の内訳は2着【0-0-1-0】、6〜9着【1-0-0-2】なので、8着エアロロノアが当てはまる。勝ったのは13年クラレントで、マイラーズC8着から巻き返した。エアロロノアは安田記念3着のクラレントほど東京実績はないが、マイル重賞は今年の京都金杯2着など好走歴がある。マイル寄りの適性という意味ではクラレントとの共通点を見出せるので、注意したいところだ。

つづいて前走GⅢ【1-3-5-33】勝率2.4%、複勝率21.4%について。こちらは複穴候補に考えよう。なかでも新潟大賞典【1-2-1-23】勝率3.7%、複勝率14.8%。掲示板を外した組も6〜9着【0-1-0-5】、10着以下【1-0-0-6】とチャンスがある。4歳ヤマニンサルバムは東京芝2000mの白富士Sでサリエラの3着があり、この舞台も合う。左回り巧者ピースワンパラディ、最近は前に行けない競馬続きの3年前3着トーラスジェミニも、道悪で先行策に出るようなら一発を秘める。

インダストリア、ジャスティンカフェのダービー卿CTは【0-0-2-5】複勝率28.6%。3着の2頭はダービー卿CT3着、11着馬で傾向をつかみにくい。ジャスティンカフェは毎日王冠2着があり、舞台適性は問題ない。毎日王冠は前半タイトな流れだったので、ペースに注目しよう。

エプソムCの前走レース別成績(OP・L),ⒸSPAIA


次にオープン・L組の内訳をみる。メイS(モンゴル大統領賞含む)【2-3-0-29】勝率5.9%、複勝率14.7%、都大路S【2-1-1-11】勝率13.3%、複勝率26.7%、谷川岳S【0-0-0-7】が主要なところだろう。

エプソムCの前走メイS着順別成績,ⒸSPAIA


メイSの着順別成績は1〜3着【1-3-0-12】で2着【0-2-0-3】複勝率40.0%なので、マテンロウスカイは買いだ。逃げて目標にされる可能性は高く、逃げ切れるかどうかは微妙だが、自ら流れを作る強みはある。一方、ルージュエヴァイユの10着以下は【0-0-0-2】だが、サンプル数が少なく決めつけは危険だ。切れ味身上の同馬にとって前半1000m通過58.4の平均的な流れからの持続力勝負は合わなかった。再びマテンロウスカイが出走するのでペースは微妙だが、落としてくれるならチャンスはある。前走は直線で不利もあり、良馬場なら見直す余地はある。

都大路Sは京都芝1800mだと【2-0-1-9】勝率16.7%、複勝率25.0%。その着順は2着以内【2-0-1-3】なので、エアファンディタは好走ゾーンに入る。瞬発力に強く、上がり33秒台の競馬でパフォーマンスを上げるタイプで、東京芝1800mも合う。

エプソムCの前走3勝クラス距離別成績,ⒸSPAIA


最後に3勝クラスからここに挑む馬について距離傾向から探る。1800m超【1-0-1-3】、1800m【0-0-1-2】、1800m未満【0-0-0-3】で、1800m以上からここに挑む馬を買いたい。東京マイルを勝ちあがったカワキタレブリーより東京芝2000mを勝ったレインフロムヘヴンをピックアップしよう。

2023年エプソムCに関するデータ、インフォグラフィック,ⒸSPAIA


ライタープロフィール
勝木 淳
競馬ライター。競馬系出版社勤務を経てフリーに。優駿エッセイ賞2016にて『築地と競馬と』でグランプリ受賞。主に競馬のWEBフリーペーパー&ブログ『ウマフリ』や競馬雑誌『優駿』(中央競馬ピーアール・センター)にて記事を執筆。Yahoo!ニュース個人オーサーを務める。新刊『テイエムオペラオー伝説 世紀末覇王とライバルたち』『競馬 伝説の名勝負 GⅠベストレース』(星海社新書)に寄稿。



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