11人の日本人王者のうち7人が初防衛戦で敗戦
プロボクシングのWBC・WBOスーパーバンタム級1位・井上尚弥(30=大橋)が7月25日に東京・有明アリーナで同級王者スティーブン・フルトン(28=アメリカ)に挑む。勝てば、日本では井岡一翔(34=志成)に次いで2人目の4階級制覇となる大一番だ。
日本ではこれまで11人の世界スーパーバンタム級王者が誕生している。団体別に時系列に並べたのが下の表だ。
改めて振り返ってみると個性派の王者が多いが、意外なほど防衛回数が少ない。11人のうち初防衛戦で敗れて無冠となったのはロイヤル小林、畑中清詞、佐藤修、李冽理、下田昭文、小國以載、久保隼の7人もいるのだ。
長谷川穂積はウーゴ・ルイス(メキシコ)と真正面から打ち合ってバンタム級、フェザー級に続く3階級制覇を果たし、防衛戦を行わずに引退。2018年にWBC暫定王座を奪った亀田和毅は次戦で正規王者レイ・バルガス(メキシコ)に判定負けした。
岩佐亮佑は2019年12月のIBF暫定王座決定戦で、現WBA・IBF王者マーロン・タパレス(フィリピン)を11回TKOで破って2度目の戴冠となった際はコロナ禍で防衛戦を行えず、2021年4月にムロジョン・アフマダリエフ(ウズベキスタン)との統一戦で敗れている。いずれにしても防衛回数は「0」だ。
これは単なる偶然ではないだろう。最軽量のミニマム級やライトフライ級、フライ級などに比べると、スーパーバンタム級はアジアだけでなく中南米選手の層が厚い。畑中清詞が初防衛戦で敗れたダニエル・サラゴサは、あの辰吉丈一郎を2度も破ったメキシコの名王者。久保隼が初防衛戦で敗れたダニエル・ローマン(アメリカ)は4度防衛した。
バンタム級とフェザー級という人気階級に挟まれているが、過去にはロイヤル小林も倒された17連続KO防衛のウイルフレド・ゴメス(プエルトリコ)、3階級制覇のジェフ・フェネック(オーストラリア)、IBF王座を13度防衛したブヤニ・ブング(南アフリカ)、6階級制覇のマニー・パッキャオ(フィリピン)、4階級制覇のエリック・モラレス(メキシコ)、3階級制覇のマルコ・アントニオ・バレラ(メキシコ)、5階級制覇のノニト・ドネア(フィリピン)、シドニー、アテネ五輪金メダルからプロでも2階級制覇したギジェルモ・リゴンドウ(キューバ)ら世界的な強豪がスーパーバンタム級で戦っている。
海外からも高い評価を得た西岡利晃
その中で燦然と輝くのは7度防衛した西岡利晃。バンタム級ではウィラポン・ナコンルアンプロモーション(タイ)に4度挑戦して2敗2分けとあと一歩届かなかったが、スーパーバンタム級に上げて2008年に念願の世界王座を獲得すると、敵地メキシコでジョニー・ゴンサレスを左ストレートで吹っ飛ばし、米ラスベガスでラファエル・マルケス(メキシコ)を下すなど海外からも高い評価を得た。
2012年には、WBCから日本人初となる名誉王者に認定。最後は井上尚弥とも激闘を繰り広げたノニト・ドネアに敗れて引退したが、スーパーバンタム級史上に残る名王者となった。
井上尚弥が挑戦するフルトンはWBO2度、WBC1度と防衛回数こそ少ないが、21戦全勝(8KO)と負け知らずのテクニシャン。さすがの井上でも、バンタム級最後の試合となった昨年12月のポール・バトラー戦のような一方的な展開にはならないだろう。
だからこそ、スーパーバンタム級を制しての4階級制覇には価値がある。「Lemino」で無料生配信される一戦は一体、どんな結末が待ち受けるのか。開始のゴングが待ち遠しい。
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