データで見る「穴候補3頭」

中央競馬では今週から年末までノンストップでGⅠウィークが続く。その端緒が牝馬限定の芝中距離GⅠのエリザベス女王杯だ。

牝馬三冠で女王リバティアイランドの後塵を拝したハーパーや、同期の素質馬ブレイディヴェーグが世代レべルの高さを証明するのか、それとも古馬勢が先輩の意地を見せるのか興味は尽きない。今回もあらゆるデータを駆使し、3頭の穴候補を導き出した。

本題に入る前に、まずエリザベス女王杯を検討する上での大前提を紹介したい。

エリザベス女王杯の年齢別成績(過去10年),ⒸSPAIA


過去10年の年齢別成績を見ると、4歳以下が【9-7-8-74】単回収率125%、複回収率101%に対し、5歳以上は【1-4-1-71】単回収率4%、複回収率25%と雲泥の差だ。ちなみに5歳以上馬の好走6例のうち、実に4例は前年3着以内のいわゆる「リピーター」だった。

牝馬特有の成長曲線によるものか、GⅠ実績のある既成勢力が健在を示すことはあっても、5歳秋に新星登場というケースはほぼない。4歳以下の若い馬を中心に見ていくのがよさそうだ。


「前哨戦仕様」からのモデルチェンジを ライラック

穴候補1頭目はライラック。コースは違えど昨年の2着馬であり、前走は府中牝馬Sに出走して3着だった。

府中牝馬S組の条件別成績(過去10年),ⒸSPAIA


過去10年のエリザベス女王杯において、前走府中牝馬S組の成績は【4-5-3-40】複勝率23.1%。特に条件を絞らなくても単複回収率は100%を超えていて、ステップレースとしてよく機能している。ここをさらに掘り下げる。

より注目したいのは府中牝馬Sに「馬体重+4キロ以上」で出走していた馬。単回収率は227%、複回収率も132%と非常に優秀だ。さらに冒頭で述べた「4歳以下」の前提を加えると【3-2-3-12】複勝率40.0%、単回収率375%、複回収率218%まで上昇する。

つまり、前哨戦はやはり「前哨戦仕様」とでも言うべきか、少し余裕を持たせたカラダで走り、そこからエリザベス女王杯へ歩を進める臨戦過程が理想的というわけだ。

であれば、府中牝馬Sに前走比+18キロで参戦し、0.1秒差3着だったライラックがまさにイメージと合致する。春はやや振るわなかったが、日経賞4着、目黒記念9着、宝塚記念17着といずれも牡馬混合のGⅡ、GⅠにぶつけた結果でもある。牝馬どうしの2200m戦ならGⅠでも上位に食い込むだけの力はある。


「前走大敗も上がり3位以内」は複回収率249% サリエラ

2頭目はサリエラをピックアップ。全姉にこのレース2着のサラキア、半兄にGⅠ馬サリオスがいる超良血馬だ。

エリザベス女王杯の前走内容別成績(過去10年),ⒸSPAIA


エリザベス女王杯は前走着順があまりアテにならないレースで、前走4着以内【8-6-6-82】単回収率45%、複回収率55%に対し、同5着以下【2-5-3-63】単回収率109%、複回収率86%。好走率は前者の方が高いものの、回収率は前走大敗組の方が高い。前哨戦で負けてしまった馬たちがファンの想像以上によく反撃しているということだ。

対照的に重要なファクターとなるのが前走の「上がり」。前走上がり4位以下だった馬は【4-5-2-77】複勝率12.5%、単回収率22%、複回収率47%と低調だ。直線が長い京都外回りを舞台とする(あるいは差し競馬になりやすい阪神芝2200m代替の)レースだけあって、「直線も伸びてなかった」という負け方をした馬は苦戦を強いられている。

ここに穴を生む盲点がある。「前走5着以下に敗れたが、上がり3位以内で伸びてはいた」という馬が【2-2-2-10】複勝率37.5%、単回収率500%、複回収率249%。なお、これも4歳以下なら【2-2-2-5】とさらに好走率がアップする。

今年、唯一これに該当するのが新潟記念上がり3位タイ7着のサリエラだ。やや物足りない敗戦に映ったが、牝馬で55.5キロという厳しめのハンデに加え、中間にザセキのアクシデントもあり、本調子ではなかったように思える。今回は変わってくるだろう。


父ジャスタウェイをなぞる4歳秋の覚醒 ルージュエヴァイユ

3頭目はジャスタウェイ産駒のルージュエヴァイユ。このジャスタウェイという種牡馬のデータはなかなか興味深い。

ジャスタウェイ産駒 JRA重賞での年齢別成績(通算),ⒸSPAIA


JRA重賞におけるジャスタウェイ産駒の年齢別成績を見る。2歳時は複勝率25.8%、3歳時は同23.2%で単複回収率も平凡なのだが、4歳になると【2-3-5-17】複勝率37.0%と跳ね上がる。特に4歳の下半期、7〜12月に関しては【1-2-5-5】複勝率61.5%、単回収率594%、複回収率297%。この時期に急成長し、まるで手がつけられない無双状態に入る。

「4歳秋に急成長して無双状態になる」。お気づきだろう。それまで重賞好走級の一頭に過ぎなかった存在が、4歳の天皇賞(秋)で異次元のパフォーマンスを発揮し、三冠牝馬を4馬身置き去りにした。そんなジャスタウェイの現役時代をなぞるかのようなデータとなっているのだ。

充実の4歳秋を迎えたルージュエヴァイユ。愛知杯は重馬場、メイSは直線で進路を失っての敗戦で参考外、近2走は重賞でも十分に戦える姿を見せている。ちなみに、「エヴァイユ」とはフランス語で「覚醒」の意である。

<ライタープロフィール>
鈴木ユウヤ
東京大学卒業後、編集者を経てライターとして独立。中央競馬と南関東競馬をとことん楽しむために日夜研究し、X(Twitter)やブログで発信している。好きな馬はショウナンマイティとヒガシウィルウィン。

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