京都らしい横一列に広がった激戦を

阪神と京都のマイル戦の違いはなんだろうか。同じ1ターンの外回りだが、京都は3、4コーナー登って下り、直線は平坦。対して阪神は残り600mから200mまで緩やかに下り、最後に急坂が待ち構える。どちらも下りを利用して加速すると、京都はゴールまでスピードを維持できるが、阪神は急坂に阻まれてしまう。仕掛けを待ちたい阪神と、先に仕掛けたい京都。どちらもゴール板まで脚を残さないと勝てないが、そのニュアンスは異なる。

昨年の1、2着セリフォス、ダノンザキッドは仕掛けを待つ形で最後まで伸びてきた。一方、先に動いたソウルラッシュは最後に甘くなり、4着に敗れた。ソウルラッシュは重賞初制覇を飾った阪神開催のマイラーズCではあえて直線一気にかけて勝ち切った。前走京成杯AHは好位から積極策で重賞2勝目を挙げており、これは京都のマイルCSに向けた布石になるのではないか。

昨年、末脚にかけてGⅠを獲ったセリフォスも安田記念は前で流れに乗れた。それぞれが前走のスタイルそのままに挑むようなら、京都らしい横一列に広がった激戦も期待できるだろう。データは20〜22年阪神を含む過去10年分を使う。

マイルCSの人気別成績,ⒸSPAIA


1番人気【2-1-2-5】勝率20.0%、複勝率50.0%から6番人気【1-0-1-8】勝率10.0%、複勝率20.0%までは大きな差はない。混戦が多いマイルGⅠらしく、上位6頭はどこからでも入れそうだ。穴は8番人気【1-1-0-8】勝率10.0%、複勝率20.0%あたりまで。10番人気以下の好走はない。ある程度候補は絞れても、その順位づけは慎重にしたい。

マイルCSの年齢別成績,ⒸSPAIA


年齢別では、3歳【3-1-2-30】勝率8.3%、複勝率16.7%、4歳【3-5-4-25】勝率8.1%、複勝率32.4%の二世代が中心だ。ただし、5歳【3-3-4-53】勝率4.8%、複勝率15.9%には注意が必要で、若い馬ばかりで馬券を組むのは危険といえる。

富士Sと毎日王冠、傾向に違いあり

3歳エエヤン、エルトンバローズはどちらも重賞ウイナー。特に後者は毎日王冠を勝っており、勢いを評価しよう。4歳勢は前年覇者セリフォス、ダノンスコーピオン、ナミュールなど実績馬たちが並び、5歳シュネルマイスター、ジャスティンカフェ、ソーヴァリアント、ソウルラッシュ、ダノンザキッドら個性派も黙っていない。今年も上位拮抗となりそうで、取捨選択のセンスを問われるだろう。

マイルCSの前走クラス別成績,ⒸSPAIA


前走クラス別成績を確認する際に、ひとつ注意が必要だ。富士Sは13〜19年がGⅢ、20〜22年はGⅡに昇格しており、数字が両方に入っている。特にGⅢの内訳は、富士S【2-3-1-32】勝率5.3%、複勝率15.8%、それ以外【0-0-0-13】と極端で、ソウルラッシュの前走京成杯AHは【0-0-0-9】とさっぱりだ。

話を富士Sに戻す。GⅢ時代、本番につながったためGⅡ昇格となったわけだが、昇格後は【1-0-1-11】勝率7.7%、複勝率15.4%とそこまで強力ではない。昨年、セリフォスがこのパターンで本番を制したが、主要ローテといっていいものだろうか。

マイルCSの前走富士S着順別成績,ⒸSPAIA


GⅢ、GⅡを合わせ、富士S組の着順内訳を出す。1着【1-1-1-3】勝率16.7%、複勝率50.0%は悪くないが、2、3着【0-1-0-13】と好走ゾーンは限られ、5着【1-1-0-6】勝率12.5%、複勝率25.0%、6〜9着【1-0-0-9】勝率、複勝率10.0%とそれなりに負けた馬の巻き返しもある。5着以下から好走したのは2年連続富士S5着ペルシアンナイトと、7着ダノンシャークだった。

今年は勝ったナミュールが文句なしだ。京都休止中の21年デビューであり、京都は初出走になる。イメージ的には下りを利用したロングスパートと最後の平坦は合いそうではある。ゲートや不利が多いなど鈍い面は不安要素も、適性にかけたい一頭だ。

マイルCSの前走毎日王冠着順別成績,ⒸSPAIA


前走毎日王冠【2-2-2-20】勝率7.7%、複勝率23.1%もみる。阪神代替時【0-2-0-5】複勝率28.6%に対し、京都では【2-0-2-15】勝率10.5%、複勝率21.1%なので、京都に戻る今年はつながりを強めそうだ。阪神、京都を合算した着順内訳は、1着【0-1-0-4】複勝率20.0%に対し、2、3着【2-1-0-3】、4、5着【0-0-2-4】、6着以下【0-0-0-9】。富士Sとは正反対で、勝ち馬や大敗馬より惜敗馬をとりたい。

つまりエルトンバローズよりシュネルマイスターを評価すべきか。ただ、毎日王冠は後半1200m11.9-11.6-11.7-11.4-11.3-11.4と優秀で、エルトンバローズはロングスパートから最後にもうひと脚使ったことになる。父ディープブリランテを想起させる粘り強さが身上であり、早めに動きたい京都は臨むところだろう。シュネルマイスターは阪神向きの最後の最後のスパートがよさそうだが、今年の京都開催のマイラーズCを制しており、適性は感じる。

最後にセリフォスの前走安田記念は【1-1-0-4】勝率16.7%、複勝率33.3%で「GⅠからGⅠ」はマイル路線でも有効だ。3着以内【1-1-0-0】、4着以下【0-0-0-4】なので、セリフォスは有力候補といっていい。安田記念ではレーン騎手が好位につけて新味を引き出したが、同じように強気に行くべきだろう。

マイルCSに関するデータ、インフォグラフィック,ⒸSPAIA


ライタープロフィール
勝木 淳
競馬ライター。競馬系出版社勤務を経てフリーに。優駿エッセイ賞2016にて『築地と競馬と』でグランプリ受賞。主に競馬のWEBフリーペーパー&ブログ『ウマフリ』や競馬雑誌『優駿』(中央競馬ピーアール・センター)にて記事を執筆。Yahoo!ニュース個人オーサーを務める。新刊『キタサンブラック伝説 王道を駆け抜けたみんなの愛馬』(星海社新書)に寄稿。


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