忘れられぬ府中の夕暮れ 2007年アドマイヤムーン

どうしてもジャパンCと聞くと2007年の激戦が忘れられない。アドマイヤムーンとポップロックがほぼ並んで入線し、メイショウサムソンと3歳牝馬のウオッカが最後まで迫った一戦だ。

その日は最終レース後も妙に余韻に浸りたくなり、夕暮れのなか競馬場を歩いていた。17時を過ぎると一面が暗くなり、オーロラビジョンの明かりが芝生を照らして、神々しい雰囲気だったことを今でもはっきりと覚えている。名勝負は何年経っても色褪せることがない。

今年の主役はなんといってもイクイノックスだろう。しかし、牝馬三冠を達成したリバティアイランド、前走からの巻き返しを狙うドウデュース、GⅠ・3勝のタイトルホルダーなど実力馬が出走を予定している。そこで今回はこの3頭にスポットをあて、「打倒イクイノックス」に一番近い馬を探していく。


天皇賞(秋)敗退組の巻き返しが目立つ

まず3頭の前走レース別成績を過去10年データから見ていく。

ジャパンC 有力馬の前走レース別成績,ⒸSPAIA


リバティアイランド 秋華賞【1-1-1-3】
ドウデュース 天皇賞(秋)【6-3-6-36】
タイトルホルダー オールカマー【0-0-1-5】

まずはリバティアイランドが該当する秋華賞組。2018年にはアーモンドアイが2分20秒6の世界レコードで圧勝。20年にはデアリングタクトがGⅠ・8勝のアーモンドアイ、無敗の三冠馬コントレイルとの激闘のなか3着に入るなど、三冠牝馬ならジャパンCでも好走できている。

1986年以降で見ても、秋華賞勝ち馬が次走ジャパンCに出走したときは【2-1-2-1】と好成績を残している。2勝は2012年ジェンティルドンナと18年アーモンドアイでともに三冠牝馬だ。12年のジェンティルドンナは前年の三冠馬オルフェーヴルとの叩き合いを制した。今回イクイノックスが斤量58kgに対し、リバティアイランドは54kg。4kgの差を味方にどれだけ迫れるか注目だ。

次にドウデュースが該当する天皇賞(秋)組について見ていく。特筆すべきは同組が圧倒的に強いこと。古馬王道路線なだけに当然かもしれないが、この点はドウデュースにとって好材料となる。天皇賞(秋)敗退組は当日の人気がポイントで、4番人気以内【5-2-2-7】勝率31.3%、連対率43.8%、複勝率56.3%と好成績を残している。反対に5番人気以下は【0-1-1-29】勝率0%、連対率3.2%、複勝率6.5%と巻き返しが難しい。

14年エピファネイア、15年ショウナンパンドラ、19年スワーヴリチャードが天皇賞(秋)で馬券圏外から巻き返しているだけに3、4番人気でも軽視は禁物だ。

タイトルホルダーが該当する前走オールカマー組は、過去10年で連対した馬はおらず、昨年のヴェルトライゼンデの3着が最高。1986年以降で見ても同様だ。こういったことを踏まえると実力、実績ともに十分と分かっていても、強く推すことは出来ない。


3頭の国内成績を振り返る

ここでは3頭の国内成績を詳しく振り返っていく。

ジャパンC 有力馬の各国内成績,ⒸSPAIA


リバティアイランド 通算成績【5-1-0-0】
ドウデュース 通算成績【5-1-1-1】
タイトルホルダー 通算成績【7-3-0-6】(競走中止を含む)

リバティアイランドは昨年の阪神JFと今年の牝馬三冠でGⅠを4勝。唯一の敗戦が東京競馬場で行われたアルテミスSの2着。このときは直線で進路を確保するのに手間取ったが、最後はしっかりと追い込んできた。2400m以上はオークスしか経験がないが、この時後続につけた1.0秒差はグレード制導入以降の当レースの最大着差。それまでの最大着差がジェンティルドンナの0.8秒差だったことを物差しにすれば、十分すぎる結果だろう。

次にダービー馬でGⅠ・2勝のドウデュース。前走の天皇賞(秋)で初めて掲示板を外したとはいえ、国内での成績は十分。東京競馬場は【2-0-0-1】と得意にしている。意外だったのが、国内の2400m以上のレースは日本ダービーだけということ。馬体の成長も含め、久々の2400mがどうか。

タイトルホルダーは3頭の中では最年長ということもあり、GⅠ・3勝を含む最多の7勝をあげている。2400m以上の長距離戦では競走中止の1戦も含め【4-0-0-4】。長距離戦に強いイメージがあっただけに着外4回は意外だった。しかし、本格化前の日本ダービーと、大外枠に入った2021年有馬記念、海外遠征明けの22年有馬記念の敗退なだけに、過度な心配は不要だろう。むしろ今年の日経賞は8馬身差で圧勝しており、同型のパンサラッサとの折り合い次第では、03年のタップダンスシチーのような激走があるのでは、と胸騒ぎすらしている。


東京芝2400mに強い川田将雅騎手とドゥラメンテ産駒

東京競馬場の芝2400mはとにかくタフなコース。バックストレッチまではほぼ平坦で、3コーナー手前から緩やかな上り坂。3、4コーナーにかけて下り坂で、最後の直線には高低差2.1mの坂が待ち受けている。このコースで馬の力を計りながらコントロールする騎手には、それなりの経験が求められる。

ここでは2018年11月1日から2023年11月19日までに行われた、東京芝2400mの150レースを集計し、騎手と種牡馬の成績を調べていく。まずは騎手別成績から詳しくみていく。

ジャパンC 有力馬の騎乗予定騎手 東京芝2400m成績,ⒸSPAIA


川田将雅【3-6-4-21】勝率8.8%/連対率26.5%/複勝率38.2%
戸崎圭太【8-12-5-56】勝率9.9%/連対率24.7%/複勝率30.9%
横山和生【0-3-0-16】勝率0.0%/連対率15.8%/複勝率15.8%

リバティアイランドに騎乗予定の川田将雅騎手は3勝止まりだが、連対率と複勝率は高い数字を残している。同コースでのGⅠ勝ち(リバティアイランドのオークス)もあるように心配はいらないとみる。

ドウデュースに騎乗予定だった武豊騎手は、今回も怪我の影響で無念の乗り替わりとなった。同馬の騎乗予定は、前走の天皇賞(秋)でも騎乗した戸崎圭太騎手だ。戸崎騎手は美浦所属で当該コースの経験も豊富。3人の中では最多の8勝を挙げており、勝率、連対率、複勝率の全てで武豊騎手(【3-3-2-25】勝率9.1%、連対率18.2%、複勝率24.2%)を上回っている。コース成績の観点からは決してマイナスではない。前走はいきなりの乗り替わりで7着に敗れたが、再び舞い込んだビッグチャンスで逆転を狙っているはずだ。

物足りないのはタイトルホルダーに騎乗予定の横山和生騎手で、美浦所属ながら勝ち星がない。ただし単勝1桁台の馬に4回しか騎乗していない。2着3回を上出来とみるべきか悩ましい。3コーナー4番手以内の先行馬に騎乗したときは【0-3-0-4】と2着3回。当該コース初勝利がジャパンCでも驚きはない。

次に種牡馬別成績を見てみよう。

ジャパンC 有力馬の種牡馬 東京芝2400m成績,ⒸSPAIA


ドゥラメンテ産駒【9-5-6-26】勝率19.6%/連対率30.4%/複勝率43.5%
ハーツクライ産駒【16-11-10-114】勝率10.6%/連対率17.9%/複勝率24.5%

大種牡馬ディープインパクトが【32-29-23-165】で勝ち星トップ。勝率12.9%、連対率24.5%、複勝率33.7%。こう見るとリバティアイランドやタイトルホルダーの父ドゥラメンテの産駒がいかにこの条件を得意としているかが分かる。ドウデュースの父ハーツクライの産駒もハイアベレージだが、ドゥラメンテ産駒の数字の前では少々霞んでしまう。

2012年の再現を期待 相手筆頭はリバティアイランド

過去の秋華賞馬の成績、川田将雅騎手の実績、ドゥラメンテ産駒の得意舞台となれば、やはりイクイノックスの相手筆頭はリバティアイランドだろう。ジェンティルドンナがオークスで見せたパフォーマンスを上回ったことから、同馬がオルフェーヴルを破ったように、イクイノックス撃破の可能性は十分あるとみる。

ジャパンC 有力馬の各種成績,ⒸSPAIA


《ライタープロフィール》
高橋楓。秋田県出身。
競馬のWEBフリーペーパー&ブログ『ウマフリ』にてライターデビュー。競馬、ボートレースの記事を中心に執筆している。

《関連記事》
・【ジャパンC】イクイノックスがGⅠ連勝を伸ばす可能性大 好走候補はリバティアイランドと天皇賞(秋)敗退組
・【ジャパンC】優勝馬の歴代最速上がりはジェンティルドンナの32.8 最強馬決定戦の「記録」を振り返る
・【ジャパンC】過去10年のレース結果一覧