3つのファクターから推奨馬を見つけ出す

先週の京阪杯では「馬体重の減少が少なければキミワクイーン、それ以外ならトウシンマカオを本命視する」と書いたが、キミワクイーンはマイナス10キロで2番人気11着、トウシンマカオは4番人気1着だった。さて、今回は12月2日(土)に中山競馬場で行われるステイヤーズSについて、下記3つのファクターを組み合わせる、コンプレックスアナライズで分析を行っていく。

・レースの好走馬及び凡走馬の共通項を探る「重要データ」
・目には見えない上積みを探る「前走の敗因」
・適性と素質を知るための「血統評価」

特別登録のあった17頭を検討対象とし、過去10年分のデータを使用する。


重要データ:実績より適性

前走レース別成績,ⒸSPAIA


ステイヤーズSといえば芝3600mの重賞で、平地レースではJRA最長距離の重賞だ。こういう特殊な条件では実績や実力がレースの結果に直結しづらく、思ってもいないような馬が好成績を収めたりする。とはいえ、このような条件を走るメンバーは毎回代わり映えせず、すでに勝負付けが済んでしまっていることも多い。

過去10年のステイヤーズSのレース全体の単勝回収率は42%、複勝回収率は55%となっていて、かなり堅い部類の重賞となっている。そんな中でも高配当をつかみ取るためには、前走レース別成績を見るのが有効だ。

まずは最も好走馬を輩出しているアルゼンチン共和国杯組。成績は【5-1-4-32】となっていて勝ち馬の半数がここから出ている。しかし単勝回収率は58%、複勝回収率は47%と回収率ベースで見ると妙味がない。アルゼンチン共和国杯で好走したり見せ場があった馬は、メンバーレベルの下がるここで人気になるのが主な要因として考えられる。

続いて京都大賞典組。こちらは【0-3-2-9】となっていて好走率は高いが勝ち馬は出ていない。複勝回収率も61%で、レース全体の数値よりは良いが、推せるほどではない。

注目したいのは丹頂S組と古都S組(3000m戦のみ)。前者は【2-0-0-8】で単勝回収率164%、複勝回収率42%。後者は【1-1-0-2】で単勝回収率192%、複勝回収率127%だ。丹頂Sは洋芝の札幌競馬場で行われる芝2600m戦、古都Sは芝3000m戦で、どちらもスタミナの要求度が高いレースという共通点がある。

基本的にはアルゼンチン共和国杯、今回で言えば最先着のマイネルウィルトスが最有力馬になるのは疑いようがないが、期待値という面では丹頂S組と古都S組に注目するのが良いだろう。

【前走丹頂Sか古都Sの出走予定馬】
・ジェットモーション
・メロディーレーン
・ワープスピード


前走の敗因:福島記念のダンディズム

ダンディズムの前走は福島記念で、結果は2着。テーオーシリウスが逃げて前半5F59.5、後半5Fが61.4の前傾1.9秒というラップ構成で、福島記念としてはかなりハイペースな流れになった。

その結果、上位入線馬は軒並み後方待機の馬。勝ったホウオウエミーズは追い込みの競馬、ダンディズムも3コーナーまでにジワっと進出して3〜4コーナー中間で捲り上げる形。先行勢は総崩れになり、展開的にはダンディズムに向いたとも言えるが、本馬はスタートでかなり後手を踏んでしまっており、加えて2000mの流れは少々速い感じもあって追走に苦労していた。

前走福島記念組は【0-0-0-3】で相性が悪いが、本馬は2走前が丹頂S2着。今回は3600mへ一気の距離延長となるが上積みの方が大きいだろう。


血統解説:キングズレイン、ダンディズム

・キングズレイン
日本での牝祖は祖母リッスン。リッスンはGⅠフィリーズマイルの勝ち馬で牝祖としての実績は十分。本馬の母タッチングスピーチはローズS勝ちに加えエリザベス女王杯3着、その全弟には共同通信杯3着のムーヴザワールドや菊花賞2着のサトノルークスがおり、リッスンは繁殖牝馬としても優秀だ。このファミリーは3代母のBrigidから世界各国で抜群に繁栄していて、リッスンの枝はこれでも目立たない部類だ。また、日本ではJpnⅠのJBCレディスクラシックを勝ったファッショニスタなどが別の枝にはいる。

この牝系はなんといっても早熟性の高い馬が多いことが特徴。前述のファッショニスタ以外のGⅠ級の馬たちは総じて2、3歳の頃からバリバリ走ってくる。しかし、成長力を兼ね備えているわけではないため、古馬になってから少し尻すぼみな成績になってしまう傾向にはある。

本馬の場合は父がルーラーシップなのでどれだけ成長力を獲得できているかがポイント。ただ、2歳時から完成度の高さを見せており、前走セントライト記念ではあまり成長が感じられなかったことからも、牝系の血が色濃く出ていそうだ。一族の活力は抜群だが、上積みを期待されて人気するようであれば軽視したい。

キングズレインの血統表,ⒸSPAIA


・ダンディズム
日本での牝祖は母ビューティーコンテスト。兄にはOP競走のポートアイランドSを勝利したムーンクレストがいて、繁殖牝馬としての実績は十分だ。牝系を遡ると3代母Sorbusを根幹として世界中で繁栄しているファミリーで、パリ大賞などGⅠ・4勝のBeat Hollow、シュネルマイスターの父KingmanなどGⅠ馬がずらりと並ぶ。

欧州の血統の中では比較的スピードのある一族だが、本馬の場合は3代母からラストタイクーン→シングスピールとつけられており、明らかにタフさやスタミナに適性が振れている。また父はスタミナを持ち、母の血を引き出しやすいマンハッタンカフェで、長距離戦を走るにはもってこいの血統といえるだろう。

既に7歳馬だが欧州血統のマンハッタンカフェ産駒らしくまさに今が充実期。アルゼンチン共和国杯、日経新春杯、目黒記念など中長距離のGⅡレースでは跳ね返されていることもあって、そこまで人気にならなそう。妙味から考えても面白い一頭だ。


ダンディズムの血統表,ⒸSPAIA


Cアナライズではダンディズムを推奨

今回はダンディズムを推奨する。好走データには直接当てはまらないが、2走前が丹頂Sの2着というのは好材料。また、ここにきて力をつけてきていて、10〜12月は【2-4-0-4】とこの時期に強いタイプでもある。7歳馬で現役生活もそう長くはないことから、重賞タイトルに届きそうな叩き2戦目のここで、陣営も最高の仕上げで出してくるだろう。

相手として面白そうなのが、前走丹頂S組、古都S組のジェットモーション、メロディーレーン、ワープスピードの3頭。ただメロディーレーンはどんなレースでも実力以上に人気するので、ジェットモーションとワープスピードを押さえたい。加えて人気どころではマイネルウィルトス。こちらは実績もさることながら長距離適性が高く、押さえは必須だ。

【ライタープロフィール】
貴シンジ
競馬ライター。サラブレッドの血統をファミリー中心に分析する牝系研究家。3つのファクターから構築する「コンプレックスアナライズ」を駆使して競馬予想を行う。WEBサイト『ウマフリ』で「牝系図鑑」も連載中。競馬予想のほか「競馬王」など商業誌での執筆、一口馬主クラブ募集馬やセリ馬の血統分析、血統の魅力の伝承、繁殖牝馬の配合提案などを独自の切り口から行う。

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