MGCファイナルチャレンジ開幕

パリ五輪まで1年を切り、様々な競技で代表の座をかけた争いが熱を帯びてきた。12月3日(日)に行われる『福岡国際マラソン2023』も、男子マラソンの代表選考レースのひとつという側面を持った注目の一戦である。

男女とも3つのイスを争うマラソンの日本代表選手選考は『マラソングランドチャンピオンシップ』(以下、MGC)を中心に展開され、男子では今年10月に東京で行われた同レースを優勝した小山直城と2位に入った赤崎暁の2人がパリ五輪の出場権を獲得している。

そして、残りの1枠は今年から来年にかけて日程が組まれている『MGCファイナルチャレンジ』の対象レースにおいて、「設定記録」を突破した選手の中で最も優れたタイムを出した選手が代表に内定する。なお、「設定記録」を破る選手が出てこなかった場合は、先のMGCで3位に入った大迫傑に最後のイスが回ってくるという仕組みになっている。

今回の福岡国際はファイナルチャレンジの初戦にあたり、残りの選択肢は来年の大阪マラソンと東京マラソン。逆転での代表入りを目指す男たちは、この3つの大会のどこかで「2時間5分50秒」という設定記録を破らなければ、パリへの道が開くことはない。

「2時間5分50秒」クリアした日本人は2人だけ

男子マラソンの日本記録と言えば、2021年のびわ湖毎日マラソンで鈴木健吾が記録した2時間4分56秒。日本の男子として初めて2時間5分の壁を打ち破ったことが記憶に新しい。

その前の日本記録が、2020年の東京マラソンで大迫傑がマークした2時間5分29秒だった。MGCファイナルの設定記録である「2時間5分50秒」をクリアした日本人は、現時点でこの2人しかいない。

今年の東京マラソンでは山下一貴が日本歴代3位となる2時間5分51秒の好タイムを叩き出し、其田健也も同4位となる2時間5分59秒を記録したが、“2時間5分台”もこの2人を加えた4人だけ。パリへの関門はそう簡単に乗り越えられる数字ではない。

ちなみに、今回の福岡国際にエントリーしている日本人の中での自己記録最上位は細谷恭平の2時間6分35秒。所属する黒崎播磨の本拠地・福岡で自己ベストを大幅に短縮する快走が見られるか、パリを見据えた果敢な走りに期待がかかる。

男子マラソン日本人歴代タイムランキング

福岡国際は鬼門?

『福岡国際マラソン』は、1947年に日本のマラソンの父・金栗四三の偉業をたたえ、金栗の故郷・熊本で開催された『金栗賞朝日マラソン』がルーツ。1966年から「国際選手権」として実施されるようになり、長い歴史と伝統を誇る大会として知られている。

その後、2021年の第75回大会をもって終了、長い歴史に幕を下ろすことが決まっていたのだが、急転直下で存続が決定。新たな運営体制を構築したうえで、2022年から後継大会として復活。平和台陸上競技場を中心としたコースはそのままに、新たな歴史を刻んでいくこととなった。

大会記録は2009年にツェガエ・ケベデ(エチオピア)がマークした2時間5分18秒。前年の北京五輪銅メダリストであり、前年の福岡国際の優勝者でもある22歳が2年連続で衝撃の大会新記録を打ち立ててから10年以上、このタイムを破る選手は出てきていない。

それどころか優勝者の記録が2時間5分台だったのも、2017年のソンドレ・ノールスタッド・モーエン(ノルウェー/2時間5分48秒)が唯一。2018年以降は優勝者のタイムでも2時間7分台という決着が続き、昨年の優勝者マル・テフェリ(イスラエル/2時間6分43秒)が久々に2時間7分の壁を打ち破った選手となった。

日本男子の歴代上位タイム十傑のうち8つが2020年代に記録されているように、日本人も高速化が進む世界との差を着実に縮めつつある一方で、この福岡国際だけその流れと無縁となっているのは気になるところ。今年は五輪代表のイスもかかる一戦となるだけに、細谷はもちろんその他の新星の登場も含め、「2時間5分50秒」への挑戦者が続出することに期待したい。

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