2023年新種牡馬リーディング10傑

2023年JRAのリーディングサイアーに輝いたのはドゥラメンテだった。11年間も王座を守ったディープインパクト、その死から4年の歳月が経ち、ついに牙城を崩すものが現れた。しかしそのドゥラメンテも既にこの世を去った。しばらくは群雄割拠の「種牡馬戦国時代」が続いていくことだろう。

そんななか、昨年父として新たな門出を迎えた新種牡馬たち。彼らの実力や特徴を早めに整理しておくことは、今後の競馬界を占う上でも、もっとも身近な馬券検討の上でも重要事項だ。今回は2023年のJRA新種牡馬リーディングを紹介し、主な種牡馬の成績と傾向について分析する。

2023年JRA新種牡馬リーディング,ⒸSPAIA


1位 スワーヴリチャード
2位 ブリックスアンドモルタル
3位 ニューイヤーズデイ
4位 レイデオロ
5位 カリフォルニアクローム
6位 ロジャーバローズ
7位 シュヴァルグラン
8位 アルアイン
9位 モーニン
10位 サンダースノー

栄えある新種牡馬リーディングを獲得したのはスワーヴリチャード。2歳戦開幕からの3か月で11勝、勝率25.0%、複勝率56.8%と産駒が走りまくり、旋風を巻き起こした。11月にはコラソンビートが京王杯2歳Sを制して重賞初制覇、年末には牝馬のレガレイラがホープフルSを勝って早くもGⅠ馬が登場。獲得賞金は2位におよそ1億8000万円もの大差を付けており、文句なしの活躍と評していいだろう。これを受けて今年の種付け料は前年の200万円から大幅アップ、なんと1500万円になることが発表されている。

2位は社台SSが導入したブリックスアンドモルタル。世代最初の新馬戦をテラメリタが制す幸先のよいスタートを切った。6月東京で勝ち上がったゴンバデカーブースはサウジアラビアRCで好時計勝ちを収め、GⅠ制覇への期待も高まったが、ホープフルSは無念の出走取消。大舞台への挑戦は今年へ持ち越しとなる。

3位ニューイヤーズデイはアメリカとブラジルで計5年間の種牡馬生活を送り、GⅠ・4勝馬マキシマムセキュリティなどの産駒を出して日本に輸入された。特別戦勝ちはなく、1勝クラス以上での勝ち星もひとつだけだったが、15頭が勝ち上がる堅実さで上位に食い込んだ。

デビュー前の期待が高かったレイデオロは上級条件で活躍する産駒がまだ出ず4位止まり。クラシック二冠などアメリカでGⅠを7勝したカリフォルニアクロームはこの世代から日本供用。いわゆる「社台・ノーザン系」の生産馬がほぼいない状況ながら5位にランクインしている。

ここからは1位スワーヴリチャード、2位ブリックスアンドモルタルの2頭を中心に、各種牡馬の特徴と馬券的な狙い時を掘り下げる。

2023年JRA新種牡馬リーディング,ⒸSPAIA

今年はさらなる飛躍の予感! 1位スワーヴリチャード

スワーヴリチャード産駒の成績,ⒸSPAIA


スワーヴリチャード産駒は出走全馬の単勝回収率が147%(※成績は2023年、JRAでのもの。以下同じ)。今はまだ種牡馬としての能力に人気が追い付いておらず、身も蓋もないが「全て買う」でもいい段階ではある。ただ、遅かれ早かれその状況はなくなってしまうだろう。

得意条件はまず「東京芝」。勝率28.6%、複勝率61.9%、単回収率157%、複回収率108%。左回りの広いコースを得意とするのは父であるハーツクライの産駒によく見られる特徴でもあり、現役時代に日本ダービー2着、ジャパンC制覇があるスワーヴリチャード自身とも似ている。

また距離別成績は「1700m以下」が勝率14.1%、複勝率37.6%、単回収率64%、複回収率80%に対し、「1800m以上」が勝率19.7%、複勝率48.5%、単回収率254%、複回収率123%。長めの距離で驚異的な成績を残している。

以上の2点から、オークスや日本ダービーの舞台となる東京芝2400mはドンピシャである可能性が高い。レガレイラやアーバンシックへの期待は否が応にも高まる。裏を返すと、中距離戦が少ない2歳戦の時点でこれだけ走っていることが末恐ろしい。今年はさらなる飛躍が見られるのではないか。

現役時代とは裏腹にダートで真価 2位ブリックスアンドモルタル

ブリックスアンドモルタル産駒の成績,ⒸSPAIA


ブリックスアンドモルタル産駒は少し取り扱いに注意が必要だ。勝率10.3%、複勝率27.7%は決して悪くないが、単回収率62%、複回収率62%はいまひとつ。ただし、ここにはちょっとしたカラクリがある。

成績を見ると、芝は勝率9.2%、複勝率24.4%に対し、ダートは勝率13.9%、複勝率38.9%。明らかに後者がいい。ところが出走数は芝119戦、ダート36戦。そう、芝ばかり使われているのだ。

ブリックスアンドモルタルは現役時にアメリカの芝GⅠを5勝した馬。おそらく芝での活躍を期待して輸入されたはずで、そのイメージから産駒も主に芝を使われているが、実際はダート向きなのではないか。実際、イーグルノワール(兵庫JG1着)やアンモシエラ(ブルーバードC1着)といった砂の活躍馬は既に出ている。ダート戦に使う割合が増えれば、数字も上がってくると見る。

ほか、気を付けたいのは2点。「新馬戦」と「距離延長」はかなりの苦戦傾向にある。どちらも単回収率は30%を切り、複回収率も40%台。見送るのが賢明だ。これらは気性的な難しさからくるものだと推察される。この反対で、デビュー2戦目以降に「同距離または距離短縮」で臨むケースは勝率17.2%、単回収率119%。ここが狙い時だろう。

3位〜10位の種牡馬はこう狙え

3位〜10位の種牡馬については特徴と狙い時を端的にまとめた。

3位ニューイヤーズデイはダート替わりで躍動。「前走芝→今回ダート」というケースでは勝率18.2%、複勝率45.5%と好成績で、単複回収率はどちらも100%を超えている。

4位レイデオロは期待に比してやや苦戦したが、産駒の成績は新馬戦より2戦目以降がよく、同時に中距離>短距離の傾向も明確に表れている。2歳からガンガン走るタイプではなかった模様で、あまり悲観することもない。距離が延びての逆襲と成長力に期待しよう。

5位カリフォルニアクロームは、馬券的な意味だとスワーヴリチャード以上に頼もしい存在。全体で単回収率184%、複回収率156%だ。特にダート戦で「揉まれず気分よく」の形ならめっぽう強く、「ダートの7〜8枠」は単回収率520%、複回収率632%に達する。この条件だけでも覚えておいていただければと思う。

6位ロジャーバローズは初年度種付け料120万円でのスタートながら、京王杯2歳S3着オーキッドロマンスらを輩出し、JRAでの1頭あたり平均賞金はレイデオロやカリフォルニアクロームをも上回る。こちらは今のところ芝専門で、ダートはまだ連対なし。芝なら条件を問わず単複で黒字圏内だ。人気以上の激走は自身の日本ダービーにもオーバーラップする。

7位シュヴァルグランは好スタートとは言えないものの、晩成型の中長距離馬だった父のイメージ的に、2歳戦向きでないのはある程度織り込み済みだろう。スピード不足なのかダートを多く使われる傾向だが【0-0-2-39】とサッパリ。完全に芝一本だ。芝2000m成績は【2-1-2-6】と、距離延長での可能性が垣間見える。

8位アルアインはまだ掴みどころがないが、これもダート【0-1-1-14】であり、芝が主戦場になりそう。ただし東京芝は【0-1-0-14】。中山や阪神内回りを得意とした父に似て、大箱の瞬発力勝負より、小回りで粘り強さを生かす競馬が合うか。

9位モーニンは地方の新種牡馬リーディングを獲得。高いダート適性と2歳時の完成度は父ヘニーヒューズ譲り。先日2勝目を挙げたブルーサンを筆頭に「大型馬」が走る傾向が強く、馬体重480キロ以上なら【2-4-3-12】複勝率42.9%、複回収率166%。モーニン産駒は馬格をチェックしよう。

10位サンダースノーは現役時代、ドバイワールドカップ連覇のほかフランスで芝GⅠも2勝した二刀流だったが、産駒の複勝率は芝6.3%、ダート16.3%と差が大きい。少ないサンプルなので信憑性は微妙だが、好走例は「母父サンデーサイレンス系の牝馬」にやや偏っている。

<ライタープロフィール>
鈴木ユウヤ
東京大学卒業後、編集者を経てライターとして独立。中央競馬と南関東競馬をとことん楽しむために日夜研究し、X(Twitter)やブログで発信している。好きな馬はショウナンマイティとヒガシウィルウィン。

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