堀宣行厩舎の厩舎力

桃、白一本輪、桃袖は昭和平成を彩った勝負服のひとつ。冠名サクラのさくらコマースは2017年札幌記念サクラアンプルール以来、約6年半ぶりに重賞を勝った。7歳サクラトゥジュールは2歳10月のデビューから24戦目でタイトルを奪取した。出走数は少なくても、じっくり鍛えて強くする、堀宣行厩舎らしいプロフィールだ。

重賞はここまで【0-0-0-4】。初出走は3歳ラジオNIKKEI賞。5歳、オープン入り後はリステッド競走で経験を積ませ、2度目の重賞は昨年の東京新聞杯で14着。その後、メイSを勝ち、重賞に連続して出走してきた。年齢を気にせず、馬のペースにあわせ、堅実に階段を駆け上がる。オープン昇級後、1秒以上負けたのは昇級初戦と昨年の東京新聞杯だけ。大きく負けないあたり、重賞通用の実力を示していた。マイル戦は距離不足と思われていたが、中山金杯での折り合いを欠いた走りの後、即座にマイル参戦を決めた。じっくり育てる一方で、機を見るに敏。路線転換は早い。柔軟性もまた堀厩舎らしい。


谷岡牧場が守ってきたサクラセダン牝系

鞍上のR.キング騎手が今年の来日初日に重賞で騎乗したのがサクラトゥジュール。その中山金杯はスローにハマり、折り合いを欠き、リズムが乱れた。だが、このレースで馬体重+22キロ。2、3走前に減らした分をきっちり戻した。復調の予兆はあった。この日も決してリズムよくとはいえず、序盤から中盤にかけて、危うい仕草も見せたが、キング騎手が巧みに整えた。引っ張るわけではなく行かせるわけでもない、独特の馬とのコンタクトは同じ豪州拠点のD.レーン騎手を想起させる。直線では抜群の手応え。スペースを探して待った分、弾けた。中距離からの転戦と2度目の騎乗で手の内に入れたキング騎手、陣営の力がここに実を結んだ。

サクラトゥジュールの母サクラレーヌの母はセダンフォーエバー。今年から調教師に転身する田中勝春騎手がダービーまで主戦を務めたサクラプレジデントの母でもある。セダンフォーエバーの全兄でマルゼンスキー産駒のダービー馬サクラチヨノオーなど、サクラトゥジュールの3代母サクラセダンの牝系は谷岡牧場が大切に育み、令和の世に再び開花させた。さくらコマースの重賞勝ちはオールドファンの胸を打つ。競馬を長く続けると、記憶の本棚にこんな物語が増えていく。血統は決して色あせない。


持続力型を引きあげるウインカーネリアン

レースを演出したのは、連覇を狙ったウインカーネリアンだ。昨年は序盤600m34.4、前後半800m45.8-46.0、1:31.8を記録した。今年は序盤600m34.4、前後半800m46.1-46.0。自身は1:32.3で2着に粘った。東京のマイル戦でもっとも実力差がはっきりする緩急を問わない流れをつくり2着。パフォーマンスは落ちていない。

スピードと持続力を兼備し、出走馬にも同じ適性を求めるレースをつくる。好走した上位馬たちの適性を証明した。ウインカーネリアンが出走するレースは、持続力勝負になる。予想する側にとってもありがたい存在だ。昨年はドバイ、アメリカと海外を転戦し、チャレンジの年だった。今年はもうひとつタイトルが欲しいところ。東京新聞杯を見る限り衰えはなく、いまのうちにどうにかしたい。

3着ホウオウビスケッツは上位人気で逃げて大敗した中日新聞杯から距離短縮で答えを出した。評価すべきは昨年2月東京のフリージア賞。逃げて後半1000mすべて11秒台で乗り切った。この持続力を武器に次走スプリングSで2着に粘った。ダービーも16番人気で6着、タスティエーラから0.2差だった。今回はウインカーネリアンの流れで蘇った。マイルから1800mの緩急を問わない流れなら再度好走する。ただ、緩急を問う遅い流れだと凡走もあり、狙いどころを見極めよう。

1番人気マスクトディーヴァはスタートで後手を踏み、6着と力を出し切れなかった。ゲートで暴れた馬がいて、それに反応してしまった。こればかりは鞍上を責められない。まだまだ精神面に改善の可能性を残した。サクラトゥジュールのように一歩ずつ、着実にクリアしていくしかない。外を通って上がり33.2。能力は間違いない。


2024年東京新聞杯、レース回顧,ⒸSPAIA


ライタープロフィール
勝木 淳
競馬ライター。競馬系出版社勤務を経てフリーに。優駿エッセイ賞2016にて『築地と競馬と』でグランプリ受賞。主に競馬のWEBフリーペーパー&ブログ『ウマフリ』や競馬雑誌『優駿』(中央競馬ピーアール・センター)にて記事を執筆。Yahoo!ニュース個人オーサーを務める。新刊『キタサンブラック伝説 王道を駆け抜けたみんなの愛馬』(星海社新書)に寄稿。

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