シティ・フットボール・グループが中国クラブ「四川九牛」を買収

イングランド・プレミアリーグのマンチェスター・シティFCを運営するシティ・フットボール・グループ(CFG)が、中国・乙級リーグ(3部相当)の四川九牛を中国のテクノロジー企業UBTECH、投資会社China Sports Capitalと共同で買収したことを発表した。

日本では横浜F・マリノスに資本参加していることで知られるが、その他にもニューヨーク・シティFC(米国)、メルボルン・シティ(豪州)、クラブ・アトレティコ・トルケ(ウルグアイ)、ジローナFC(スペイン)の経営に参画しており、これで主要クラブでは、7つ目の進出となる。

提携も数多く行いタレントの宝庫であるアフリカでは、ガーナサッカー協会やアカデミーとも協業しており、各大陸に根を下ろしている。Eスポーツにも積極的で勢いはとどまるところを知らない。CFGは一体どこに向かおうとしているのか。

仕掛け役はUAEの王族、シティの背後には世界有数の大富豪

CFGは2014年にロンドンに設立された法人で、2008年のマンチェスター・シティ買収時はUAE(アラブ首長国連邦)のアブダビ・ユナイテッド・グループにより行われた。その両法人の創設者は、UAEの建国者を父に持つシェイク・マンスール。アブダビの王族で、UAE副首相として国家運営の実権を握るだけではなく、石油や投資等の事業も手掛けており、CFGはその中の一つだ。

マンスール自身、大会で優勝するほどの腕前の騎手として中東で名を馳せており、UAEの競馬界にも大きな影響力を持つ。世界屈指の巨万の富と権力を持ち、スポーツへの情熱を注ぐ人物だ。UAEのエティハド航空が本拠地スタジアムの命名権を取得する等、サッカー進出には国家戦略とも関連性があるようだ。

チーム強化に待った!投資対象を方向転換

長年、ライバルのマンチェスター・ユナイテッドの後塵を拝していたシティに巨額の強化資金を投入し、実力で上回るまでに急成長させた。しかし時期を同じくして進み始めたのが欧州サッカー連盟(UEFA)の厳しい財務規則ファイナンシャル・フェアプレー(FFP)だ。

一般的な企業と異なり、サッカークラブの多くが利益をあげることをあまり重視していない。勝利と栄光を求めて赤字覚悟で時には借金をし、オーナーが巨額の私財を投じることが長期的なクラブの存続を危機にさらすとし、収支バランスを保つことが義務付けられた。FFPを守れないクラブには大会からの締め出し等、厳しい制裁が下ることになった。

巨額のお金が手元にありながら選手強化に使えず、持て余してしまうという状況がここに生まれた。そこでマンチェスター・シティは、FFPに引っかからないインフラや育成といった投資に移行していった。

マンチェスター・シティの買収以前にこの計画があったかは不明だが、その後次々に世界のクラブを買いあさっていくことになる。結果的にこれが巨大な世界クラブ連合を形成することになり、各地のサッカー事情、有力選手の情報、クラブ経営ノウハウ等を蓄積させ、マンチェスター・シティの地位を盤石なものにする。

CFGチェアマンのカルドゥーン・アル・ムバラクは「各大陸に少なくとも1クラブは持ち、今後も進出の機会をうかがっていく。」と語っている。CFGには当初から中国資本が入っており、今回の四川九牛の買収は、既定路線だったといえよう。

巨大なサッカー財閥を形成、シティ・フットボール・グループが世界を席巻

一つ気になるのが、スペインリーグ・ジローナFCの経営についてだ。経済的にはプレミアリーグが世界一だが、UEFAランキングではスペインリーグが1位だ。

今季、レアル・マドリ―の本拠地サンティアゴ・ベルナベウでクラブ史上初勝利を収めたジローナ。長らく3部から5部が主戦場だった一地方のクラブに練習場を新設しており、Bチーム、Cチームも揃えている。強化には相当な熱の入れようで、バルセロナ出身のジョゼップ・グアルディオラ現マンチェスター・シティ監督も深く関わっている。

今後、欧州チャンピオンズリーグで対戦するようなことになれば、CFGはどのように対応するのだろうか。マンチェスター・シティを頂点とする図式が崩れかねない。同様に横浜F・マリノスが今後アジア・チャンピオンズリーグ(ACL)でメルボルン・シティや四川九牛と対戦する可能性も否定できない。

グループ内だけでも、大々的な国際大会を開催できそうな前代未聞のサッカー財閥が形成されている。この壮大な実験にしばしの間、私たちは固唾をのむことになるだろう。

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