今季は順調な滑り出し

今季、楽天の松井裕樹が復活の兆しを見せている。チームが32試合を消化した時点で8セーブを記録。伸びのある150km前後の直球を軸に安定した投球を続け、好調なチームの原動力となっている。

昨季は53試合に登板するも5勝8敗5セーブ。シーズンを通してクローザーの地位を守れず、松井の不振とともにチームも最下位に沈んだ。2015年から2017年にかけて毎年30セーブ以上挙げていた絶対的守護神の姿は影を潜めていた。

再起をかけて臨んだ今季、順調な滑り出しを見せている松井。昨季とは一体何が変わったのだろうか。

松井裕樹の成績表ⒸSPAIA

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改良版スライダーで投球の幅が広がった

松井といえば、桐光学園(神奈川)の2年生だった2012年夏、大会新記録となる22奪三振を記録するなどセンセーショナルな活躍を見せた。当時、松井が必殺の武器としていたのが、鋭く大きく曲がるスライダーだった。

プロ入り後は制球を重視するためか、スライダーの割合を減らし、チェンジアップとストレート主体の投球に切り替えていたが、今季からは改良したスライダーを取り入れている。

昨季はチェンジアップの比率が約20%でスライダーは約8%だったが、今季はスライダーの比率が約25%と飛躍的に増加(チェンジアップは約20%)。これまでのスライダーと違う点は、ある程度球速があって曲がりが小さいということ。カットボールにも似た改良版スライダーで三振を奪い、ピンチを切り抜けるシーンもよく見られる。

4月17日の西武戦、楽天が4点リードして迎えた9回に無死満塁のピンチでマウンドに上がった松井は、外崎にタイムリーを浴びて2点を失うも、その後は山川穂高、森友哉をスライダーで連続三振に斬ってとり、勝利を手繰り寄せた。

カウントが不利な状況でも、思い切りよく腕を振って投げ込んだスライダーで奪った三振。松井の納得した表情からは確かな手応えが感じられた。

これまでのところ、打者72人に対して32個の三振を奪っており、奪三振率は驚異の15.16。防御率も1.89と安定感抜群だ。今季は直球が走っていることもあり、スライダーとチェンジアップが昨季よりも格段に効果的となっている。

悲願のセーブ王、そして侍の守護神へ

昨季、史上最年少で通算100セーブを達成した松井だが、未だセーブ王には縁がない。サファテの後を継ぎ、ソフトバンクのクローザーに君臨する森唯斗が最大のライバルとなりそうだが、新しいスライダーを加えて投球の幅を広げた松井が、セーブ王を獲得するチャンスは十分にあるだろう。

そして、今年11月にはプレミア12の第2回大会が控えている。松井は第1回大会で、当時の小久保裕紀監督から守護神として期待されたものの、実力を発揮できず不完全燃焼に終わった。準決勝の韓国戦では無死満塁の大ピンチでリリーフとして登板するも、押し出しの四球を与えてしまうなど勢いづいた韓国打線を止めることができず、苦い思い出だけが残った。

今季の成績次第では、再びプレミア12、そして来年の東京五輪に出場するチャンスも巡ってくるだろう。松井には、チームの守護神というだけでなく、侍ジャパンの守護神を任せられるぐらいの器に成長してもらいたい。

※数字は2019年5月8日終了時点

ⒸYoshihiro KOIKE