コート上に2つのゴール

車いすツインバスケットボールをご存じだろうか。左右の上下肢がすべて運動麻痺の状態である‟四肢麻痺障害者”を対象とした車いすバスケットボール競技のことである。

一般の車いすバスケットボールは、バスケットボールとほぼ同じルールやコートで行われる。障害レベルの重い選手から、1.0~4.5の持ち点が定められ、コート上に入る選手5人の持ち点が合計14.0点を超えてはならない。障害レベルの軽い選手ほど持ち点は高く、このクラス分けによって障害の軽い選手だけでチームを組むのではなく、重い選手も出場機会を得られるようにしている。

『車いすツインバスケットボール』は、上記の車いすバスケットボールに一部ルールを追加している。試合の進め方は、通常のバスケットボールとほぼ変わらない。大きな特徴として、コート上に2つのバスケットが存在する。通常のバスケット(上ゴール)3.05mに加えて、高さ1.2mの低いバスケット(下ゴール)が、フリースロー・サークルの中心に配置されている。得点のカウントは、上ゴールに入れるシュートが、通常のバスケットボールと同じであり、下ゴールに入れるシュートは2点。フリースローは1点が加算される。

車いすツインバスケットボールの選手にも、各々の運動能力に応じて、0.5点から4.5点までを10段階にし、クラス分けを実施する。“メディカルチェック”、“フィールドテスト、体幹・下肢機能テスト”、“ゲームチェック”を用いて、選手のクラス判定を行い、ショット区分を“上シューター”、“円外シューター”、“円内シューター”の3つに分ける。

◆上シューター:上ゴール 持ち点2.5~4.5点
◆円外シューター:下ゴール 持ち点1.5~3.5点
◆円内シューター:下ゴール 持ち点1.0~2.0点

障害レベルの軽い選手は“上シューター”、障害レベルの重い選手は“円内シューター”となっている。

車いすツインバスケットボール・試合の模様Ⓒマンティー・チダ

Ⓒマンティー・チダ


コート上に立つ選手5人の合計持ち点は11.5点以内。一般の車いすバスケットボールに比べて、持ち点の設定が低いのは、障害レベルが重い選手の参加を原則としている為である。コート上では、区分ごとにヘッドバンドを装着。

◆上ゴール:なし
◆下ゴール:円外シューター 白色、円内シューター 赤色

と決められている。円外シューターは、フリースロー・サークルの外側からシュートを打つことができ、円内シューターはサークルの内側からシュートを放つことができる。

日本車いすツインバスケットボール選手権大会で神奈川JUNKSが連覇

この車いすツインバスケットボールの大会が、6月22日・23日に墨田区総合体育館で開催された。文部科学大臣杯争奪第32回日本車いすツインバスケットボール選手権大会である。全国各地区予選を勝ち上がった11チームに、昨年の覇者である神奈川JUNKSを加えた12チームによるトーナメント方式であった。

決勝は、連覇を狙う神奈川JUNKSと2017年大会まで5連覇の実績があるHorsetailの顔合わせとなり、優勝経験があるチーム同士のため、序盤から白熱した試合展開となった。

試合の入りから、神奈川JUNKSは、#8伊東良平(円内・持ち点2.0N)にボールを集めて先行したが、Horsetailは#9成毛弘継(上・3.5)と#14佐藤喜昭(円外・3.0)を中心にボールコントロール。#5小田勇人(円内・1.5)、#11櫛田浩二(円内・1.0)のシューターが得点して互角に渡り合った。

前半終了時点で、神奈川JUNKSのリードはわずか2点だったが、後半に入ると、#14佐々木操(上・3.5)の速攻で立ち上がりを決め、直後の守備で、プレスを仕掛けて相手のターンオーバーを誘発。#17岸本雅樹(円内・1.5)がブレイクを成功させると、前半でも機能していた佐々木、伊東のホットラインが炸裂し、3連続得点でリードは8点まで広がる。

試合はそのまま8点リードで進み、神奈川JUNKSが優勢で進めるかと思われた。しかし、残り4分を切ってから、Horsetailに追い上げを許し、成毛に縦横無尽に動き回られて、伊藤の動きを封じられる。さらに、小田と佐藤にシュートを決められ、3Qを終了時には、一気に2点差まで追い上げられていた。

4Qに入り、3Q後半から得点が止まっていた神奈川JUNKSは、伊東のシュートで攻撃パターンを掴み直す。47-45から、伊東は相手の守備に阻まれて動きを止められるが、#15橘内祐太郎(円外・2.0H)と佐々木がシュートを沈めると、#13山口貴久(円外・2.0H)からのアシストで、再び伊東が得点する。終盤も、下ゴール付近に陣取った伊東にボールを集めて、確実に得点をあげた。結果、神奈川JUNKSが65-55でHorsetailを下して、見事連覇を達成した。

最終成績は以下の通り。

優勝チーム・神奈川JUNKSの集合写真Ⓒマンティー・チダ

Ⓒマンティー・チダ


【順位】
優勝 神奈川JUNKS(神奈川県)
2位 Horsetail(東京都)

【個人賞】
◆MVP・得点王
伊東 良平(神奈川JUNKS、円内・2.0N)

◆ベスト5
橘内 祐太郎(神奈川JUNKS、円外・2.0H)
佐々木 操(神奈川JUNKS、上・3.5)
小田 勇人(Horsetail、上・1.5)
櫛田 浩二(Horsetail、円内・1.0)
成毛 裕継(Horsetail、上・3.5)

全員が輝けるスポーツ

決勝では45得点を稼ぎ、最優秀殊勲選手賞(MVP)と得点王の2冠に輝いた伊藤。

神奈川JUNKSは、序盤から下ゴール付近で待ち構える伊東にボールを集めていた。司令塔の佐々木が、チームメートを生かしてボールを動かすと、最後は伊東というパターンで試合を優位に動かす。伊東は、持ち点の低い選手で円内シューター。円内シューターは、下ゴールから至近距離でシュートを打つことが可能なため、リングに背面から覆いかぶさるように放てば(バックダンク)、シュート決定率は大幅に向上する。車いすツインバスケットボールでは、円内シューターの動きによるところも非常に大きい。

「1年間練習した甲斐があった。今日は本当に疲れた」

試合後、激戦を戦った伊東は、取材に応じてくれた。

「どこかで抜け出せるタイミングもあるはずだ。休みも入れつつ、作戦面で上がったり下がったり、敵も味方もうまく使ってスクリーンをかけて上がれたので、今回はそこでうまくいったのかな」

3Q途中で相手にマークされながら、伊東はこのような気持ちで試合を進めていた。

「チームのみんなが自分の仕事をしてくれたので、優勝に繋がった。得点を取れたのも周りの選手のおかげ」

他の選手がそれぞれの役割に徹したことで、伊東の得点は生まれていた。そして、得点だけ注目が集まってしまうが、指揮する丸谷守保コーチは「チームとして、守備が相手より上だった」と勝因を話す。

「何度もHorsetailとは試合をしていて、いつもロースコアの試合になる。大きく離れることもなく、離されることもないので、守備で我慢することだけを指示した」

そのようにハーフタイムの指示内容を明かし、「最後まで我慢した方が勝つ」と丸谷コーチはそれだけに集中していたという。だからこそ、伊東も途中動きを止められても、自分なりに打開していった。

「とにかく『おつかれさんですね』と選手には声をかけた」と話す丸谷コーチ。

「今日は結構良かったのではないですか。さすがに」と自身のパフォーマンスについて伊東。

連覇を達成した神奈川JUNKSは、今後どのような戦いを見せてくれるだろうか。

優勝チーム・神奈川JUNKSの集合写真Ⓒマンティー・チダ

Ⓒマンティー・チダ


「障害の程度に関わらず、全員がシュートを打てる。全員が輝けるスポーツ」

Horsetail成毛は、車いすツインバスケットボールの魅力についてそう語り、それをまさに伊東が証明した。このスポーツは障害の程度に関わらず、誰もが攻撃や守備に参加できるのである。

来年の大会は大阪で開催予定。ぜひ生で彼らの活躍を見て欲しいところだ。

Ⓒマンティー・チダ