全英女子オープンで日本勢42年ぶりメジャー制覇

「笑顔のシンデレラ」―。そんな愛称で海外でも一躍人気に火が付いた女子プロゴルフの渋野日向子が4日、歴史的な快挙を達成した。日本ツアーのプロテストに合格してまだ1年余りと急成長する20歳のホープ。英ミルトンキーンズのウォバーンGC(パー72)で行われた今季メジャー最終戦、AIG全英女子オープンの最終ラウンドで7バーディー、1ボギー、1ダブルボギーの68で回り、通算18アンダーの270で初出場優勝を果たした。

全英女子オープン成績ⒸSPAIA

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日本勢のメジャー勝利は1977年の全米女子プロ選手権を制した樋口久子(現日本女子プロゴルフ協会顧問)以来で42年ぶり2人目。世界も驚いた勝利を引き寄せたのは、トレードマークとなった笑顔の裏で大胆不敵な戦略と強気の決断力があった。

平均パット数3位の実力発揮

日本女子プロゴルフ協会(LPGA)のデータによると、渋野の平均パット数(パーオンホール)は今季3位。大会公式サイトによると、ゴルフの母国で、首位から最終組で最終ラウンドに臨んだ緊迫のラウンドでも得意のパットが生きた。

パット数ランキングⒸSPAIA

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先に65の好スコアで終えたリゼット・サラス(米国)と通算17アンダーで並んで迎えた最終18番。5メートルを残したバーディーパットでも「ここで決めるか、3パットでもいいやと強気で打った」と迷わず、スライスラインを読み切って左腕を高々と突き上げた。初の海外大会でも笑顔を絶やさず、初日から走り続けた快進撃はこの「強気な決断力」に集約される。

米女子ツアー通算17勝で賞金女王にも輝いた岡本綾子や世界ランキング1位となった宮里藍ら元スター選手たちも果たせなかったメジャー制覇を初挑戦で達成。賞金67万5000ドル(約7200万円)を獲得し、米ツアーの出場資格も得た。

勝負の1オン狙いで再加速

めまぐるしい優勝争いで、追い込まれつつあった渋野が大きな勝負に出たのは12番。253ヤードと短いパー4だった。2打リードのトップでスタートしながら、11番を終えた時点で2打差の3位。着実に刻んで2打目勝負を選択する選手が大半の中、迷わずフルスイングした一打は、右に池が待ち構えるグリーンの右端にぎりぎり乗り、ギャラリーの大喝采を浴びた。ここから2パットで楽々とバーディーを奪うと、再び加速した。

序盤は3番で4パットのダブルボギーをたたきながら、苦境でも積極姿勢を貫くメンタルの強さがあった。今季の「バウンスバック率」は堂々の国内1位。これはボギーかそれより悪いスコアとしたホールの直後のホールで、バーディーかそれより良いスコアを獲得する率だが、メジャーの舞台でも前半に一つスコアを落としながら後半の5バーディーで再逆転する底力を証明した。

バウンスバック率ランキングⒸSPAIA

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父は砲丸投げと円盤投げ、母はやり投げの選手

岡山県出身の渋野は8歳でゴルフを始めたが、ソフトボールの投手出身としても有名だった。小学校時代はソフトボールとの「二刀流」。打者としては左打ちで主軸を打ち、今でも日本代表戦などを観戦するほどのソフトボール好きだという。

両親は筑波大陸上部出身で元投てき選手。父は砲丸投げ、円盤投げで国体2位。母はやり投げで高校総体に出ている。3姉妹の次女でスポーツ選手の遺伝子を両親から受け継ぎ、下半身が安定した現在のバランス良いスイングの土台が磨かれた。

畑岡奈紗、勝みなみらと「黄金世代」

日本女子で1998年生まれを中心とする「黄金世代」の一人でもある。岡山・作陽高で全国高校選手権の団体優勝を飾ったほかは、アマチュアで目立った戦績はない。10代から注目される畑岡奈紗や勝みなみと対照的に、令和の新時代に入ってから一気に名を挙げた。昨夏のプロテストに合格し、実質的に1年目の今季日本ツアーで2勝。急激な成長曲線を描いて、日本の女子ゴルフ界に新たな歴史を刻んだ。

東京五輪も候補に

最終日のバックナインでも大好物の駄菓子を食べながら、テレビカメラに笑顔を振りまく「新人類」。今大会はリンクスのイメージと違い、日本のコースに似たコース設定だったのも追い風になった。今季の平均バーディー数が3.6379と国内3位とデータが示す通り、強気にピンを狙うスタイルを貫いて世界の強豪たちに対抗。慣れない舞台でただ一人60台のスコアを4日間並べた。

バーディー数ランキングⒸSPAIA

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日本女子選手の米ツアー優勝は今年3月までに3勝した畑岡奈紗以来で11人目だ。「笑顔のシンデレラ」渋野が来年6月末の世界ランキングで決まる東京五輪代表争いでも畑岡に次ぐポジションで有力候補に名乗りを上げた。

渋野 日向子(しぶの・ひなこ)両親は陸上の投てき選手。8歳でゴルフを始めた。ソフトボールにも没頭し、中学2年まで軟式野球部に所属。その後はゴルフに専念し岡山・作陽高で全国高校選手権団体優勝。18年夏にプロテストに合格し、今年5月のワールド・サロンパス・カップで初優勝。7月に2勝目を挙げた。165センチ、62キロ。20歳。岡山県出身。

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