空前の「パラバブル」

2020年8月25日に開幕する東京パラリンピックまで1年を切った。障害者スポーツの祭典は1964年に続き、夏季大会では史上初となる2度目の開催。メダルのデザインも発表され、日本は史上最多となる「金メダル22個、世界7位」と高い目標を掲げるが、前回リオデジャネイロ大会の「金ゼロ」からどこまで盛り返せるか―。

今大会は初採用されるバドミントン、テコンドーを含む全22競技、540種目に約180カ国・地域から4400人近くの選手が参加を予定し、史上最大規模となる見通しだ。

前回大会は世界記録が200を超え、欧米の国を挙げた選手強化と義足や車いすの技術革新で新時代到来を印象付けた。近年は日本でも国や企業の幅広い支援で「パラバブル」とも呼ばれる空前の注目が集まり、トップ選手がテレビCMにも起用される中、金メダルを期待される選手を探ってみた。

パラリンピック日本成績ⒸSPAIA

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「世界」の国枝と上地

「大会の顔」ともいえる存在はパラリンピック1年前イベントでも引っ張りだこの人気だった車いすテニス男子の国枝慎吾(ユニクロ)と女子の上地結衣(三井住友銀行)だろう。

2008年北京大会と2012年ロンドン大会で男子シングルス2連覇を達成した35歳の国枝は「世界の国枝」とも称され、四大大会の年間グランドスラムを計5回達成している第一人者。スター選手のロジャー・フェデラー(スイス)からも「日本にはクニエダがいる」と尊敬される存在だ。東京では2大会ぶりの頂点を狙う。

女子で前回リオ大会銅メダルを獲得した25歳の上地は、史上最年少で四大大会の年間グランドスラムを達成している世界のトップ選手。実績十分で初の頂点を目指す。

陸上はマラソン道下らに注目

パラリンピックは障害の部位や程度によって細かくクラス分けされ、陸上は168種目を実施。その中でも注目はマラソンの女子視覚障害で世界記録保持者、42歳の道下美里(三井住友海上)が優勝候補の筆頭格だ。

マラソンが初採用された前回のリオ大会では銀メダル。4月のロンドン・マラソンで3連覇を達成し、代表に内定した。昨年6月には皇太子さまに伴走されて東京・元赤坂の赤坂御用地をランニングしたことでも話題になっており、東京大会のヒロイン候補として期待も高まっている。

レーサーと呼ばれる競技用車いすに乗る29歳の佐藤友祈(WORLD−AC)は、T52クラスで男子400メートルと1500メートルの世界記録保持者。走り幅跳び(義足T63)で37歳のベテラン山本篤(新日本住設)も前回銀メダリストで有力候補だ。ハンドボール選手から転向し、リオで「銅」に輝いた女子400メートル(上肢障害T47)で24歳の重本沙絵(日体大大学院)も期待される。

競泳はエース木村と鈴木の二枚看板

競泳はリオ大会で「銀」2「銅」2の計4個のメダルを獲得した全盲クラスの28歳エース、木村敬一(東京ガス)が有力候補だ。昨年のジャカルタ・アジアパラ大会で日本選手団主将を務めて5冠を達成した32歳の鈴木孝幸(ゴールドウイン)も得意の個人メドレーや平泳ぎ、自由形で世界一を狙える実力がある。

世界選手権出場を逃した運動機能障害のホープ、22歳の一ノ瀬メイ(近大職)らにも代表切符へのチャンスはまだ残されている。

ボッチャ、車いすラグビーも有力

団体競技では前回大会の「銀」で一躍ブームに火が付いた頭脳戦のボッチャに期待が高まる。白い目標球(ジャックボール)に赤、青のボールを持つ対戦チーム同士がどれだけボールを近づけるかを競うカーリングにも似た競技。ダブルエースの杉村英孝(伊豆介護センター)と広瀬隆喜(西尾レントオール)を中心とするチーム(脳性まひ)で初の頂点を見据える。

「マーダーボール(殺人球技)」と呼ばれるほど激しいぶつかり合いが醍醐味の車いすラグビーも大きな期待が懸かる。前回リオ大会で銅メダルを獲得し、昨年の世界選手権では米国やリオ大会覇者のオーストラリアを下して初優勝。世界選手権で最優秀選手(MVP)に選ばれたエース池崎大輔や主将の池透暢の「“イケイケ”コンビ」、女子選手の倉橋香衣らを擁し、東京大会では世界王者としてパラリンピック初の頂点を目指す。

ブラサカは人気急上昇

過去3大会は切符をつかめず、初出場となる5人制サッカー(ブラインドサッカー)も人気と注目が急上昇している。視覚障害者の選手4人と、健常者または弱視者が務めるGKの5人制。鈴が鳴る専用のボールを使用する。3月の国際大会は4位に終わったが、主将の川村怜(アクサ生命保険)を中心に着々とチーム強化が進んでいる。

2012年ロンドン大会で日本の女子が金メダルに輝いた視覚障害者によるゴールボールはリオ大会の雪辱を期す。ゴーグルのようなアイシェード(目隠し)を着用した1チーム3人のプレーヤー同士が、鈴入りボールを転がすように投球し合い、味方のゴールを防御しながら相手ゴールにボールを入れることで得点を競う競技だ。

車いすバスケットボール女子は4位と健闘した2008年北京大会以来、3大会ぶりに出場する。

初採用のバドも世界ランク1位

東京大会で初採用となるバドミントンでは、女子シングルス(上肢障害SU5)の鈴木亜弥子(七十七銀行)、同ダブルス(車いす)の山崎悠麻、里見紗李奈(NTT都市開発)組が世界ランキングで1位に君臨し、メダルラッシュの予感も漂う。8月の世界選手権では女子シングルスで里見が初出場優勝を飾った。

スノーボードから転向した平昌冬季パラリンピックの金メダリストで走り高跳び(下肢障害T44)男子の成田緑夢(フリー)も自国開催の舞台へ代表入りを目指している。