伝統のマージ−サイト・ダービーで堂々の先発

泥くさいプレーもいとわない豊富な運動量で、順応性の高さを示した堂々のデビュー戦だった。

サッカーのイングランド・プレミアリーグ屈指の名門クラブ、リバプールに移籍した24歳の日本代表MF南野拓実が1月5日、世界最古の歴史を誇るイングランド協会(FA)カップ3回戦でホームのエバートン戦にFWで先発し、移籍後初出場を果たした。

オーストリア1部リーグのザルツブルクから欧州チャンピオンズリーグ(CL)で6度目の欧州王者に昨季輝いたビッグクラブに引き抜かれ、目の肥えたリバプールサポーターが見守った伝統の「マージーサイド・ダービー」。本拠地アンフィールドで憧れの赤いユニホームを身にまとった背番号18の若武者はスタンディングオベーションで迎えられ、主力を温存したメンバーのセンターFWでピッチを駆け回り、後半25分までプレーして第一歩を踏み出した。

前半34分の決定機は左クロスを頭で合わせきれず、ポストの右横へと外れた場面もあったが、クラブの公式ツイッターによると、リバプールのクロップ監督は「まさに私たちが求めていた選手であり、私たちが望んでいた選手だ。ピッチに入って、エネルギッシュなプレーをみせてくれた。彼のプレーを私はとても気に入った」と手放しで称賛した。

移籍金10億円、英メディアは賛否も

英BBC放送によると、移籍金は725万ポンド(約10億4000万円)で、2024年夏までの4年半契約。英メディアも南野のデビューを注目して扱った。インディペンデント紙(電子版)は「アンフィールドの観客は南野の才能を既に熟知している。長く記憶に残るデビュー戦ではないかもしれないが、南野のプレーには才能の一端や将来性のある瞬間が詰まっていた。最も重要なことは、クロップ監督が選手に特に求めるチームのスピードを彼は向上させていたことだ」と及第点以上の評価。

一方、エクスプレス紙によると、元イングランド代表ストライカーでニューカッスルなどでも活躍したアラン・シアラー氏は「今のリバプールに完璧にフィットすると思う。ただトップチームの先発を勝ち取ることは、とても難しそうだ」とやや辛口のコメントを寄せた。

今後はサラー、マネ、フィルミノという世界屈指の3トップを擁するチームで、どこまでイングランド特有のテンポの速さ、球際の激しさにも動じない強さを見せられるかが一つの鍵となりそうだ。

複数のポジションこなせる万能型

イングランド・プレミアリーグでは香川真司が強豪マンチェスター・ユナイテッド、吉田麻也がサウサンプトンでプレーし、岡崎慎司はレスターの中心としてリーグ王者になったが、欧州各国リーグの中でも日本選手が成功するのは最も厳しいといわれる。

プレミアリーグに挑戦した主な日本選手


大阪出身の南野はC大阪の下部組織からトップチームに昇格し、2015年1月に19歳でザルツブルクへ移籍。夢物語が実現した背景には、南野がザルツブルクで今季初出場した欧州CLのリバプール戦でゴールを挙げるなど強烈なインパクトを残し、クロップ監督の目に留まったことが大きい。万能型の南野に期待されるのはFW、MFの複数ポジションをこなす器用さを生かしたポリバレントなプレーだ。

ザルツブルクでの5年間で地道に海外経験を積み、世代交代を進める日本代表でも常に結果と存在感を残して主力に定着してきた実績がある。リバプールのデビュー戦でも浮足立つことなく、精力的な動きで攻撃を活性化しようと奔走し、自らの個性と才能を発揮できるハートの強さも大きな武器になるだろう。

世界屈指の強豪クラブで南野がどんな成長曲線を挙げていくのか−。自身のツイッターで「常にリバプールのためにベストを尽くす」と入団の決意をコメントした南野は、厳しい戦いに挑戦する覚悟ができている。