“明智光秀”といえば、どんなイメージを持つだろうか。

主君・織田信長を討った謀反人?それとも、世を正すために戦った出世人?

天正10年(1582年)6月2日、自らが仕える織田信長を本能寺の変で焼き討ちにした明智光秀。世間一般では裏切り者・悪役と、ネガティブなイメージで語られることが多いが、最近では統治者としての手腕や頭脳、強引だった信長の政治手法に毅然と立ち向かったことから、果敢な智将と捉えられている。

また、領国・丹波では領民や家来の心情を慮る政治を行ったと伝えられていることから、“領民から慕われた名君”であり、福知山市では神として祀られている。

亀岡市と明智光秀の関係

丹波亀山城は1577年頃、織田信長に丹波攻略を命じられた光秀がその拠点として、現在の京都府亀岡市に築城した。本能寺の変の際、丹波亀山城から13000もの軍勢を引き連れて本能寺へ向かったことで有名な場所だ。

また、丹波統治のため、光秀が亀山城と本格的な城下町を形成したことで亀岡市の基盤ができ、近代亀岡の礎となった。それゆえ、明智光秀と亀岡市はとても縁が深い。

さらに2020年のNHK大河ドラマで明智光秀が主人公の『麒麟がくる』の放送が決定した。本作では謎めいた光秀の前半生に光を当て、その生涯を中心に戦国の英傑たちの運命の行く末が描かれる。また、最新の研究で新しいアプローチがされ始めていることから、従来のイメージを覆すキャラクター像、つまり“勇猛果敢かつ理知的な天才”で描き出すという。

謎が多いものの、きまじめで情に厚く、名参謀とも言われる明智光秀。

そんな明智光秀のことを、遊び、楽しみながら、より詳しく知ることができるイベントが開催されている。

歴史リアル謎解きゲーム、”なぞしろ”

現在、京都・丹波亀山城をはじめ、大阪・高槻城、大阪城の3箇所で行われている、“なぞしろ”。

“なぞしろ”とは、株式会社マッシュと株式会社ハレガケとが企画する、歴史リアル謎解きゲーム。歴史上の人物が訪れた城や城下町を舞台に、実際に起こったとされる史実をもとに謎を解いていく。参加者はタイムスリップし、偉人たちがいた城や城下町を回遊しながら歴史に基づくヒントを集め、謎を解き明かす。歴史的知識がなくても、ゲームの参加を通して楽しむことができる。

また、日本全国の城や城下町を持つ地域が活性化することを目的にしていることも大きな特徴。謎解きを通して、その土地の魅力や歴史を知ることができる。

歴史上の人物がかつて生きた土地を実際に訪れ、空気を吸い、謎を解き明かし、地元の食や文化を楽しみ、五感を活かして時代のロマンを感じられる!

これはぜひ、やってみたい!

というわけで、今回実際になぞしろを体験してきた!!

史実をからめた謎にふれる

JR亀岡駅

JR亀岡駅

朝10時、JR亀岡駅に到着。なんとこの日はあいにくの雨模様。街歩きには残念なお天気ですが、気を取り直して出発!

まずは観光案内所 かめまるマートへ

まずは観光案内所 かめまるマートへ

まずは、JR亀岡駅観光案内所・かめまるマートで、チケットと謎解きキットを交換。

謎解きキットを入手!

謎解きキットを入手!

表紙には、

“日本史上最大の謎と言われる「本能寺の変」。

明智光秀は、なぜ織田信長を討ったのか。

未だ明かされぬその謎は、

光秀の激動たる半生に隠されている!?”

と書かれている。

中を開くと、問題が現れる。

キットの地図をたよりに、亀岡城下町を歩いて謎を解いていく。

では早速スタート!

第1問は亀岡駅のすぐ近く。

謎を照らし合わせながら推理していく。

無事、答えを導き出すことができた。

最初は順調。

続いて向かうのは、丹波亀山城跡。

丹波亀山城跡に向かう途中には、お堀の跡が。水鳥が気持ち良さそうに止まっていました。

丹波亀山城跡に向かう途中には、お堀の跡が。水鳥が気持ち良さそうに止まっていました。

丹波亀山城跡は現在、宗教法人大本(おおもと)によって管理されている。少し入りにくい雰囲気を受けるかもしれないが、安心してほしい。総合受付に声をかけてお祓いを受ければ、誰でも入ることができる。

丹波亀山城跡入り口

丹波亀山城跡入り口

きれいに整備された敷地内

きれいに整備された敷地内

中に入ると、綺麗に整備された庭園や建物に囲まれて、修復された内堀跡や石垣を見学することができる。

万祥殿でお祓いを受けます

万祥殿でお祓いを受けます

キットに従い、謎を解いていく。

ここまでは順調!

そして、前半の問題をすべて回答することができた。

謎が解けたらチェックポイントの亀岡市文化資料館へ

謎が解けたらチェックポイントの亀岡市文化資料館へ

チェックポイントの亀岡市文化資料館の受付で答えを伝えると、後半の謎キットを入手できる。

どんどん謎を解いていこう。

後半は城下町を探索しながら手がかりを集めていく。“旅籠町”など、歴史を思わせる地名や古い建物が目を惹く。謎は、もともと城下町にある看板や建物をいかして作られているので、どこにヒントが隠れているのか、という視点で景色を楽しむのもおすすめだ。

ちなみに、かなり広範囲にわたって謎が設置されているので、なぞしろに挑む際は、必ずスニーカーで出かけることを忘れずに。

歴史を感じる城下町

歴史を感じる城下町

街中に突如現れるお寺や神社に風情を感じる。

謎解きが進むにつれ、だんだん難易度が上がってきた。

しかし回答に詰まった場合、キットにあるQRコードを読み込めばヒントがもらえるので、利用してみよう。

雨が強くなってきたため、亀岡市文化資料館の向かいにある、京都ダイコクバーガーでランチを食べながら、最後の謎を解くことに。

京都ダイコクバーガー

京都ダイコクバーガー

店内には、『こちら亀有公園前派出所』でも有名な、漫画家・秋本治先生作『ファインダー』に関する資料や記事がたくさん。というのも、『ファインダー』は、京都・亀岡を舞台に、写真部に所属する4人の女子高生たちの日常を描いた作品。週刊ヤングジャンプで2017年から2018年まで連載されており、本作で描かれた場所や神社、飲食店を巡る“聖地巡礼”で亀岡を訪れる方も多いそうだ。

秋本先生の直筆サインも飾ってありました!

秋本先生の直筆サインも飾ってありました!

 
美味しいバーガーに舌鼓

美味しいバーガーに舌鼓

美味しいバーガーをいただきながら、謎解きラストスパート。

これはかなり難しい……。

何度もキットの文字を読みながらトライする。

そしてようやく、最終回答を導き出すことに成功!!!!!

謎が解けたら、スタート地点のJR亀岡駅観光案内所・かめまるマートに向かい、スタッフの方に報告。

“正解です!”の言葉をもらえれば、なぞしろ、完遂!!!

無事ゴールできた参加者の笑顔には、安堵感と達成感が溢れているそうで、「その表情を見るだけで幸せな気持ちになれます」と嬉しそうに話していた。

ここまでで所要時間は約3時間。

おつかれさまでした!!!

亀岡市文化資料館の館長・鵜飼均氏へのインタビュー

冒頭でも述べたとおり、その半生に謎が多い明智光秀。しかし今回の謎は、きちんと史実に基づいて作られている。その謎を検証したのが、チェックポイントでも訪れた亀岡市文化資料館の館長・鵜飼均氏。丹波亀山城歴史リアル謎解きゲーム「出世人 明智光秀」への思いや、亀岡市と明智光秀について話を聞いた。

明智光秀が好きな鵜飼さん

明智光秀が好きな鵜飼さん

――謎、解いてきました! 前半は割とサクサク進んだんですけど、後半部分は難しかったです。

私が作ったわけじゃないですけど、よく出来てますよね(笑)。タイミングも良く、NHK大河ドラマが決まってからの開催で、「麒麟のまち」という形で光秀を売り出していこうという話にもなってますので、そういう意味でも追い風でありがたいですね。

――大河ドラマは亀岡に興味を持ってもらう良いキッカケになりそうですね。明智光秀といえば、世間的には「謀反人」や「逆臣」というイメージで語られていますが、このなぞしろでも「出世人」とされていたり、大河ドラマでも「謀反人のイメージを覆す、勇猛果敢かつ理知的な天才」として描かれるそうで、捉え方が変わってきたのかなと思います。亀岡の方にとって明智光秀は、やはり「世を正すために戦った人」と認識されているんですか?

と、思うでしょ? なかなかね、それは半々くらいなんですよ。光秀が好きか嫌いかという話になると、信長の命とはいえ、お寺に火をつけられたとか潰された、という事実が未だに積年の恨みのように残っていて。少数ではあると思うんですけど、あまり良いふうに思っておられない方もいらっしゃるのかなと思います。

――それは、すごく意外です。福知山市のように慕われているのかと。

福知山市は税金を免除したり、領地を与えたという資料も残っていて、神としてお祀りされてるんですけど、亀岡は福知山市ほど皆が光秀びいきではないのかなと。亀山城は、丹波攻めの拠点としての機能があり、城の普請を急いだ。そのため寺を燃やしたり、墓石を城の石垣に転用した。おそらく、天下静謐の世の中にするための行動であったと思います。でも燃やされた方にしてみれば、その話が受け継がれていく。総堀を築いているので、城下町を形成しようと思っていたことは確かであると考えています。そんなこともあって、皆が皆良い思いをしてないというところがあるので、福知山市とはちょっと対照的な部分もあるかな。

――なるほど……。

あと福知山市は天守閣のあるお城があるけど、亀岡には光秀に関するシンボリックなものがないんですよね。今見れる亀山城跡は、徳川家康の天下普請で建てられたもので、光秀は、天正5年ころから城づくりに着手した、三層の天守の城であったとも言われていますが、はっきりとわからないのが事実です。城造りを始めたのが天正5年くらいで、本能寺の変が天正10年でしょ。丹波にいた年月がそんなに長くないので、資料も残ってないのが事実で。

――そうなんですか。今回の謎は、資料が少ない中でも史実に基づいてきちんと検証されたそうですね。

そうですね。でも、光秀はまだまだわからないことが多いんです。わからない部分もあるからロマンを感じたり、自分なりの歴史観を持ってもらえると思うんですよね。だから既にわかっている歴史を歩くのではなく、「ああ、ここから13000の兵で夜に本能寺に攻めていったんだなぁ」と、是非、その場に立って感じてもらいたい。光秀普請の城は、残されてはいないが、ここ亀岡の地から本能寺に向かったことは事実ですから、その空気を感じてもらえるのが、すごく意義のあることだと思います。​滞在時間も長くなるので、光秀だけではない、色んな亀岡を見てもらえるキッカケになるのかなとも思います。

――実際に参加者の方とお話されたことはありますか?

窓口やロビーでチラッとお話する程度ですけどね。個人で来られる方と、グループや職場旅行で来られる方もいらっしゃって。普段文化資料館に来てくださる来館者は年齢高い方が多いんですけど、謎解きされる方はやっぱり若い方が多いかな。カップルとか友達同士とか。これまでの客層と違う人たちが来てくださるのは、ありがたい話で、感謝しています。

――これから亀岡はどのように発展していってほしいですか?

大河ドラマに亀岡が登場するのはドラマの後半の方だと思うんですけれど、1度行ってみようかという人がすごく増えると思うんですね。だから街並みも綺麗に整備してお迎えすることが必要なのかなと思います。かといって過度な作り込みをするのではなく、今あるものを大切にしながら歴史も感じてもらえるような街になったらいいなと。逆に、亀岡ならではのものもいっぱいあると思うので、私たちもそこに気づいて1つ1つに価値付けすることで、新しい街の名産が生まれればいいなと思いますね。

――訪れてくれた人に、見てほしい亀岡の魅力はどこですか?

文化資料館にももちろん来て欲しいのですが(笑)。毎年10月に亀岡祭という、祇園祭のように山鉾が出る秋祭りがあるんです。あちこちに鉾倉が立っているので、その時にもう1度来てほしいですね。大河ドラマを見て来られる時は、ほぼ日常の亀岡の姿だと思うので、ハレの日の亀岡の魅力を伝えたいですし、知っていただきたいですね。

亀岡市民の明智光秀に対する思いには驚く部分もあったが、やはりゆかりのある場所。今まで知らなかった光秀の一面を知ることができた。また、京都駅から電車で約25分というアクセスがよく、「都会から近いのに自然が残ってて歴史もあるし、いい街なんです」と微笑みながら話す館長からは、亀岡市に対する深い愛情が伝わってきた。

謎解きゲームを体験してみて、純粋にワクワクするような子供心を引き出されたと同時に、観光で行くだけでは訪れることのない場所や路地を歩けたこと、実際に亀岡の街の空気に触れることで、明智光秀という人物に少し近づけたような気がした。

また、京都ダイコクバーガーの店長は、「謎解きゲームのおかげで、週末は地元以外から人がたくさん来てくださるので賑わっています。ランチを楽しみながらキットを広げて謎を解いていらっしゃいますよ。謎解きや秋元先生など、ネタがつながって、地域の活性化になっていると思います」と笑顔で話しており、なぞしろを通して、地元の人と参加者の間に生まれるコミュニケーションを感じることができた。

こうして地元の人とふれあえるのも、現地に足を運ぶがゆえの楽しみのひとつ。街並みや歴史、自然に触れたあとは、地元の飲食店で美味しいご飯を食べて、より一層土地を楽しむことができるのも、リアル謎解きゲームの魅力だろう。『丹波亀山城 歴史リアル謎解きゲーム 出世人 明智光秀』は好評につき3月31日までの終了予定が、期間を延長し2019年5月12日(日)まで開催中。

是非挑戦して、全国の歴史ある城下町や、そこに住む人々に出会ってほしい。

取材・文・撮影=ERI KUBOTA