神田明神 文化交流館「EDOCCO」内の神田明神ホールとその周辺で開催中の『鈴木敏夫とジブリ展』。2019年5月12日(日)まで開催されている本展は、スタジオジブリの約3年ぶりとなる東京展覧会。高畑勲、宮崎駿とともにスタジオジブリの中心的役割を担ってきた鈴木敏夫プロデューサーの「言葉」にクローズアップし、数々の書や設定資料などを見ることができる。プレス発表会より、本展の詳細をお伝えしよう。

ジブリ作品プロデューサーの「言葉」に着目した展覧会

ジブリ作品のプロデューサーとして、世間に言わずと知れた存在である鈴木敏夫。1948年に名古屋市で生まれた鈴木は、徳間書店で雑誌編集者を務める傍ら、スタジオジブリの設立に参加。1989年からジブリ専従になり、現在は代表取締役も務めている。

会場は東京・神田の神田明神境内にある文化交流館「EDOCCO」2階の神田明神ホール。昨年12月にオープンしたばかりで秋葉原からも徒歩圏内。

会場は東京・神田の神田明神境内にある文化交流館「EDOCCO」2階の神田明神ホール。昨年12月にオープンしたばかりで秋葉原からも徒歩圏内。

ジブリ作品といえば、どこかノスタルジックな世界観やアニメーションの美しさだけでなく、作品の節々に散りばめられた観念的な言葉も魅力のひとつである。そういえば私も学生時代、『もののけ姫』の中で美輪明宏演じるモロがアシタカに言う「黙れ小僧!」というセリフをモノマネの“持ちネタ”にさせていただいていた。

開幕前日のフォトセッションに登場した鈴木敏夫

開幕前日のフォトセッションに登場した鈴木敏夫

もともと雑誌編集者だった鈴木は「編集者型の映画プロデューサー」を自認し、言葉を用いて監督と観客との架け橋を作ることを自らの仕事としている。

「EDOCCO」2階に上がる階段の前では、ジブリが企業の広告キャラクターとしてデザインしたコニャラの巨大人形がお待ちかね。

「EDOCCO」2階に上がる階段の前では、ジブリが企業の広告キャラクターとしてデザインしたコニャラの巨大人形がお待ちかね。

本展は、一昨年から広島、名古屋、金沢を巡回した『スタジオジブリ 鈴木敏夫 言葉の魔法展』をバージョンアップした企画展。『風の谷のナウシカ』『もののけ姫』『かぐや姫の物語』などジブリ作品におけるキャッチコピーやコンセプトメッセージ、題字の制作に携わってきた鈴木敏夫の「言葉」に着目し、鈴木自身の手書きによる数々の書や作品資料を展示している。子供時代の思い出にまつわる展示もあり、高畑、宮崎両監督の思いを汲みながら繰り出す鈴木の言葉の源泉を全6章の展示によって探っていく。

鈴木の「言葉力」を育んだ少年時代の趣味世界

プロローグとなる「書の間」には、鈴木敏夫が影響を受けた名言・格言や、ジブリ作品に登場する名言の書が展示されている。そこには、『風の谷のナウシカ』の「バルス!」や、『紅の豚』の「飛べない豚はただの豚だ」といった、ジブリファンなら誰もが知る名言もありながら、葛飾北斎の辞世の句やウディ・アレン作品の名セリフなど、鈴木の人間性が伺える言葉も。それらを、鈴木の独特な筆致で見ることができる。

「書の間」展示風景

「書の間」展示風景

「書の間」展示風景

「書の間」展示風景

続く第1章「少年期〜青年期 鈴木敏夫になるまで」では、少年時代の鈴木が雑誌を保管していた四畳半の原風景を再現し、漫画や小説に熱中した鈴木の趣味世界を知ることができる。白土三平の歴史漫画、江戸川乱歩の少年探偵モノ、そして多数の漫画雑誌が所狭しと置かれた空間に、鈴木と同年代のおじさんたちはノスタルジーを、若い世代は昭和レトロを感じるかもしれない。

第1章「少年期〜青年期 鈴木敏夫になるまで」展示風景

第1章「少年期〜青年期 鈴木敏夫になるまで」展示風景

アニメーション作品の裏側にある「言葉たちの力」

その後、第2章「鈴木敏夫の愛した昭和の映画」では、鈴木少年が愛した映画の数々をポスターで紹介するほか、映像をスクリーン上映。そして第3章「徳間書店時代」では、編集者時代の鈴木の足跡を写真や資料で辿る。鈴木も創刊に携わったアニメ専門誌『アニメージュ』の表紙がずらりと並ぶ風景は圧巻だ。

第3章「徳間書店時代」展示風景

第3章「徳間書店時代」展示風景

第3章「徳間書店時代」展示風景

第3章「徳間書店時代」展示風景

「夢だけど夢じゃなかった」(となりのトトロ)、「ここで働かせてください。」(千と千尋の神隠し)といった名言の立体パネルと主人公たちの巨大アニメイラストが展示された「名台詞の間」を抜けると、第4章「ジブリにまつわるエトセトラ」へと続く。

「名台詞の間」展示風景

「名台詞の間」展示風景

この章のはじめには、鈴木と宮崎、そして昨年亡くなった高畑勲の3人が「なごみ荘」のイラストの中で並んで腰掛けているパネルが飾られている。今にも写真の中で何か話しはじめそうな3人のレジェンドの笑顔に、心がほっこりさせられる。

「なごみ荘」

「なごみ荘」

第4章「ジブリにまつわるエトセトラ」展示風景

第4章「ジブリにまつわるエトセトラ」展示風景

ここには、主に鈴木がジブリ専従になってからの仕事に関する資料が展示されている。ポスターができるまでの過程、「サツキとメイの家」の図面、各作品のキャッチコピー案などは、多くのファンが泣いて喜びそうな内容だ。

『マックロクロスケとの出会い サツキとメイの家 図面』

『マックロクロスケとの出会い サツキとメイの家 図面』

『ハウルの動く城』『ゲド戦記』ロゴ

『ハウルの動く城』『ゲド戦記』ロゴ

また、走り書きや落書きのような形で書かれた設定資料からは、作品作りに至るまでのプロセスが垣間見える。モノづくりにかかる苦労とともに、作者たちが作品の中に込めたメッセージが伝わってくる。

「風の谷のナウシカ」設定資料

「風の谷のナウシカ」設定資料

「もののけ姫」設定

「もののけ姫」設定

さらには、アニメの声優や知人に送られた書と同じものも展示されていて、鈴木の多彩な人間関係やジブリ作品の影響力を知ることができる。

『コクリコ坂から』で声優を演じた長澤まさみに贈られた『無愛想』、岡田准一に贈られた『無器用』

『コクリコ坂から』で声優を演じた長澤まさみに贈られた『無愛想』、岡田准一に贈られた『無器用』

鈴木が劇作家の井上ひさしに宛てた手紙

鈴木が劇作家の井上ひさしに宛てた手紙

ジブリ作品の持つ生命力を体現したかのような「生きる」のコピー

第5章「自分のためでなく他人のために」には、ジブリが「もののけ姫」以降のジブリ作品の普遍的テーマになってきた「生きる」への思いが込められた歴代作品のキャッチコピーが並べられている。例えば、『もののけ姫』の「生きろ。」や、『風立ちぬ』の「生きねば。」は、もっともストレートな言葉といえよう。数文字の中に強弱を付けて書かれた鈴木の独特な文体は、作品から滲み出ている生命の力強さを体現しているかのようだ。

第5章「自分のためでなく他人のために」展示風景

第5章「自分のためでなく他人のために」展示風景

『宮崎監督が描く鈴木敏夫像』

『宮崎監督が描く鈴木敏夫像』

第6章「言葉の魔法」では、直径約3メートルの巨大オブジェによる「湯婆婆と銭婆の“開運・恋愛”おみくじ」が待っている。これは湯婆婆が恋愛おみくじ、銭婆が開運おみくじになっていて、口からおみくじのお札を引く仕組み。

「湯婆婆と銭婆の“開運・恋愛”おみくじ」

「湯婆婆と銭婆の“開運・恋愛”おみくじ」

お札を引く瞬間、「みんな、よく来たね」「そう簡単にはいかないよ、世の中には決まりってもんがあるんだ!」などと、夏木マリ演じる湯婆婆&銭婆が話しかけてくれる。どんな結果が出るかは運次第だが、何が出ても恨みっこなし。ありがたい言葉が書かれたおみくじを大切に持ち帰ろう。

「生きてみたら。」のコピーが載った大吉の開運おみくじ。

「生きてみたら。」のコピーが載った大吉の開運おみくじ。

作家と観客を繋ぐために、鈴木が紡いできたコピーの数々。文字で味わうジブリの世界は、アニメーションとはまた違った感覚で作品を噛み締める貴重な機会といえるだろう。

会場では、「湯婆婆/手ぬぐい」(1296円)、「銭婆/がま口」(1944円)など、展覧会限定グッズも販売。「八百万の神々/御朱印帳」(1620円)も売っているので、帰りに神田明神でご朱印をもらって帰るのもいいだろう。

新元号「令和」の書

新元号「令和」の書

神田明神コラボ御守と絵馬も登場

神田明神コラボ御守と絵馬も登場

『鈴木敏夫とジブリ展』は、神田明神 文化交流館「EDOCCO」内の神田明神ホールとその周辺エリアで2019年5月12日(日)まで開催中。23日間と会期が短いので、ジブリ好きは急いで予定をチェックしよう。

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