ヴァイオリン2台とピアノでクラシックから映画音楽、ポップスまで上質なインストルメンタルを聴かせるトリオTSUKEMENが、6月30日(日)に、東京・オペラシティ コンサートホールにて単独公演『TSUKEMEN LIVE 2019 〜時を超える絆〜』を行った。タイトルに“絆”というワードが用いられているように、さまざまな絆を表現し、その熱い想いを感じさせるコンサートになった。会場には広い年齢層のファンがつめかけ満員状態。小学生くらいのお子さんを連れたファミリー層、高齢者のご夫婦なども多く見かけられ、TSUKEMENのファン層の広さを感じさせる。

定刻にTAIRIKU、SUGURU、KENTAの3人がやや緊張の面持ちでステージに登場。コンサートはジャクソン5の「I WANT YOU BACK」からスタートした。誰もが聴いたことのある爽やかでポップなメロディが心地良くホールに響き渡る。そして間髪を入れずに続けられたパガニーニーの「ラ・カンパネラ」で早くも客席の度肝を抜く。美しいメロディとピチカート、ハモリとカウンターメロディが複雑に入り組んだ大胆なアレンジは新鮮で、超絶技巧の演奏が緊張感高く伝わってくる。

「今年もオペラシティに戻ってくることができました。18〜21世紀まで“時を越えた音楽旅行”に皆さんをお連れします」

とのTAIRIKUのMCの後に、ロックの名曲エリック・クラプトン「CHANGE THE WORLD」が演奏され、そのたおやかなメロディに会場全体がリラックスした雰囲気に包まれる。3人の表情も柔らかくなってきているようだ。そして「映画を見て感動し、あんなに泣いたことはない」とMCでTAIRIKUが語ったのが映画『ボヘミアン・ラプソディ』。この映画で描かれる主人公の苦闘を支えるバンドメンバーの“絆”に感動し、その絆をTSUKEMENでも表現したいということで演奏されたのが「QUEENメドレー」。これがコンサート前半のハイライトの一つになった。「ボヘミアン・ラプソディ」でのヴァイオリン〜ヴィオラ〜ピアノと渡されていくメロディパートの美しさ、「WE WILL ROCK YOU」での足踏みとハンドクラップのリズムに乗るアドリブ風の激しいSUGURUのピアノ、「WE ARE THE CHAMPION」でのはかなくも美しいメロディを奏でるKENTAとTAIRIKUの弦に観客はウットリしている。


そしてアヴィーチーの「WAITING FOR YOU」でEDM(エレクトロニック・ダンス・ミュージック)をクラシック風に演奏するという世にも珍しい挑戦を披露した後、前半最大の盛り上がりを見せたのがベートーベン「月光」である。SUGURUのピアノの上にKENTAとTAIRIKU二人のハーモニーが乗っていく。ヴィオラの低音が美しい。ゆっくりと美しいメロディを慈しむように気持ちを入れた第一楽章の“静”から第三楽章の“動”へ転換。ピアノと弦が入り乱れ超絶なテクニックで激しい感情を叩き付ける。鬼気迫る演奏に、観客も息を飲んで食い入るように目を見張り耳をそばだてる。そして割れんばかりの拍手で演奏は締めくくられた。

後半はTSUKEMENのメンバー3人の“絆”を表す楽曲「真田組曲」から始まった。この曲は「第一楽章〜群雄割拠〜」をTAIRIKU、「第二楽章〜青い炎〜」をKENTA、「第三楽章〜疾風迅雷〜」をSUGURUが作曲するという3人の共作になっている。客席から登場した弦2人はそのまま演奏を開始。懐かしさを感じさせるイントロのメロディに続いて激しいヴィオラの刻み、そして息を呑む3人の攻防。時代という大きな敵と戦った真田幸村らの激情と悲しみを表現したメロディと演奏は、まるで映画を見ているかのように客席に届いてくる。3人の演奏とは思えない音の厚みに支えられたセンチメンタルなメロディと激しいリズムの対比が美しい。特にTAIRIKUのヴィオラの存在感の大きさが特に印象に残った。“この組曲でTAIRIKUはヴィオラをついに手中に収めたのでは”と思えるような演奏だった。

ここからは、3人の“ラブラブさ!?”を大いにフィーチャーした3曲が披露された。2人がペアになり残りの1人のために作るというコンセプトの3曲。KENTAに捧げた「LOVE YOU」はきらきらした美メロ曲。後ろに控えるヴィオラが心地良くKENTAのヴァイオリンを引き立てる。SUGURUに捧げた「ベストフレンド」ではSUGURUが鍵盤ハーモニカをポップに、またジャジーに吹きまくる。すごく楽しそうにお互いを見やる3人の表情が印象的だ。そして「旋律の彼方へ」は、“TSUKEMENの音楽の幅を広げるためにヴィオラに挑戦してくれた”TAIRIKUのために作られた楽曲。深みのあるヴィオラのイントロ、曲の途中でKENTAにヴィオラを渡しTAIRIKUがヴァイオリンを弾く。3人がただ仲が良いだけじゃなく、時には喧嘩もしながら演奏のアンサンブル、心のアンサンブルを作り上げてきた。そんなことすらも感じさせてくれる好演だ。


そして、このコンサートの最大の山場にして最後の曲「時を越える絆」だ。この楽曲は、TSUKEMENが11年目となり一番大事にしていることは仲間と力を合わせて進んでいくということ。下の年代の人に向けて、一人で悩むのではなくて仲間と手を携えて進んでいこう、というメッセージを込めているという。2018年9月に長崎の浦上天主堂で聖和女子学院高等学校 コーラス部とコンサートをしたのが始まりで、今回のツアーでも各地で高校の合唱部や一般の合唱サークルの方達と共演している。

初めてTSUKEMENの三人がメドレー形式で作ったという「時を超える絆」。メロディなどが部分的に突出しているのではなく、流れがとてもスムーズで、三人がお互いのことを思いやりながらメロディを重ねていったというのがよく現れている。また、TAIRIKUの父さだまさし氏による歌詞は、青春の悩みや苦悩がありつつも未来に向かっていく希望を感じさせた。


今回オペラシティに登場してくれたのは小金井北高等学校 合唱部の総勢33名の皆さん。「この同じ空間で同じ時間を過ごす奇跡。ここには絆がある。最後に心をこめて」というTAIRIKUのMCに引き続いて演奏が披露された。心がこもった合唱に観客席は感動。ハンカチで目頭を押さえる人もそこかしこに居たようだ。メロディの起伏があって難しい曲を男女混合の生徒達が一心に歌う。その素晴らしいハーモニーと気持ちよく歌いこなす姿に万雷の拍手が送られた。演奏、歌唱が高い次元で合体したまさに全員の絆の表現だった。

ポップス、ロック、EDM、クラシック、そしてオリジナル曲が入り乱れる、まさにクロスオーバーな活動を目指すTSUKEMENらしさの溢れた楽曲を聞かせてくれたコンサートだった。そして今回のコンセプトである“絆”、メンバー3人の固い絆、コンサートホールに集う人々の絆、心の中にある感動をもたらしてくれた先人との絆というあらゆる絆を大切にしながら音楽を作り上げていくという決意がとても強く感じられたことは特筆しておきたい。

さらに進化と深化を続けるTSUKEMEN。次はどういうことを見せて聞かせてくれるのか、楽しみにしていたい。

取材・文=森本智 写真=オフィシャル提供