2006年に初演し、2009年に再演した東京セレソンデラックスの代表作『流れ星』。この秋、タクフェスとして10年ぶりに再々演。現在、全国をツアー中で12月には最終地である大阪にやってくる。小さな下宿屋を営むある夫婦が突然の別れに直面、遺された妻・夏子(田中美佐子)の前に現われたのは魔法使いだと称すマリー(飯豊まりえ)だった。「あの頃に戻りたい」と願った夏子はマリーと、1970年の高度経済成長に沸く日本へとタイムスリップするが……。ストーリーをいざなっていく役割でもある、魔法使いのマリーに抜擢されたのは本公演で舞台初出演となる飯豊まりえ。稽古についてや本番への心境を聞いた。

飯豊まりえ

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――10月から公演が始まっていますが、演じてみていかがですか?

やっぱりダイレクトに反応が返ってくるので、ありがたい環境だなと思います。ハプニングなどあると改めて気を引き締めなきゃいけないなと思いますし、生で伝えるものだから、すごく繊細で難しさもありますね。

――難しさとはどういうところに感じるのでしょうか?

ちょっとのニュアンスでも伝わり方が変わってくるので、テンポ感とか独特で。あと、笑い待ちをしてお芝居しないといけないのですが、その空気を読む加減が難しいです。お客様は笑いたいけど、あんまりそこを重視しちゃうとテンポが崩れてしまうので。

――宅間さんから、初舞台にあたってアドバイスはありましたか?

私は元々、映像作品の仕事が多くて、声を大きく張ることがなかったのですが、舞台では大きな声量が求められるので、普段から声を出していたら、出るようになるからとアドバイスをいただきました。最初の頃とかは喉が筋肉痛になっちゃって、アイシングしなきゃ次の日が使い物にならないくらいでした(笑)。

飯豊まりえ

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――稽古から本番まで、どういう感じで進んでいったのですか?

台本を持って稽古しないというルールだったので、絶対自分のセリフは覚えて。相手のセリフも覚えるという感じでした。だから途中からは、台本をカバンに入れずに稽古場に行っていました。私がちゃんとセリフを覚えていないと、周りが回らなくなっちゃうので、耳で覚えるようにしていました。

――魔法使いのマリーという役どころのポイントはどこですか?

私は魔法使いが好きで、ファンタジーものの作品も観ていて憧れもあったので、イメージがつきやすかったですね。一番印象が近いなと思ったのは『アラジン』のジーニーみたいな陽気な感じ。マリーは女の子ですが、ちょっと男っぽくしてほしいと言われたので、いかに雑にできるかとか。マリーは言葉遣いも悪いのですが、そういうものだと割り切ってやっていました。私がやらないと進まないし、多分、みんなもやりにくくなっちゃうと思いますし……。私以外にも、強烈な人達がいっぱいいますし(笑)

飯豊まりえ

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――この共演者のみなさんはいかがですか?

舞台やミュージカルを経験されている方とか、芸人さんとか、いろんな方面から集結したという感覚がすごく新鮮です。役作りもそれぞれ違いますし、こういうふうに考えているんだとか思えるのが面白かったです。

――映像作品では、舞台のような稽古はないのですか?

リハーサルはたまにありますけど、何日も、ということはないですね。1回始まったらぶっ通しで。新しい台本が来て、セリフを覚えて、演じて、次の台本が来て、みたいな感じです。舞台は同じセリフをずっと練習するので、最初はそれに飽きちゃうかなとか思っていたのですが、毎回違う感じでやった方が面白いなとか、試せる時間がたっぷりあって。向き合っている時間が長かったというのもあって、この役は忘れられない役になるんじゃないかなと思いました。ギャグパートもありますが、1回笑いが起きたら、次はそれは使わないようにしようと思ったり。

――ギャグは飯豊さんが考えてらっしゃるんですか?

そうです。宅間さんはノータッチです。ただ、私は芸人さんじゃないから、そこまで面白さを求められていなくて、微妙なシュールさを狙っています(笑)。

飯豊まりえ

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――この役は飯豊さんのキャリアの中で、一つポイントになりそうですね。

そうですね。ただ感覚的には、この役でどうにかなりたいというより、やっぱり宅間さんの舞台『タクフェス』なので、このお話がより生き生きしたらいいなと思います。再々演ですが、より印象に残る作品になったらいいなと思います。

――宅間さんの作品の中でも人気演目ですもんね。実際、演じてみて「宅間作品」はいかがですか?

笑って、最後にすごく泣けて、心が浄化されるような作品だと思いますし、人のために何か一生懸命やるという姿が素敵だなと思いました。誰かのために一生懸命になっているとか、誰かのために何かをするとか。それの積み重ねだなって。宅間さんの舞台は厳しいとか言われていますけど、そんな方が書かれている作品と思えないぐらい温かい(笑)。演出もすごく丁寧で。一人一人にちゃんと向き合ってくれましたし、きっと宅間さんはすごく人思いで、愛に溢れているロマンチックな方なのだと思います。

――物語では「4つのお願い」がキーになってきますが、飯豊さんが今、4つ願いを上げるとしたら何ですか?

1つ目は疲れない体が欲しい。2つ目は自分の周りの人達を回復できるパワー、助けてあげるゴッドハンドが欲しい。3つ目は大阪は東京から2時間半ぐらいかかるじゃないですか。だから、1分ぐらい集中したら大阪に着くような、タイムワープができるようになりたい。4つ目は予言ができるようになりたい、ですね。未来は変えられないと分かっていても、それが起こると知っていれば……いや、知らない方が幸せなのかな。どっちが幸せかを確認したいですね(笑)。

――では最後に、『流れ星』の公演に向けて一言、お願いします。

最初の出来事に「そういうことだったんだ」と思うことがいくつもあって、観ていて引き込まれると思います。出演者それぞれの見せ場があって、みんなのことを応援したくなるので、観終わった後に、出演者全員のことを愛せると思います。改めて『流れ星』という作品は素敵だと感じてもらえると思うので、私も丁寧にお届けできたらなと思います。

飯豊まりえ

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取材・文=Iwamoto.K 撮影=日吉“JP”純平
メイク=坂手マキ(Vicca) スタイリスト=真壁いずみ