2019年11月27・28日、バレエと日舞のコラボレーション『信長 -SAMURAI-』が上演される。ロシアのカリスマダンサー、ファルフ・ルジマトフを信長役に、日本舞踊家の藤間蘭黄が斎藤道三・明智光秀の二役と演出・振付を、元ボリショイバレエ団ダンサーにして現在はニジニノブゴロド国立歌劇場副総裁兼バレエ団芸術監督の岩田守弘が木下藤吉郎(秀吉)役と振付に携わるという、日本とロシアを代表する舞踊家による異色のコラボレーションとして話題を呼んだ本作は、2015年の国立劇場における初演で大好評を博し、2017年に再演。2019年にはロシアのサンクトペテルブルグ、ウランウデ、モスクワで2回ずつ、計6公演を行い、こちらも大絶賛を得た。この秋の日本公演は、その凱旋公演とも言えるものだ。初演から4年を経てさらに進化と深化した注目の舞台である。(文章中敬称略)

■バレエ&日舞のカリスマたちが踊る、戦国のカリスマ

戦国武将・織田信長はテレビドラマや映画、小説、さらにはゲームまで、400年の時を経た今でも多くのクリエイターにインスピレーションを与え続ける時を超えたカリスマだ。本作はその破天荒な生き様で時代を切り開いた信長を主人公に、桶狭間の戦いや比叡山の焼き討ち、本能寺の変などの「名場面」を取り入れながら、一時代を駆け抜けた風雲児の生き様を描き出す。

信長を演じるルジマトフは、花道から登場してきた瞬間、観客の視線を一身に集める絶大なオーラを放ち、当時の「日本人」の枠を超えていた信長の存在感に、凄みを伴った説得力を持たせる。カリスマたるゆえの孤高感をも漂わせる稀代のダンサー、ルジマトフならではの役柄だ。
藤間は信長の義父・斎藤道三と、信長の腹心にしてのちに彼を裏切り「本能寺の変」を起こす明智光秀役の二役を踊る。バレエとは対極の動きにある、しっかりと大地を見据え踏みしめる日本舞踊の魅力を、道三の時は力強さを、光秀の時は凛とした決意伴って表現する。
そして信長に仕え天下取りを夢見る陽気な藤吉郎(秀吉)を踊るのは岩田守弘だ。元ボリショイバレエ団のダンサーにして、退団後はブリヤート共和国国立歌劇場バレエ団芸術監督(2012〜2019年)、ニジニノブゴロド国立歌劇場副総裁兼バレエ団芸術監督(2019年)を務める岩田の、躍動感あふれる踊りはバレエの魅力をいかんなく発揮し、またお調子者で「機敏な」藤吉郎の魅力をいかんなく発揮している。

本作は藤間が掲げる「日本舞踊の可能性」公演として、ジャンルにとらわれない舞踊表現を提示する公演でもある。日本の歴史に新時代を築いた「信長」は、まさにこうした新時代を拓く挑戦にふさわしい。日露を含め4回目となる本公演、進化&深化の軌跡をぜひ目にしていただきたい。