2019年8月8日(木)から2020年1月13日(月・祝)の期間、寺田倉庫で『STAR WARS TM Identities: The Exhibition』(以下、STAR WARS Identities/スター・ウォーズ アイデンティティーズ)が開催中だ。1977年に第一作が公開されて以来、新作が出るたびに話題をさらい、2020年12月20日(金)には映画『スター・ウォーズ/スカイウォーカーの夜明け』の公開を控えるスター・ウォーズ。本展『スター・ウォーズ アイデンティティーズ』は、映画作品と同様に、世代を超えて楽しむことができる深い内容だった。


最初で最後の来日となる資料200点が一堂に会する、貴重な機会

会場に入ると、主人公をサポートするロボットたち、クローン兵士のストームトルーパーや賞金稼ぎのボバ・フェットなど、話を彩る人気キャラクターたちにずらりと出迎えられる。本展で観ることができる模型、小道具、衣裳などの200点以上もの貴重な資料は、今後はロサンゼルスに設立されたLucasfilm museumに収録されるため、来日は最初で最後の機会となる。

左:BB-8 中央:ボバ・フェット 右:ストームトルーパー

左:BB-8 中央:ボバ・フェット 右:ストームトルーパー

左:アミダラ女王(式典で着用した衣裳)中央:パドメ・アミダラ(レイア姫へのオマージュの衣裳)右:アミダラ元老院議員

左:アミダラ女王(式典で着用した衣裳)中央:パドメ・アミダラ(レイア姫へのオマージュの衣裳)右:アミダラ元老院議員

善の実行者とされるジェダイたち。左:キット・フィストー 右:メイス・ウィンドゥ

善の実行者とされるジェダイたち。左:キット・フィストー 右:メイス・ウィンドゥ

エピソード5でカーボン凍結されたハン・ソロやエピソード6で囚われの身となったレイア姫が着用していたメタルビキニなど、多くの人の記憶に残るシーンの衣裳や小道具もふんだんに展示されている。カーボン凍結のハン・ソロの顔と手はハリソン・フォード、その他の部分は匿名の志願者によって作成されたそうだ。レイア姫の衣裳は、現シリーズの主人公である女性のレイが、これほど露出の多い奴隷のような衣裳を着用することは想像もできないことから、製作当時の時代を感じさせる。

左:カーボン冷凍されたハン・ソロ 右:奴隷となったレイア

左:カーボン冷凍されたハン・ソロ 右:奴隷となったレイア

作中に登場するビークル(宇宙船)を展示しているブースでは、まるでハイパードライブ(星間移動する際の推進システム)中のような気分になれる。ハン・ソロのビークルであるミレニアム・ファルコンの上部図やコックピットの内部図などのスケッチもあり、こちらはファン垂涎の品だろう。監督のジョージ・ルーカスは、ミレニアム・ファルコンの形はハンバーガーからインスピレーションを得ているとのことである。

手前:スター・デストロイヤーのモデル

手前:スター・デストロイヤーのモデル

ミレニアム・ファルコンのモデル

ミレニアム・ファルコンのモデル

ミレニアム・ファルコンのコンセプト・アート

ミレニアム・ファルコンのコンセプト・アート

キャラクター設定のために作成されたコンセプト・アートからは、映画に登場するまでに登場人物がどのような変遷を辿ったのかを知ることができる。例えばエピソード4〜6の主人公は、ルーク・スカイウォーカーの代わりにプリンセスが主人公になる可能性もあったというし、ルークとレイア姫は当初双子ではなく、いとこという設定だった。

ルーク・スカイウォーカー等のコンセプト・アート

ルーク・スカイウォーカー等のコンセプト・アート

ルークの師匠となる銀河一のジェダイ(正義の守護者)の指導者・ヨーダのマペットは『セサミストリート』のマペットを制作しているフランク・オズの手によるもの。ヨーダはもともとミンチという名前で、コンセプト・アート上、外見もかなり変更されている。

ヨーダのアーカイブ用のレプリカ

ヨーダのアーカイブ用のレプリカ


これらの貴重なコンセプト・アートは、ジョージ・ルーカスの当初の狙いや思考の変化を示しており、スター・ウォーズの作品世界を知る重要な鍵となるだろう。

スター・ウォーズの世界のオリジナルキャラクターを作成できる、まったく新しい体験

本展の最大の特徴の一つは、入口で配布されたID付きのブレスレットを装着し、各種の質問に答えると、自分のパーソナリティを反映したスター・ウォーズの世界のオリジナルキャラクターを作成できることだ。

入口で配布されるリストバンドとイヤホンを装着して会場を巡る。

入口で配布されるリストバンドとイヤホンを装着して会場を巡る。

本展のセクションは、大きくは「起源」「影響」「選択」に分かれている。まずはどのような種族の生物であるかを選択し、展示を観ながらインタラクティブスペースのさまざまな質問に答えていく。



どの星に生まれたか、何を持って生まれてきたか。どんな人と一緒にいて、誰を尊敬するのか。何が大切なのか。合計10個の質問に答えると、会場の最後のブースで回答を反映したキャラクターが映像として現れ、端末にメールアドレスを入力すると、作成したキャラクターが表示されるURLを入手することができる。


生物種にイウォーク、指導者にR2-D2、職業に元老院議員を選択。最終質問では皇帝からの勧誘を受け入れている。

生物種にイウォーク、指導者にR2-D2、職業に元老院議員を選択。最終質問では皇帝からの勧誘を受け入れている。

最初は単純な性格診断のようなものかと思わせるが、問いのレベルはどんどん複雑になり、内容も重厚になってくる。質問にはそれに関連するスター・ウォーズの映像があり、問いの回答が作中でどのような結果に繋がるかを示す。遺伝子が能力を決定すること。目標を達成するためには仲間が必要であること。仕事が自己認識と他者が持つ印象に大きく関わること。一般性のある事象を作中の出来事に当てはめて説明するこのインタラクティブは、エンターテイメント性と学習性を併せ持ち、子どもだけではなく、大人も楽しみつつ学ぶことができる内容になっている。


自分を知ることでキャラクターを知り、物語をより深く理解できる

インタラクティブスペースは、スター・ウォーズの登場人物を問いに関連づけて紹介する。育ちを選択する質問では、エピソード4〜6の主人公であるルーク・スカイウォーカーは厳しく育成され、エピソード1〜3の主人公であるアナキン・スカイウォーカー(後のダース・ベイダー)は親が自由に育てたことなどを対比させている。しかし後に、のびのびと育ったはずのアナキンは、傲慢で神経質な青年になることも示される。


アナキン・スカイウォーカー

アナキン・スカイウォーカー

尊敬する人を選択するコーナーでは、身体的能力に優れたチューバッカや精神的能力に富んだジェダイたち、高い知的能力を持つアミダラなどが登場する。質問に答えながらキャラクターの特徴や名言を知ることで親近感を抱き、作品世界により深く入り込むことができる。


最終質問では銀河帝国の皇帝からダークサイドへと呼び寄せられる。彼に忠誠を誓えば絶大な権力が手に入るのだ。映画では、この問いで「皇帝の仲間になる」を選んだのがアナキン・スカイウォーカー、「提案を断る」ことにしたのはルーク・スカイウォーカーだった。


敵役である皇帝だが、比較的合法的な手続きで権力を握っており、言動も納得できるものが多い。また善の実行者であるジェダイたちも、行動や言動の全てに賛同できるとは言い難く、弟子に何度も裏切られている。善悪が曖昧で表裏一体であることは、スター・ウォーズの世界に深みを与え、キャラクターをよりリアルにしている。


スター・ウォーズの全シリーズを通して最も有名な登場人物の1人であるダース・ベイダーは、苦悩を抱えながらダークサイドに堕ちるが、子どもっぽさや協調性のなさも含めて共感できる人物であり、展示されているスケッチやエピソードからも、ジョージ・ルーカスにとって最も思い入れがあるキャラクターであることがわかる。


ダース・ベイダー。なお、ジェダイのライトセーバー(光線剣)の色は青か緑、シス(皇帝をはじめとする、負の感情から力を引き出す者のことで、ジェダイと相対する存在)のライトセーバーの色は赤である。

ダース・ベイダー。なお、ジェダイのライトセーバー(光線剣)の色は青か緑、シス(皇帝をはじめとする、負の感情から力を引き出す者のことで、ジェダイと相対する存在)のライトセーバーの色は赤である。

世界中で愛されているスター・ウォーズ。特殊視覚効果の発展、登場する科学技術、物語の中の政治など、注目すべき点は無数にある。本展はその中でもキャラクターに注目し、観る側が自分を知りながら登場人物を知ることができるという、現代のテクノロジーを駆使したかつてない展示である。新作映画を観る前に本展を観れば、映画鑑賞をより楽しめるし、映画鑑賞後に本展へ来訪すれば、スター・ウォーズの世界をより深く知ることができるだろう。是非会期中に足を運び、映画史に残る名作の魅力を存分に味わっていただきたい。