2019年、KOTORIの歩みはとにかく大きかった。ドラマー・細川千弘の新加入からはじまり、バンド主催のサーキットイベントの開催、そして4thシングル「HANE」の発売。『FUJI ROCK FESTIVAL』や『京都大作戦』など大型フェスへの出演も話題となった。そして今年10月には2ndフルアルバム『REVIVAL』を発表し、今は全国ツアー『“REVIVAL TOUR”2019』を終え、年明けの『“REVIVAL TOUR ”FINAL SERIES』を残すのみ。タイトなスケジュールを乗り越えバンドのスケールは大きくなる一方だが、本人たちは手応えを感じつつもいたって自然体な様子。それでも順風満帆に見えた2019年の活動も実はいくつも壁があった!? しかも、さらなる飛躍を期待したい2020年の活動にすでに波乱の予感が……全国ツアーの合間、横山優也(Vo.Gt)、細川千弘(Dr)の2人に話を聞いた。

KOTORI

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――2枚目のフルアルバム『REVIVAL』が10月にリリースされ、約2か月が経ちましたね。2019年はバンド結成5周年にあたる年でしたが、一年を振り返っていかがですか?

横山優也(以下、横山):5周年なんだ!?  気にしてなかったですね。

――経過年数は気にしていなんですね。でも、5年も経てばバンドを取り巻く環境にはずいぶん変化があったんじゃないですか?

横山:それはだいぶ変わりました。レーベルに入ってからは本当にめまぐるしくて。でも、まわりでサポートをしてくれる、取り巻く人たちが増えることでかなり活動しやすくなりましたね。(細川)千弘が加入したのもまだ今年なんですよね。

細川千弘(以下、細川):KOTORIはメンバーになる前から知っているバンドなんですけど、今年1年で対バンをする人が変わったなと感じてて。去年やったバンドと今年はやってないなとか、ライブハウスも変わってきたし。

横山:今までと変わらず対バンライブをやってるんですけど、自分たちで好きなバンドや先輩バンドを呼べるようになってきました。

――バンドの実力が上がっていると実感していると。

横山:それはありますね。単純なところだと、いろんなフェスに出演させてもらったりして。これまでは「出れるぞ!」と、出演できる喜びのほうが大きかったんですけど、昨年はどれだけ良いライブができるかを考える余裕ができてきたなと思いました。

横山優也(Vo.Gt)

横山優也(Vo.Gt)

――昨年は『FUJI ROCK FESTIVAL』や『京都大作戦』といった、ジャンルもお客さんも多様なイベントに出演する機会もありましたよね。特に、『京都大作戦』への出演はKOTORIの音楽からは異色な存在を感じるイベントでもあって。

横山:自分でも「浮いてるな」と思ってました(笑)。でも、ああいったイベントは僕らのことを知らない人がいっぱいいるのは当たり前なんですけど、お客さんもそれに慣れていることもあってか、すんなりと入ってきやすい、間口が広いイベントだなと思いましたね。

細川:『FUJI ROCK FESTIVAL』も印象的でしたね。お客さんがライブハウスとは違う楽しみ方をしているのがすごく良くて。僕らがこういう環境でライブがしたいっていう、理想的な環境が『FUJI ROCK FESTIVAL』にはありましたね。

――細川さんが新しくメンバーとして入ることで、ライブの見せ方に変化はありましたか?

横山:理想のフロアに近づきつつあるなと思いますね。

細川:今回のアルバムの曲の存在が大きいかな。

横山:(細川)千弘が入る前と後でも、バンドがやりたいことは変わってはいないんですよ。ただお客さんがノリとか周囲に合わせるのではなく、純粋に音楽を楽しんでくれるようになってきて。

細川:ミディアムテンポや大きいビートのときに、オレらが「ここヤバイでしょ!」という瞬間にお客さんも一緒に盛り上がってくれる。

――オーディエンスとバンドの間に意思疎通が生まれていると。

横山:そう。ここが見せ場だというのをわかってくれているというか。ラフな感じがリアクションに出ているんですよね。

――昨年はメンバーの加入やアルバムとシングルの発売、大きなイベントへの出演など、バンドとしては大きな一年になっているのは間違いないですね。

横山:やっとやりたいことが出来るし、やってもらえるし、分かってもらえる。

細川千弘(Dr)

細川千弘(Dr)

――昨年最初に体調不良によるライブキャンセルにはドキっとさせられましたが。

横山:あ! ありましたね。僕は厄年で、本厄でした。

――でも、良いこと尽くしできっと厄は落ちてますよね。

細川:今年、僕と上坂が本厄なんで(笑)。よこちん(横山)は後厄だし。

横山:今年も絶対何かあります!

――その予想は、ファンのみんなが心配しちゃうのでいらないです(笑)。

横山・細川:笑。

細川:でも、トラブルみたいなのはそれくらいで、制作も順調だったしね。

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――活動の多忙さは一昨年の比ではないですよね。去年はMVの公開本数もすごく多かったですし。10月にリリースした2枚目のフルアルバム『REVIVAL』をリリースしたあとに公開された「雨のあと」がすごく印象的で。アルバムをしっかりと聴き込んだあとに映像が入ることで、「こういう世界観だったんだ」という発見もあって。

横山:後出しっていいですよね……。この映像は賛同の声がすごく大きかったです。

――MVの公開、そしてアルバムを携えての全国ツアー。今はファイナル公演を残してひと段落といった感じですが、手応えはいかがですか?

横山:単純に、ライブが楽しいって公演ごとに感じます。どんどん良くなっていくんですよね。最初のほうはまだ伝えきれてないなと思うこともあったんですけど、盛り上がる曲の熱量はしっかりと伝わるんですよ。でも、ミディアムテンポの曲とか、今までにない感じの曲でお客さんが戸惑っているのを、どうにかバンドの演奏で惹き込めないかと、いつもメンバーと話しをしてて。そうしたら、静岡あたりのツアーからすごく濃密な感じになってきて……。

細川:あればヤバかったね。

――今回のツアーはかなりタイトなスケジュールが多くて。それも影響しているのかもしれないですね。

横山:鬼キツなスケジュールでしたね。でも、確かに「わかってきたかも」という感覚があって。

――むしろ、今はライブを止めたくないくらいの高揚感がありそうですね。

横山:そうですね。でも、やっぱり鬼キツなんで、ライブはやりたくなくなりましたよ(笑)。今回はフルアルバムのツアーなんで、ライブの尺も長めなんで、やりたい曲をいっぱいできる。その分お客さんを惹き込めるんだけど、体力的にはキツさもあって。

細川:アルバムの曲も色々あるしね。今回のアルバムにはインスト曲もあるから、そこからライブを始めたりもして。

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――『REVIVAL』に収録されている「Eve of the revial」はバンド初のインスト曲ということもあって、作品のなかでもすごく印象的な存在感を示していますよね。ライブでどんな見せ方になるのか気になります。

横山:KOTORIについて、よく「歌がいいですね」と言われるんですよ。でも、僕は楽器が良ければそれで良くって。歌はそこに乗っているだけでいい。声は僕の中ではそんなに重要じゃないんですよ。やるならやりますけど?って感じで、まずは楽器陣だけで圧倒させたいという気持ちがあって。昔からインスト曲を作りたいって話をしてたんです。

――歌を重要視していないのは意外でした。むしろ、そこをフューチャーされることは多いですよね。

横山:そうなんです。今まではそれが怖くてやりたくても出来ない、歌がないと不安な感じがあったんです。でも、今回は歌がなくてもグルーヴだけでお客さんを乗せることができるし、曲の構成でもライブの盛り上がりを作ることができた。千弘のおかげかなって思いますね。

――細川さんが生み出すグルーヴがバンドに良い影響を与えていったんですね。細川さんが正式にKOTORIに加入したのは4月ですが、アルバム制作はいつ頃から?

細川:4月に『HANE』をリリースしたあと、すぐに作り始めましたね。

――細川さんはサポートメンバーとしてもバンドに携わっていましたし、加入後は制作は順調に?

横山:いや、曲がなかったっす!

――「なかったっす」って(笑)。キレイに言い切っちゃいましたね。

横山:もうオレが曲を作るのが遅くって。

細川:昔からそうだよね。

横山:レコーディング当日に全曲出来ていたことがないんです。

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――夏休みの宿題は最終日にやっちゃうタイプですね。

横山:はい! でも、案外追い詰められているときのほうがいい曲ができて。もうこれ以上出ないぶん、今あるものしかない!と感じで。それで「雨のあと」ができて。

――あんな良い曲が……。そんな切羽詰まって出来た曲とは思えないですよ。

横山:あ、あんまりこういうこと言わないほうがいいのか!?

――いや、良い曲がすんなりと出てくることは素晴らしいです。

横山:そうじゃないと、考えすぎちゃうっていうのもあるんですよね。

細川:うれしいことに、レコーディング当日の朝によこちんから曲をもらった「ラブソング」とか、全部良い曲で。

――ラブソングの曲名をそのまま「ラブソング」と言い切ってしまうのはKOTORIの作品のなかでもすごく斬新ですよね。横山さんが描く詞世界はすごくシンプルで、聞き手によってそれぞれ世界を置き換えられる言葉が綴られているなという印象があります。

横山:本当は言葉で伝えるのが難しくて……。

――こんなにもストレートな言葉で思いを描いているのに?

横山:歌にしないとできない。歌詞は完全に後付けなんですよね。

細川:曲ができた段階でオケを録って、メロディは誰も知らないままその曲のレコーディングが終わるんですよ。最後に歌入れをするので、よこちんの作業が終わるまで、どんな曲になったのか僕らも知らないんですよね。だから歌詞もわからなくって。

横山:もうプレッシャーでしかないんですよ(苦笑)。

横山優也(Vo.Gt)

横山優也(Vo.Gt)

――今回のアルバムは制作がスタートする段階で全体像のイメージはあったんでしょうか?

横山:こういう曲を作りたいっていうイメージはあるんですけど、今回は大きなポイントがひとつあって。これまでは僕がKOTORIの全部の曲を作っていたんですよ。それを今回、半分近くを上坂が作曲していて。それまでは全部自分が作った曲じゃないとメロディを入れたくないと思っていて。

――歌詞を書くうえでもイメージがしやすいですもんね。

横山:そうなんです。でも上坂が打ち込みで作ってきた「HANE」にすごく良いオケができて、仮歌を入れたときにめちゃくちゃ良い!ってなって。メンバーも賛同してくれて、そこで変なプライドみたいなものが捨てられて。

細川:今回のアルバムからバンドの役割分担がしっかりできた。誰かに作業が集中して集まるんじゃなくて、バンドとして前に進んでいく、メンバーそれぞれが作り上げていく感じがあったんです。

――アルバムのタイトル「リバイバル」は再演や復活などの意味がありますが、どういった意味が込められているでしょう?

横山:千弘が加入したことやバンド結成5周年を意識したり考えたりすることもなくって。とりあえず、今までKOTORIがやってきたこと。僕が好きなバンドをライブに呼んで、お客さんがそのバンドを初めて観る。そこで知らなかったことを知るわけだけど、そのバンドはずっと動いてきてるじゃないですか。その発見こそが「リバイバル」だなと思って。KOTORIを好きになってくれて、そこから僕が今までに聴いてきた音楽も聴いて、好きになってくれたら、それが「リバイバル」。バンドのバックグラウンドを感じてもらえる作品になればいいなって。

細川千弘(Dr)

細川千弘(Dr)

――このアルバムはエモーショナル「ライジング」から始まり、インスト曲やミディアムテンポの楽曲など、作品の時間の流れもすごく印象に残る作品に仕上がっていますよね。ツアーファイナルのワンマン公演では、どんなステージを見せてくれるのか気になります。

横山:お客さんはあの曲、この曲と期待もあるだろうし、セトリはすごく悩んでいます。曲が増えたからすごく難しくて。

――バンドが順調だからこその悩みでもありますよね。

横山:うん、嬉しいですよね。

細川:普段はセトリを当日に決めることも多いし、アンコールも決めてなかったり。当日舞台袖で決めて「やばい、練習してね〜」ってなったりもして(苦笑)。

横山:3日連続ライブに来てくれているお客さんに、何が聴きたいか聞いたりしてね。

――ますますワンマンライブがどうなるか気になりますね。会場もこれまでで一番大きなキャパの箱ですし。

細川:アルバムが出来たときから、ファイナルの会場でこういう風にやりたいなって考えながら作品を聴いていて。それをようやく実現できるのが楽しみで。

横山:曲作りにおいても、デカイ会場が似合うっていうのを意識しだしたのもあるかもしれない。お客さんと距離が近いほうが熱量が伝えやすいし、最前列の人たちが盛り上がるのは想定内。そうじゃなくて、会場の後ろで腕組んでみている人も惹き込めるっていうのはスケールの大きさだと思う。その大きさは今回のアルバムにあるミドルテンポの曲とかで感じてもらえたらなと。

細川:演出とかも色々と考えていて。

横山:もうバッキバキに感動させようと思います! 持ち曲全部やろうかなってくらいで。

細川:オレ、叩けない曲あるよ(笑)。

横山優也(Vo.Gt)

横山優也(Vo.Gt)

――まだ細川さんが加入して1年経ってませんからね(笑)。さらに、2月からスペースシャワーが主催する『スペースシャワー列伝』への出演も決定しています。

横山:こういうイベントに出演するのは初めてなんです。実は高校生のときに、列伝のライブを観に行ってて。plentyや[Alexandros]、モーモールルギャバンとかが出演して。あのステージに憧れてたんですよね。

――その憧れのステージに、次は自分たちが出演できるのは感慨深いですよね。バンドの自信にも繋がりますし。

横山:そうなんですよ! ちょっと大丈夫かな?と思いますけど(笑)。

細川:オレらでいいの?となったくらいで。コンセプトとか、去年出演していたメンツをみて、そこに自分たちが出るってなると…。

横山:自分たちのこと、出演してきたバンドと同じようには思ってないですから。

――控えめすぎますよ!今度のイベントツアーで、KOTORIに憧れてバンドを始める人が出てくることもあるかもしれないですし。

横山:僕がいま高校生だったら、KOTORIは僕が見ていたplentyや[Alexandros]なのかなって思うと……ぞっとしますね。

細川:それもまた「REVIVAL」ですね。

――お!インタビュ−最後、うまく締まりましたね。

横山:え?そうなの? 最近マジで疑問なんだって! 昔、自分が観ていたバンドの人たちはもっとデカかったんですよ!

細川:あ〜それは確かにめちゃくちゃ思うな。

――それはきっとKOTORIのライブを観ている人も思ってくれるはずですよ。

横山:もっとちゃんとしね〜とな。

細川:(笑)。すげー大人に見えてたもんな。

細川千弘(Dr)

細川千弘(Dr)

――緊張半分、期待半分、という感じですね。

横山:いや、本当は何も考えてないんですよ(笑)。好きなことをやりたいってことしか考えてないんです。

――でも、それがKOTORIの歩みを着実に進めているわけですから。

横山:それがめちゃくちゃ幸せですよね。

細川:すごいんだな〜。

――他人事みたいに言わないでくださいよ(笑)。ファンの皆さんはKOTORIの2020年の活動がどうなるのか気になってるんですから。

横山:それは僕も気になります。今、バンドにもシーンにもかなり良い流れが来ているはずなんで。僕らが大きなところへ勧めたら、僕らみたいなバンドももっと前に出てくるはず。文化とまではいかないけど、音楽への姿勢さえもオレたちが変えていけたら面白いなって思っています!

――期待しています

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取材・文=黒田奈保子 撮影=日吉“JP”純平