初春新派公演『明日の幸福』『神田祭』が2020年1月2日(木)から三越劇場で開幕した。初日前に、出演者の水谷八重子、波乃久里子、喜多村緑郎、河合雪之丞らが鏡開きを行なった。

河合雪之丞、喜多村緑郎(左から)

河合雪之丞、喜多村緑郎(左から)

『神田祭』は、江戸の三大祭りの一つで「天下祭」として知られる神田祭の祭礼の様子を清元の舞踊にした一幕。「天下祭」の由来はその昔、天下統一を果たした徳川家康が戦の前に必ず神田明神で戦勝祈願をしていたことからその名が付けられ、これまで代々歌舞伎でも取り上げられてきた由緒ある演目だ。
 
喜劇『明日の幸福』は、戦後日本のホームドラマの草分け的な作家・中野實の戯曲。昭和29(1954)年11月に明治座「新派公演」で、花柳章太郎、初代水谷八重子、伊志井寛、小堀誠らにより初演されている。

【あらすじ】
昭和30年頃、家庭裁判所の所長松崎寿敏(喜多村緑郎)は、内山夫妻の離婚の調停をしていた。夫・信吾(喜多村一郎)からの離婚の申し立てに、妻・愛子(瀬戸摩純)が異議を申し立てての調停だった。寿敏は夫の側に何かがあると感じていた。
 
寿敏の父・寿一郎(田口守)は政界の大物で、寿敏の息子・寿雄(栗山航)を含め、三世代が大邸宅の一つ屋根の下で暮らしていたが、松崎家の権力は全て寿一郎が握っている状態。寿一郎の妻・淑子(水谷八重子)も、寿敏の妻・恵子(波乃久里子)も、寿雄の新妻・富美子(春本由香)も寿一郎には腫れ物に触るように接していた。
 
その寿一郎に次の組閣で、入閣の話が持ち上がっていることをある政党員が報告にやってくる。寿一郎は、推してくれた党の実力者に大切な家宝の馬の埴輪を送ろうと思い立ち、嫁の恵子に倉まで取りにやらせる。しかし恵子はひょんなことから躓いて埴輪の箱を落としてしまい、慌てて中を開けてみると、馬の足が折れている。それを見て動揺するも、誰にも打ち明けられない。
 
そして一ヶ月が経ち、家庭裁判所の家庭裁判所の調停室では、信吾が「妻とは別れたくない。実は母親が強要しているのだ」と告白。寿敏が感じた通りであったのだ。
 
一方、松崎家では寿敏のところに考古学者が埴輪を見たがっており、これから見せてくれないかと電話がかかってきて埴輪を用意することに。これに恵子は観念し、埴輪のことを打ち明けようと決心したが、その考古学者が怪我をしてこれなくなったとの電話が入る。
 
そして恵子に代わって今度は富美子が埴輪を倉にしまうことになったが、突然帰ってきた寿雄の声に驚き、富美子も箱を落としてしまう。富美子は箱の中を覗き込み、馬の埴輪の足が折れていることに気づき、愕然として...。
 
水谷八重子(中央)

水谷八重子(中央)

水谷八重子は「明けましておめでとうございます。お正月、いろいろなさることがございましょうに、この場に大勢さんお集まりくださって、本当に嬉しいです。この方が全部三越劇場の客席にそのままいらしてくださったら、もっともっと嬉しゅうございます」と感謝の言葉を述べた。
 
そして、「昭和29年に生まれました『明日の幸福』という作品でございますが、全く今でも、なんの変化もなく演じられますのは、政界がまだ変わっていない。政治家の先生方がお芝居の中のおじいちゃまとまるで同じでいらっしゃる。そして、日本人の生活の中からこたつというものが消えていない。この二つのおかげで、いまだに演じることができるお芝居でございます。ぜひぜひ、お隣の方、向こう三軒両隣、ご町内会にご吹聴くださいまして、大勢さん、この三越劇場にお運びくださいますように新年初のお願いを申し上げます」と語った。

波乃久里子(中央)

波乃久里子(中央)

波乃久里子は「皆様、新年早々大勢さんお集まりくださいましたこと、嬉しゅうございます。『明日の幸福』という本当に幸福になれるお芝居。そして『神田祭』という威勢のいいパワーをもらえる踊り。この2本を見ないと損でございます。必ずみなさん、いらしてください。本当に皆様に福を差し上げられますから、お一人欠けることなく、いらしてくださいませ。よろしくお願い申し上げます」と挨拶した。

栗山航

栗山航

新派に初出演となる栗山航は「新年明けましておめでとうございます。今、(客席から大向こうで)『栗山!』と呼ばれてすごく嬉しいです。新年早々舞台に立てることは本当に幸せに思います。『明日の幸福』という作品はお正月にふさわしい、すっきりとした作品でございます。新年の初笑いにぜひいらしてください。よろしくお願いします」と意気込んだ。

春本由香

春本由香

春本由香は「皆様、明けましておめでとうございます。初めて『明日の幸福』というめでたいお芝居に出させていただけて、本当に光栄でございます。去年より、より一層、精進努力してまいりますので、どうぞ皆様、今年もよろしくお願い致します」と話した。

田口守

田口守

田口守は「皆様、明けましておめでとうございます。『明日の幸福』というお芝居。先ほど久里子さんが仰った通り、ご覧になった方、出演している我々は、必ず幸せになれるようにと幸せを見つめて演じているわけですけれども、ワガママいっぱいに生きている当主の寿一郎だけは、明日は一体どうなるのかというところで、お芝居が終わります。ぜひその面白さもあります。ぜひ劇場にお運びください。本日はありがとうございました」。

瀬戸摩純

瀬戸摩純

瀬戸摩純は「私の役は昨年の、山田監督の作品『家族はつらいよ』の成子役に引き続きまして、気の強い、しっかりとした女性でございます。最近皆様に『瀬戸さんっていつからキャラ変したの?』と質問されるのですが、『いえ、どちらもいけるんです』と言いたいところなのですが、そこはですね、これからお客様にご覧いただきまして、判断していただければと思います。劇場でお待ちしております!」とあいさつした。

河合雪之丞

河合雪之丞

河合雪之丞は「いずれも様、新春の喜びを申し上げます。私もこの初春から古典舞踊の『神田祭』をこの三越劇場で踊らせていただける喜びでいっぱいでございます。ぜひ皆様に華やかな気持ちで劇場を後にしていただけるよう、一生懸命踊らせていただきます。どうぞよろしくお願い致します」と淑やかに語った。

喜多村緑郎

喜多村緑郎

喜多村緑郎は「明けましておめでとうございます。この日本橋界隈は神田明神の氏子でございまして、そのお膝元で新年早々こうして『神田祭』が踊れるということは、本当に嬉しく思っております」とあいさつ。
 
そして、「『神田祭』は27年前に、隣にいる雪之丞と舞踊会で踊らせていただいた大変思い出深い作品でもありますし、何よりも、重ねて嬉しいのが、私の本名が神田でございまして、自分のお祭りのような気がして、嬉しくてたまりません。20日まで懸命に神妙に勤めたいと思っております。よろしくお願い申し上げます」とエピソードを披露した。

松竹の西村幸記取締役

松竹の西村幸記取締役

三越日本橋本店長の牧野伸喜氏

三越日本橋本店長の牧野伸喜氏

そのほか、松竹の西村幸記取締役、三越日本橋本店長の牧野伸喜氏も挨拶をした。そして、新潟県佐渡市の北雪酒造の酒樽を「1、2、3、ヨイショ!」の掛け声で割り、水谷八重子の発声のもと、手締めでイベントを締めくくった。

発声をする水谷八重子

発声をする水谷八重子