NHKの人気子ども番組『天才てれびくん』。1993年に放送がスタートした同番組は、出演する子役たちが様々なチャレンジを経て成長する姿を映し出し、ウエンツ瑛士、生田斗真ら人気俳優、タレントを多数輩出している。そんな『天てれ』の世界観を舞台化したのが、『天才てれびくん the STAGE〜てれび戦士REBORN〜』だ。物語の舞台となるのは、「楽しいこと」を奪おうとするテレゾンビ党に、てれび戦士たちが敗北し、「つまらないこと」が蔓延してしまった世界。その後、大人となった彼らは謎のリモコンの力によって、てれび戦士として再起。楽しいテレビを取り戻すため、闘いに挑む。同作で主演を務めるのが、2003年から3年間、番組に出演していた前田公輝。2019年『HiGH&LOW THE WORST』の轟洋介役で話題を集めた前田が、自分の原点へと立ち返る。そんな舞台版『天才てれびくん』について話を訊いた。

前田公輝

前田公輝

――舞台『天才てれびくん』のテーマは、「テレビ」ですよね。今は「おもしろい番組」もテレビだけではなく、ネット配信などいろいろ選択肢があり、「テレビで観る」ということが絶対的ではなくなったことによって、よく「自分はテレビを観ない」ということをステータスのように話す人も増えました。あと、「最近のテレビはつまらない」といった声も。そういう状況は、テレビを仕事の一つにしている前田さんたちにとって少し耳が痛い話ではないですか。

そのことについて争い過ぎていると、多くの物事が娯楽ではなくなってしまう気がするんです。確かに僕らにとってはすごく難しい問題で。しかし、仕事終わりにパッと気軽にテレビをつける感覚にしても、その対象が例えばYouTubeだろうが何だろうが変わりはないと思っています。むしろいろんな選択肢ができて良いじゃないかと。

――確かに「おもしろいものを観る」という部分での選択肢の増加は良いことですよね。

娯楽に対して求めていることは皆さん一緒なはずなんです。昔はテレビの視聴率ってものすごく高かったし、その番組を観ていなかったら翌日の仲間の会話に入れないこともあったり。でも、今は自分自身の趣味嗜好を追求する時代だし、昔の感覚とは違いますよね。僕はそういう流れは案外嫌いではありません。自分の好きなタイミングで、好きなように番組が観られるようになって、「おもしろいものが増えた」という感覚なんです。あと僕自身のことで言えば、自分がやりたいことはお芝居なので、それをやらせてもらえるなら場所は問いません。

前田公輝

前田公輝

――今回の物語の舞台は「つまらないものに支配された世界」。これも、先ほどお話しした「今のテレビはおもしろくない」という現在のテレビのイメージが反映されている気がします。

確かに、そういう捉え方ができますよね。おもしろいものを観る選択肢が増えた中で、「それでもやっぱりテレビは楽しいものなんだよ」ということを、僕らはこの舞台で改めて示さなきゃいけない。一方で、楽しいこととつまらないことを明確にする必要性もあると考えています。自分にとって楽しいか、楽しくないか。それが分かると、生きる楽しさにつながる気がします。

――前田さんは1991年生まれなので、物心をついた頃はまだYouTubeなどが定着していない時期ですよね。やっぱりテレビから絶大な影響を浴びていたのではないですか。

僕は特に『デジタルモンスター』シリーズが大好きでした。日曜日の朝9時から『デジモン』の放映が始まるので、ちょっとでも見逃したくないから、前番組『おジャ魔女どれみ』からしっかり観て、8時55分には万全の体制でテレビ前にスタンバイしていました。あと、『おはスタ』ですね。山ちゃんが大好きで!

――山寺宏一さんですね。

そうなんです、山寺さんは自分にとってヒーロー。今でも、『おはスタ』で山ちゃんが「おーはー」と言っていらっしゃるのを観ると、あの頃の自分に戻ります。実は『天才てれびくん』に出ていたとき、『おはスタ』を意識していました。自分が山ちゃんたちから受けていたような感動を、『天てれ』を観る人たちにも届けたかったんです。

前田公輝

前田公輝

――当時『天才てれびくん』で前田さんを観ていた世代も、今ではすっかり大人になっています。もしかすると、この舞台もその世代がたくさん観に来るかもしれませんよね。

それは本当に感慨深いです。

――しかも主演として一座を引っ張る存在。そういえば映画『HiGH&LOW THE WORST』で前田さんが演じた轟洋介は、リーダーとして人を牽引することについて、どうすれば良いか悩んでいましたよね。

轟洋介と自分は考え方がまったく違うんですけど、それでもあのときは、演じながら「リーダーとは?」について考えていました。これまで何度か作品の主演をやらせていただきましたが、自分自身のことでいっぱいになりすぎて、周りが見えていませんでした。今は、少しは見渡せるようになってきて、「ちょっとは大人になれたかな」って。

――『天才てれびくん』を卒業したあと、映画『ひぐらしのなく頃に』(2008)でも主演を務めていましたね。

当時は17歳ということもあって、本当に周囲のことが見えていない時期でしたね。年齢的にもトガっていたところもあって、「自分はちゃんとできている」と思い込んでいた。「どうして周りはできないんだ」とさえ考えていました。でもそれって、一緒に仕事をしている人たちに対しての押し付けでしかなくて。自分は本当に未熟だったんだなと、振り返ってみて気付くんです。そういった経験もありましたし、何より諸先輩方の振る舞い方もたくさん見てきて、「主演というのはこういう立場なんだ」と勉強させて頂きました。今回、それが生かせる機会を頂けたのはとてもありがたいです。

前田公輝

前田公輝

――今作のキャッチコピー「大人になったきみたちへ」は、前田さんにぴったりということですね。

それこそ『ハイロー』の轟洋介の話に結びつけると、彼は『HiGH&LOW THE WORST』で自分の視野が開けるじゃないですか。あのタイミングと、実際に僕自身の視野が広がったタイミングが一緒で、ちょうど『THE WORST』の公開時期あたりで、視野が一気に開けたんです。なぜなのか分からないのですが、自分を俯瞰で見ることができるようになりました。仕事面でも、私生活面でも「自分はこういう人間なんだ」と分かってきたんです。

――『THE WORST』の公開時期って2019年秋ですから、最近ですよね。新しい自分を見つけ出したこのタイミングで、原点となった作品の舞台版に出るのはおもしろい巡り合わせです。

そうなんです。特に今回は、剣を使ったアクションが自分にとって新たなチャレンジになりますが、同時に現状の課題でもあるんです。剣術は当然、経験値が出るので、残りの時間でどれだけ質の高いものに仕上げられるか。そこにすごく苦労しています。ただ、僕には友だちの早乙女太一がいるんで(笑)。

――おお、それは強い味方ですね!

実は、早乙女太一にも今回の剣のアクションについていろいろ相談に乗ってもらっているんです。プライベートで何度か剣について教えてもらったりしています。だから本番では、僕の剣は早乙女流になっているかもしれません(笑)。彼も劇団朱雀の公演を終えたタイミングなので、初日までにまた会えたらいんですけど、めちゃくちゃ忙しいと思うので、何とか自分でがんばります。舞台をご覧になる方たちは、剣の場面を楽しみにしていてほしいです。

前田公輝

前田公輝

取材・文=田辺ユウキ 撮影=田浦ボン