間もなく幕を開ける『デスノート THE MUSICAL』。シリーズ発行部数が世界累計3000万を超えた大ヒット漫画『DEATH NOTE』を舞台化し、2015年に初演。フランク・ワイルドホーン作曲、栗山民也演出と世界的クリエイター陣による傑作舞台は、誰もが楽しめる一流エンターテイメントに。そして2020年の再々演はキャストを一新。死神が退屈しのぎに地上に落とした「死のノート」(デスノート)を拾う成績優秀な高校生・夜神月(やがみライト)役を、村井良大と甲斐翔真のWキャストで務める。

オーディションでこの役を射止めた甲斐。参加者2416名という超難関を潜り抜けて掴み取っただけに、気合も十分だ。しかも初めてのミュージカル作品。稽古前には「しっかり準備をして挑みたい」と語っていたが、稽古が終盤に差し掛かった今、改めてこう語る。

甲斐翔真

甲斐翔真

「前段階でどれだけ準備しても、結局は稽古場で学ぶことの方が1000倍多いです。実際に立ってみないと分からないことだらけで、経験が物を言うとはこういうことかと。目の前に相手がいて、その人にセリフを発する。なおかつ客席にも伝えるという行為を実際にやらないとダメだよなと感じています。もちろん前段階で準備したことも生きましたが、稽古を重ねる中で勉強したことの方が圧倒的に多いですね。今も吸収の日々です。誰よりも早く稽古場に行って、自主練習したり、ニュースを確認したりしています」。

日々のニュースに目を通すようになったのは、「今回の『デスノート THE MUSICAL』は現代劇として上演する」という栗山の言葉がきっかけだ。

「栗山さんが、「初演、再演では『デスノート THE MUSICAL』は近未来劇だと思っていたけど、この4年間で時代は大きく変わったので、今回は現代劇としてやる」と顔合わせの時におっしゃっていて。悪と正義を問う出来事って世界中で起こっているじゃないですか。それがこの4年でより加速して浮き彫りになっているから、そういうふうに考えられたのではないかと思いますし、僕たちもすごく納得できたので『デスノート』という世界で現代劇をやっています」。

現代劇として挑むにあたり、ニュース等の情報は活字から得るという甲斐。「『デスノート THE MUSICAL』は、現代社会を映し出していくので、そのためには世界で何が起きているかを知っておかないといけない。テレビ等では情報が限られていますが、新聞には事細かく書いてありますし、やっぱり記者さんの文章はわかりやすい。最初は活字を読むのが大変でしたが、今は楽しくなっています」。

●今の人は常にもう一人の自分を飼っている●

甲斐翔真

甲斐翔真

1997年生まれの22歳。生まれた時からネットやスマホは当たり前の世代だ。そんな甲斐から見た『デスノート』の世界は現代社会と共通する部分があるという。「『デスノート』が現代社会とリンクするところがあるなと思うのは、匿名の怖さですね。顔も名前も出さないで物が言えてしまうのって本当に無責任じゃないですか。一人一人が責任を持って物事に取り組むことが少なくなってきた気がします」。

そして今の時代、SNSが日常でもあることから甲斐は「今の人は常にもう一人の自分を飼っている」と分析する。「本質的な人間が匿名で、社会に顔を出している自分は、自分より半歩出た違う存在というような感じです。どこか、人々の感性が何か変わりつつありますよね」。一方、甲斐自身もある人物に「腹の中で小さい怪獣を飼っている」と指摘されたという。

「(共演者の)横田栄司さんに言われました(笑)。お会いしてまだ3回目ぐらいだったのですが、テレビのインタビューで一緒に座っていた時、「甲斐君どうですか?」と質問された際に、「腹の中に小さい怪獣を飼ってます。それが本番で出てきたら楽しいですよ」と(笑)。……確かに僕も、飼っていると思います(笑)」。

最後に、開幕に向けての意気込みを聞いた。「漫画の『DEATH NOTE』とは違うテイストになっています。また、日本や世界であたかも起こっているようなことを描いている点では、ミュージカルではありますが、演劇(ストレートプレイ)としても取り組んでいます。生と死、愛と犠牲、正義と悪などが表裏一体で進んでいる社会を切り取って、栗山さんの演出によってより哲学的に、舞台上で表現していくとても素敵な舞台です。これを機に普段考えないようなことを考えてもらえれば嬉しいので、ぜひ劇場で、生で味わってください」。

『デスノート THE MUSICAL』

『デスノート THE MUSICAL』

取材・文・写真=Iwamoto.K