2019年11月よりミュージカル『刀剣乱舞』の新たな挑戦として全国各地を回ってきた『歌合』。そのロングラン公演の最終地・武蔵野の森総合スポーツプラザ メインアリーナにて2020年1月22日(水)に行われたステージに参戦。新たな発見と大いなる気付き、そして真っ直ぐ楽しい刀剣男士たちとの時間の記憶をレポートしたい。

始まりは厳かに。1振りの刀剣が祀られた岩の祭壇の前に刀剣男士18振りが白い着物(浄衣)を纏って現れ、その中央に鶴丸国永(岡宮来夢)が立つ。よく見れば、他の刀剣男士は淡い赤と青の裾模様が入った2組に分かれているよう。「歌合」とは平安時代に始まった和歌の優劣を競う遊び。そのルールで言うと、判者・左方・右方という構成だ。恭しく歌われる『神遊び』の歌。今剣(大平峻也)が1首目の和歌を詠み上げ、物語の幕が開く。

(C)ミュージカル『刀剣乱舞』製作委員会

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舞台上では左方・右方がひとつずつ和歌を詠むたびに、歌にまつわる刀剣男士たちの“日常スケッチ”が短い芝居として展開する。和歌から物語の筋への解釈は、直接的なモノから発想の転換スイッチをくすぐってくれるモノまで様々。赤澤ムック、浅井さやか、川尻恵太、白川ユキ、畑 雅文、三浦 香の6人の脚本家によるアンソロジーとなっており、登場する刀剣男士もストーリーによって入れ替わっていく趣向だ。

(C)ミュージカル『刀剣乱舞』製作委員会

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石切丸(崎山つばさ)が“音の記憶”から人々の祈りの気持ちへと想いを馳せる『懐かしき音』、刀ミュには珍しくコメディタッチの蜻蛉切(spi)を堪能できる『根兵糖合戦』、暗がりの中ただ1振りで講談を披露し場内を集中と静寂に導いたにっかり青江(荒木宏文)の『にっかり青江 篝火講談〜夏虫の戯れ〜』、明石国行(仲田博喜)らしい“if話”の小品『梅 the Way』、和泉守兼定(有澤樟太郎)・蜂須賀虎徹(高橋健介)・にっかり青江が風呂上がりのひと時に集う“戦士の休息”『美的風靡』(堀川国広(阪本奨悟)のリリカルなアコギも素晴らしい!)、民話のような手触りの“狐につままれた”小狐丸(北園 涼)の回想『小狐幻影抄』と、今作では戦場を離れた刀剣男士の様子が描かれている。そこにあるのはこれまで見ることのなかった彼らの表情や感情、そして私たち審神者が「見てみたかった」姿。これまでと少し違った心の動かされ方を次々に感じられたのも嬉しい体験に。

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『歌合』で披露された歌とダンスは、芝居パートの合間に挟まれていくスタイル。センターステージ、後方の島、そしてアリーナの通路を駆使して展開するショーアップされたライブナンバーはどれもおなじみとあって、コール&レスポンスや“光る棒”のON/OFFのタイミングなど、審神者たちの参加体制もバッチリ。ソロパートやキメのポーズなど刀剣男士一人ひとりが大画面に抜かれるのはライブならではのお楽しみ。ここでもデキる審神者はしっかり対応、素敵表情が映されるたびに一層の歓声と声援が沸いていた。

(C)ミュージカル『刀剣乱舞』製作委員会

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歴史上の人物となる“人間組”からは徳川家康(鷲尾 昇)、松平信康(大野瑞生)、結城秀康(二葉 要)、永見貞愛(二葉 勇)が登場。場内が熱くなっていく一方の良きタイミングで「これがなくちゃ!」の太鼓パートで漢気を“追い熱気”。刀剣男士全員との『獣』で完全燃焼へと突き進む!

(C)ミュージカル『刀剣乱舞』製作委員会

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エピローグ。賑やかだった舞台上は岩の祭壇へと再び場面を変える。そこに現れたのは祭壇から刀剣を奪おうと襲いかかる時間遡行軍! だが、強烈な結界に阻まれ無残に蹴散らされてしまう。さあ、ここからが総仕上げだ。歌合を終え、改めて浄衣姿となった刀剣男士全員による『かみおろし』が始まる。響き渡る誦文の詠唱。そこに自然と観客の詠唱の声が重なり場内に神聖な空気が満ちたその時──新刀剣男士が顕現した……!

(C)ミュージカル『刀剣乱舞』製作委員会

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万葉集や古今和歌集から選んだ和歌を詠み、物語が始まり、そのエンディングに和歌を記した短冊を燃やして篝にくべる。これが刀剣男士による『歌合』。そしてその繰り返しの中で炎は一層強まり、強まった炎はさらに歌に綴られる数多の“言の葉”とそこに込められた人々の“想い”から生きる力や霊力を授かる。その果てに顕現するのが1振りの刀剣男士とは、なんと雅な時間だろう。

(C)ミュージカル『刀剣乱舞』製作委員会

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これまでの『真剣乱舞祭』が刀剣たちのリアルタイムを現代へと引き寄せる場だとしたら、この『歌合』は現代の審神者のリアルタイムを刀剣男士たちの時代へと引き寄せてくれる場。時間をかけ、互いにわかり合ってきたからこその“逆転現象”から導き出されたスペシャルな儀式の時間こそ、ミュージカル『刀剣乱舞』 歌合 乱舞狂乱 2019なのだろう。大事にすべきは“魂”。持ち越しとなったらしい左方・右方の勝敗も含め、まだまだ体験してみたい『歌合』である。

※写真は、長野・福岡・東京公演のものです。
取材・文=横澤 由香