君はもうNYAIを聴いたか。オルタナでローファイなギターポップに、グランジとシューゲイズの隠し味をピリリと効かせ、ファニーな味わいの男女ツイン・ボーカルを中心に、とびきりキャッチーに仕上げた楽曲の魅力が、地元・福岡から全国へじんわりと浸透中の5人組。前作『HAO』がタワーレコード「タワレコメン」に選ばれるなど、俄然注目を集める中でリリースされる新作は、配信&アナログによるシングル「Pomason/tape drug」。バンドの成り立ちから音楽の志向、落語と音楽との深淵なる関係などなど、バンドの首謀者にして全ての作詞作曲&ボーカルを手掛けるtakuchanに、根掘り葉掘り話を聞いてみた。

――とりあえずミュージック・ビデオ最高なんですけども。なんだこの人たちは!って。あれ誰が作ってるんですか。

いちおう自分が作ってます。

――天才ですね。どれもシュールでユーモラスでかっこいい。

いやいや。いまはiPadが、いいのがいっぱい出てるんで。

――もともとそういう人ですか。美術系とか。

いや、やってないです。必要に迫られてです。

――そもそもNYAIって、どんな感じで始まったんだろう。

自分がmixiで募集して、「バンドやりましょう」と言って始めました。7、8年前ですね。けっこう年が行ってて、20代後半とかだったんで、飲み仲間兼バンドメンバーみたいな感じで募集して、最初は本当に遊びです。そしたら、けっこうすぐ集まりました。

――そこでみんな初対面?

そうです。周りにバンドをやる友達もいなかったんで、mixiしかなかったんです。

――もともとやってた人じゃない?

いや、やってないです。

――そうなんだ。どういう人なんですかあなたは。

ずーっとリスナーだったんです。好きな音楽をずーっと聴いてて、ギターはやってたんですけど、バンド経験はないです。だから、集まったあとも、バンドになるまではすごい遠回りしましたね。みんな、本気ではやってないから。

NYAI / takuchan

NYAI / takuchan

――何が好きだったんですか。中高生とかで聴いてたのは。

洋楽をちゃんと聴き出したのは、スマッシング・パンプキンズとか。自分らの学生の時、バンドブームだったんですよね。90年代の終わり頃、GLAYとか、バンドがめちゃくちゃ売れてた時代で、「日本のかっこいいバンドの人たちはどうも洋楽を聴いてるらしい」ということで、洋楽を聴かないといけないと思って、TSUTAYAで借りて、スマパンとか聴いて。「これならわかる」と思ったんで。

――『メロンコリー』とか?

『アドア』とか。

――あー、いいですね。そこからどんどん掘っていった。

日本だとスーパーカーとか、くるりとか、ナンバーガールとか。そういうものをいっぱい聴き出した感じですね。

――でもバンドは組んでない。

組んでないです。ひたすら友達がいなかったんで、ずーっと一人で聴いてました。

――大学のサークルとかにも入らず?

大学は行ってなくて、サークル文化とか知らなくて。たぶんそういう文化があれば、バンドを組むチャンスがあったと思うんですけど、なかったんですよね。そのまま社会人になったから、バンドするタイミングもなくて。

――ずっと同じ勤め先ですか。

いや、けっこう転々と。ちゃんとした社会人ではないです(笑)。食べるためには働いてますけど。

――その中でもずっと音楽欲、バンド欲があった。いつかやりたいと。

それはありました。

――曲作りはいつ頃から?

バンドを始めてからだったかな。その頃にDTMを覚えて、MACを買ったらソフトがついて来るじゃないですか。それを普通に使えるようになってたから、作曲は楽にできますね。最初は人のコピーばかりしていて、なんだかんだオリジナルやりたいなと思ってたんですけど、なかなか言い出すタイミングがなくて。自分が作った曲を人に聴かせるのって、めちゃくちゃ恥ずかしいじゃないですか。半年ぐらいしてから「オリジナルやっていいかな?」って聞いたら「いいよ」って言われて、やりだした感じです。ギターのshowheyちゃんが音楽専門学校に通ってて、録音の勉強をしてたから、早い段階で音源は作れたんですね。とにかく形にしたかった、アルバムを作りたかったので。

――みんなレコーディング経験はある?

というわけでもないです。素人の集まりです。ドラムは経験がある人だったんですけど。

――ドラムいいですよね。かっこいい。女子のドラムって、独特のストイックさがある気がする。ループ感がかっちりしてるとか。

最初に募集する時に、「女性ドラマー希望」って書いてた気がします。なんでかは忘れましたけど、女性ドラマーってインパクトあるかな?と思って。見た目ですね。

――そんなあ(笑)。でも大事ですけどね。

女性ドラマーだから、しっとりした感じをイメージしてたんですけど、女性ドラマーって爆音系が意外と多いんですよね。とにかく音がでかかった。「なめられたくない」みたいな感じで、めちゃくちゃでかい音でやられて、これはうまくいかないなーって感じでした。最初は。

NYAI / takuchan

NYAI / takuchan

――その流れで、メンバー紹介してくださいよ。ドラムのアヤノ・インティライミちゃんはそんな感じで。

激しい感じで。ベースのたにがわさんは、真面目。たにがわさん、後から入ったからですね。ギターのshowheyちゃんは、よくわからない人です。不思議な感じ。ボーカルのABEさんも、不思議な感じ。

――不思議ですよねえ。ずっと歌ってた人なんですか。

ちょこちょこ、やってたみたいです。カラオケ・サークルに入ってたって言ってました。

――やる気あるんだかないんだかわかんないサークルだなあ。でも男女ツイン・ボーカルをやりたかった。

ツイン・ボーカルは最初から決めてました。

――ライブもけっこうやってたんですか。

ライブよりも、音源を作るのが目的でやってましたね。ネットでいろいろ調べてみると、CDを作ってプレスして、流通まで全部自分でできることがわかって、じゃあやってみようと。いま、CD自体がそんなに意味をなさなくなってきてますけど、自分らが始めた頃は、まだCDにも意味があったから。シンプルに、自分たちのCDができると嬉しいじゃないですか。それもありますね。

――それってどういう気持ちなんですか。一丁、これで当ててやるぜみたいな。

それはやっぱりあります。

――おおー。これは絶対売れるはずだと。

いや、売れないのが当たり前だから、売らないといけないと思ったんで。アルバムの制作費を全部自分が出していて、それは自分のやりたいことだし、全部責任取るからということだったんですけど、自分のお金の元を取り返したいという感じで(笑)。めっちゃ必死になってました。どうやってプロモーションしたらいいか?とか、ネットでいろいろ調べて、できる限りのことをやった感じです。

――回収できたんですか。

回収は、できました。最終的に。良かったです。

――周りに似たようなバンドはいなかったんですか。お手本にできるような。

福岡にはいなかったです。みんな、いいアルバムは作るんですよ。福岡にはいっぱいいいバンドがいるし、いいアルバムは作るけど、作ったあとにすぐ次へ行こうとする。アルバム作って満足しちゃう感じだから、それを売っていかなきゃいけないということは、すごく意識しました。それを回収しないと、次のアルバムが作れないので。

――それってもともとの性格や経験もあるでしょうね。純粋ミュージシャン気質というよりも、社会人経験が長いこともあるだろうし。

そうかもしれない。

――そしてファースト・アルバム『OLD AGE SYSTEMATIC』を出したのが2016年でしたっけ。世の中の反響は?

思っていたより、ですね。自分はまず最低を想定して、売れないのが当たり前だと思ってやってたから、思ってたよりは反応あったなという感じです。

――それは曲がいいからですよ。ほんとにキャッチー。

流通する時に、キャッチーじゃなきゃダメだと思って、キャッチーな曲をあえて作ったという感じです。

――作り手になってから、意識してるアーティストやジャンルはあります?

スピッツとか、ちゃんと聴くようになりました。当たり前のように流れてるじゃないですか。でもよく聴いたら、みんないろいろ考えて作ってるんだなあって。曲を聴いただけで、その人の葛藤が見えるというか、頑張ってポップにしたんだろうなとか。勘違いかもしれないけど、見えるような気がして。

――ポップでキャッチー、が一番難しいと思いますよ。

J-POP的な構成とうか、どうしても展開を多めに作らないけない、みたいな傾向があると思うんですけど、そうじゃなくて、というものを最初はすごく意識してました。

NYAI / takuchan

NYAI / takuchan

――まさに、そこがNYAIの最大の魅力だと思うんですよね。だってほとんど、2コードか3コードじゃないですか。それでここまでポップに聴かせるってすげぇなと。

それは、わざとやってます。Bメロをあんまり入れたくないです。

――潔いですよね。そしてセブンスのコードも使わない、みたいな。

福岡には、セブンスで終わったら馬鹿にされる風潮があるかもしれないです。「それはダメやろ」みたいな、めっちゃ失笑されそうな。

――それいいなあ(笑)。めんたいロック!って感じがする。

このバンドを始めた頃に、技巧派のバンドがたくさんいて、若いのにめちゃくちゃうまいみたいなバンドがどんどん増えてきて。でも自分がやりたかったのは、めちゃめちゃシンプルだけど、バンドでやった時にすごくいい曲になるというものがやりたくて。コピーしやすい曲で、「これなら俺でもできる」みたいなやつがいいかなと。

――たとえが古いけれど、ヴェルヴェット・アンダーグラウンドとか、ああいうシンプルなかっこよさに通じる感じもあるなあと。

ああ、まさに。好きですね。ワンコードかツーコードで、なんであんなにかっこいいんだろうって思うんで。自分もワンコードで作ってみたいんですけど、さすがにそれはちょっと趣味すぎるかなって。

――やってくださいよ。絶対かっこいいと思う。でもああいうかっこよさって、現代にはあんまりお目にかかれないかもしれない。特に日本では。

展開を作ったもん勝ち、みたいな。それもすごいと思うんですけどね。King Gnuを最近聴くようになったんですけど、すげぇ!と思った。これは無理だと思いました(笑)。

――そのへんのバンドは、ボカロ文化とかの影響もある気がするんですよね。転調しまくり、メロディ飛びまくり、みたいな。それって影響されてます?

されてないんですよ。どうしても、取っつきづらくて。すごいなとは思ってたんですけど、わざとらしすぎるな、というのがあって。ボカロでしかできない表現もあるじゃないですか。めっちゃ早口だとか。そういうものにめちゃくちゃ興味はあるんですけど、自分がのめり込めるか?と言ったらのめり込めなくて。めちゃくちゃシンプルでミニマルなんだけど、なんかすごく気分が高まるとか、あるじゃないですか。ヴェルヴェット・アンダーグラウンドもそうですけど。そういうものが好きなんですよね。

――それは曲を聴いてるとわかります。ぶれずに続けてますよね。ミニマルで、気分が高まる曲を作るツボを知ってる気がする。

引き算して作ることが多いんですよね。ムダを削っていく感じ。落語とか、けっこう聞いたりするんですけど、いろいろタイプがあって、ムダを削っていく落語があるんですよね。噺をコンパクトにしていく噺家さんがいて、そういうのが好きなんです。桂文楽師匠を、ちょっと意識してるというか。

――おおー。先代の文楽ですよね。僕も好きです。

いろいろ伝説があるんですよね。

――そうそう。同じ噺を何度しても、1分1秒違わないとか。

初めて言葉に詰まって「勉強し直してまいります」って、それが最後の高座になったんですけど、「勉強し直してまいります」というセリフも練習していたという、弟子の証言があるんです。

NYAI / takuchan

NYAI / takuchan

――落語の話しますか。望むところですけども。文楽と志ん生がいた時代とか、すごい憧れますね。

志ん生も好きですね。落語の話、していいんですか?(笑) 志ん生の息子が二人いて、志ん朝と金原亭馬生といるんですけど、馬生師匠の晩年のいくつかの噺には、もろに志ん生が出てるんですね。あれがけっこういいんです。馬生師匠、好きですね。もちろん談志さんも好きですけどね。落語は談志さんから入ってるんで。談志さんは、自分がやりたいことと、大衆から求められていることとのバランスを取らないとダメだって、弟子にすごく言ってた人で、それはポップ・ミュージックに繋がるところなのかな?と。

――かっこいい。まさに。

一時期、談志に異常にハマった時があって。それと音楽と、とらえ方を照らし合わせてやっていた時期があったので。

――ミュージシャンで落語好き、かなり多いんですよね。

今は、昔の名人の高座が聞けるからでしょうね。YouTubeとかで。

――それも音楽と同じですね。落語好きミュージシャン集めて、対談とかしますか。

いや、でもそれは、たぶんケンカが始まると思う(笑)。プロレスマニアと一緒で。

――なるほどなあ。落語についてはまた後日、じっくり語りましょう。噺を、じゃなくて話を戻して、新譜のことを聞きたいんですけど、今度出たシングル「Pomason/tape drug」って、これアナログ盤しか出ないんですか。

そうです。あとは配信と。それはLD&Kのアイディアで。けっこういいのができたと思います。今回のシングルから、ミックスをちゃんとしたプロの人にお願いしたんですよ。それまではギターのshowheyちゃんがやってて、前作の『HAO』は自分がミックスをやって、マスタリングだけ外部にお願いしてたんですけど。初めて人にミックスしてもらったんですけど、こっちの希望をいろいろ聞いてもらえて、すごくいいものができたと思います。

――新しい一歩ですね。

そうなんです。

――みなさんぜひ。配信か、プレイヤーを持ってる人はアナログ盤を。曲は、2曲とも自信作ですか。

けっこう自信作です。「tape drug」は本当によくできたなと思っていて、これでバズればいいなと思ってます。毎回バズる気ではいるんですけど、これはさすがにバズるんじゃないか?って、メンバーの中で話してます。これを作る時に、クリエーション・レーベルの話をしてたんですよね、LD&Kのディレクターさんと。自分は後追いで聴いたので、そのへんの空気感を教えてもらって、ああなるほどなと。

――マイ・ブラッディ・バレンタイン、プライマル・スクリームあたりの。

もともとそのへんは意識してやってたんですけど、ずーっとやり続けてたら、時代が回ってきたみたいな感じかなと思ってます。若い人たちが、そういうものをまた好きになってきてる。昨日もその話をしていて、石田純一がずっとカーディガンを肩にかけ続けていたら、それが一周してまた流行ったという話をしていて。石田純一は、流行ってなくてもずっとやり続けてたわけだから、そんな感じかな?とか言って。

――うーん、わかるようなわからんような(笑)。でもそういうことですよね。時代の風が、NYAIを押してますよ。

スピードが速いですからね。流行に乗ろうと思ってやると、たぶん難しいと思うんで。自分の好きな感じを突き詰めていくのが、たぶん正解なのかな?と思います。

――では、近未来の夢、目標、野望を、最後にどうぞ。

あんまりライブをやってなかったんで、ライブをうまくなりたくて、いろいろ試行錯誤してる感じです。それとやっぱり作るのが好きなんで、もっと徳の高いアルバムを作りたいなという気持ちはありますね。何年も聴いてるアルバムってあるじゃないですか。たとえば、ベックの『シー・チェンジ』とか、ずっと聴いてるやつがあるから、そういうものを作りたいなとずっと思ってます。

――素晴らしい。たとえばそういうアルバムって、ほかにもあります?

くるりの『THE WORLD IS MINE』とか、『アンテナ』もいいですね。曽我部恵一​さんのソロのファーストを異常に聴いてた時期もあるし、ザ・コーラルのファーストとかも、いつ聴いてもいいんですよね。あと、七尾旅人も。スーパーカーもそうですね。『Answer』が一番いいかな。スマパンの『アドア』も、久しぶりにこの前聴いたら、やっぱりずっと聴けるなと思ったし、マイブラの『ラヴレス』も。あと、そうだ、一番はオアシスのファーストかもしれない。あれはずっと聴けます。

――そういう名盤たちに並ぶアルバムを、NYAIもきっと作りますということで、締めにしていいですか。

そうですね(笑)。とにかくいいアルバムを作りたいです。もうアルバム文化ではないのかもしれないけど、いいアルバムを作りたい気持ちはあります。

 

取材・文=宮本英夫 Photo by 菊池貴裕​