1980年、クラシック音楽を愛する一人の主婦 敷島博子(永久名誉楽団代表)が、『聴くものも、演奏するものも満足できる音楽を!』をモットーに、オーケストラ「大阪シンフォニカー」を誕生させてから、今年で40周年を迎える。「大阪シンフォニカー」はその後、「大阪シンフォニカー交響楽団」を経て、「大阪交響楽団」と改名され現在に至る。記念のシーズンを前に、あんなコトやこんなコトを、大阪交響楽団の楽団長・インテンダントの二宮光由に聞いた。

―― 来シーズンよりミュージックアドバイザー外山雄三氏の名誉指揮者就任を発表されました。これで指揮者のポジションとしては、正指揮者に太田弦さんがおられますが、シェフ不在となりました。という事は逆に、来年度中にシェフの発表があるのではとファンは期待しています。

名誉指揮者  外山雄三(2020年4月より) (C)飯島隆

名誉指揮者 外山雄三(2020年4月より) (C)飯島隆

二宮光由 ありがとうございます。外山さんには2016年のシーズンから、4年間ミュージックアドバイザーとして、オーケストラを再度基本から鍛えなおして頂きました。今後は名誉指揮者として、毎年定期演奏会で1度は指揮して頂きます。音楽監督は引き続き、現在も選考中です。今しばらくお待ちください。

―― 来シーズンのラインナップを拝見しましたが、過去のシェフが勢揃いですね。

二宮 残念ながら、児玉宏さんは体調不良で渡航が難しいと、ご自身から連絡を頂きました。それ以外のマエストロには指揮して頂きます。

―― 来シーズン、自主公演としては定期演奏会が8回、名曲コンサートが5回10公演、それに「感動の第九」ですね。いずみホール定期演奏会は無くなるのでしょうか。

二宮 記念の年ですが、経営面では無理することなく手堅く行こうと思っています。今シーズンをこのままの形で終え、来シーズンを見込み通りに進める事が出来れば、その後は軌道に乗って行くはずです。残念ですが、いずみホール定期は一旦無くして、その替わりに堺に新しく出来たフェニーチェ堺で新しいシリーズを計画中です。フェニーチェ堺では他にも、堺シティオペラと野間バレエ団と3団体合同のコンサートも企画中です。

―― フェニーチェ堺を会場にしたシリーズは堺に拠点を置く大阪交響楽団ならではですし、他のオーケストラとの差別化になりますね。特に堺の3団体が一堂に会して公演をやると云うのは、堺の文化水準の高さと、団体間の結束力をアピールする意味でも素敵な事だと思います。では、定期演奏会の聴きどころを順に教えて頂けますか。過去のシェフが久し振りに指揮台に立たれるという意味では、楽団創立40周年を記念する演奏会は、既に1月から始まっているという事ですね。

二宮 はい、そうです。今年の1月定期を指揮して頂いたのは、元常任指揮者の本名徹次さん。2月定期を指揮して頂いたのは、元音楽監督のトーマス・ザンデルリンクさんでした。お二方とも久し振りに指揮して頂きましたが、オーケストラが上手くなったとお褒めの言葉を頂きました(笑)。

来シーズンでは、7月定期に初代音楽監督の小泉ひろしさんがご登場されて、第1回定期演奏会の時のプログラム、ベートーヴェンの「田園」とモーツァルトの「ハフナー」という2曲のシンフォニーと、モーツァルトのモテットを実力派ソプラノ周防彩子さんの歌唱でお聴き頂きます。楽団の方針として、歌手は出来る限り関西で頑張っておられる方にお願いする方向で人選をしています。周防さんは素晴らしいソプラノで、小泉さんも共演を楽しみにされています。

小泉ひろし(初代音楽監督)

小泉ひろし(初代音楽監督)

―― 10月定期は外山雄三さんの名誉指揮者就任演奏会ですね。

二宮 ベートーヴェンの8番とブラームスの1番というこれまたダブルシンフォニーを指揮して頂きます。タイトルは名誉指揮者に変わっても、外山さんにはこれまで通り厳しい指導をお願いしたいです。

11月定期には初代ミュージックアドバイザー・首席指揮者の大山平一郎さんが登場されます。ベートーヴェンの交響曲第1番はコチラからのオファーです。メンデルスゾーンの交響曲第4番「イタリア」は大山さんからの提案ですが、取り上げるのは実に7年ぶり。サイズ的にも、もっとやっていても良い作品だけに私もちょっと意外でした。大山さんご自身の経験を交えた弦楽器の指導は常に的確で、メンバーもご一緒出来る事を心待ちにしています。この回では、モーツァルトのヴァイオリンコンチェルトの4番を堀米ゆず子さんでお届けするのですが、こちらも楽しみです。この公演ではぜひ、弦楽器のサウンドに注目して頂ければと思います。

(c)Tsuru

(c)Tsuru

―― 12月定期は第3代音楽監督の曽我大介さんですね。定期演奏会としてはこの公演がベートーヴェンイヤーの最終回。とても華のある若手奏者が並びましたね。

二宮 はい、ベートーヴェンのトリプルコンチェルトを、新進気鋭のメンバーでお届けします。ピアノが阪田知樹さん、ヴァイオリンが成田達輝さん、チェロが岡本侑也さんということで、このタイミングを外すとこのメンバーが揃うのは難しいのではないでしょうか。フレッシュなソリストを使って、18年ぶりの定期演奏会登場となる曽我大介さんが、どんな音楽をオーケストラから弾き出すのか、メインのフランクの交響曲ニ短調、リストの交響詩「前奏曲」と併せてご期待ください。

曽我大介(第3代音楽監督)

曽我大介(第3代音楽監督)

阪田知樹 (C)HIDEKI NAMAI

阪田知樹 (C)HIDEKI NAMAI

成田達輝 (C)Marco Borggreve

成田達輝 (C)Marco Borggreve

岡本侑也 (C)Shigeto Imura

岡本侑也 (C)Shigeto Imura

―― 2月定期は、今シーズンに正指揮者に就任した太田弦さんの定期演奏会デビューですね。

二宮 ベートーヴェンの「第九」でも、先日のメンデルスゾーンの交響曲第3番「スコットランド」でも、お客様の評判はとても良かったです。メインで取り上げるシベリウスは、昨年度のいずみホ−ル定期演奏会で取り上げた交響曲第2番が素晴らしかったので、今度は1番で!とすんなり決まりました。人気のヴァイオリニスト有希 マヌエラ・ヤンケさんを迎えてお届けするグラズノフのコンチェルトでは、彼女自慢のストラディヴァリウス1736年製「ムンツ」のクリスタルサウンドに酔いしれてください。コダーイのハンガリー民謡「孔雀は飛んだ」による変奏曲は、かねてより太田さんがぜひとも取り上げたいと仰っていた曲。40周年の記念のシーズンを魅力的なプログラムで、しっかりと締め括ってくださると思います。

太田弦(正指揮者) (C)takafumi ueno

太田弦(正指揮者) (C)takafumi ueno

有希 マヌエラ・ヤンケ (C)Shigeto Imura

有希 マヌエラ・ヤンケ (C)Shigeto Imura

―― 歴代のシェフ以外で指揮台に立たれるのは3人ですね。

二宮 40周年記念のシーズン最初の定期を指揮して頂くのは、メンバーとの相性抜群のオーラ・ルードナーさん。ベートーヴェンイヤーの新シーズンを、皆様良くご存じの「運命」で始めようと思います。その代わり、前半は演奏機会の少ないスウェーデンの作曲家ラーションの作品を2曲。サクソフォンコンチェルトは、ソリスト須川展也さんのリクエストに応える形でお届けします。ルードナーさんもスウェーデン出身。良い演奏会になると期待しています。

オーラ・ルードナー

オーラ・ルードナー

6月のジェイソン・ライさんはイギリス生まれで、現在シンガポール交響楽団の副指揮者。日本では新日本フィルを指揮されていますが、関西のオーケストラを指揮するのは初めてです。今からご一緒するのが楽しみな指揮者です。メインではシューマンの交響曲第2番を指揮して頂きますが、前半にはメンデルスゾーンの序曲「ルイ・ブラス」と、ベートーヴェンのピアノ協奏曲第1番を菊地洋子さんで演奏します。実は菊池洋子さんには、名曲コンサートでモーツァルトのピアノ協奏曲を2曲、弾き振りをして頂きます。これは菊池さんが以前から温めておられた構想で、その為に指揮のレッスンも受けておられるようなのですが、ずっと大阪交響楽団と一緒に共演を重ねて来たからこそ、直感的に「これは面白そう!」と閃いたアイデアです。他のオーケストラでは「そんな無茶な!」というような大抜擢も、大阪交響楽団の特徴の一つです。この定期では、ソリストとしてベートーヴェンを弾いて頂きます。

菊池洋子 (C)Yuji Hori

菊池洋子 (C)Yuji Hori

―― そして8月はガブリエル・フェルツですか。3度目の定期演奏会という事ですが、もっと指揮されているイメージがあります。相性の良さを感じますね。

二宮 2017年は「4つの最後の歌」をメインに、R.シュトラウスとシューベルトのプログラム。2019年はブルックナー交響曲第4番「ロマンティック」とモーツァルトの交響曲第39番を指揮して頂きました。お客様の反応も良く、メンバーもとても勉強になったと話していました。ドルトムントの歌劇場で音楽総監督を務め、オペラにも管弦楽作品にも造詣が深いマエストロなので、今回、何を指揮してもらおうか悩んだのですが、メインにはベートーヴェンの「英雄」を、前半にはお得意のR.シュトラウスの管弦楽伴奏付き歌曲をお願いしました。ソリストは以前、「4つの最後の歌」で共演経験の有る関西二期会ソプラノの木澤佐江子さん。木澤さんの事をマエストロは大変評価していて、「彼女なら大丈夫だ!」とソリスト選びは即決。あの時の感動を上回る、素晴らしい演奏をお聴かせ出来るはずです。ご期待ください。

ガブリエル・フェルツ

ガブリエル・フェルツ

―― 大阪交響楽団の「名曲コンサート」というと、ある意味、業界の常識を覆したコンサートでしたね。演奏するのは人気の曲ですが、意外な指揮者やソリストを抜擢し意外な人選で聴かせ、何よりもマチネ・ソワレの1日2回公演には、他オ―ケストラ関係者も注目しましたが、どこも真似できない(笑)。回数も110回を数えるとのことですが、長く続けて来られましたね。

二宮 そうですね。ただ、以前に比べると、少し動員的に落ち着いて来ているかもしれません。どこのオーケストラも名曲コンサート的なモノが増えて来ていて、あまり差別化が図られていないのかもしれませんね。それを踏まえて、来シーズンのラインナップを考えたつもりです。こちらも年内はベートーヴェンの作品を1曲は演奏します。

―― そうですか。大阪交響楽団の名曲コンサートのマチネは、今でもほぼ売り切れているイメージが強いのですが(笑)。しかし、S席5回分で15000円。A席は12500円と、相変わらずリーズナブルですね。

二宮 皆さまにクラシックの名曲を知って頂きたい!という思いで始めた企画ですので、お越し頂きやすい料金設定にこだわってきました。今回の指揮者陣は、オーラ・ルードナー、小林資典、太田弦、川瀬賢太郎、そして菊池洋子の弾き振りと、定期演奏会で指揮している顔ぶれと変わりありません。曲目はどれもご存じのはず。大阪交響楽団だから可能なコストパフォーマンスの良いコンサートをお楽しみください。

川瀬賢太郎 (c)Yoshinori Kurosawa

川瀬賢太郎 (c)Yoshinori Kurosawa

―― 「感動の第九」を指揮するのは、石川星太郎さんですね。

二宮 2016年の「名曲コンサート」でブラームスの交響曲第4番を指揮して頂きましたが、素晴らしかった。歌モノを得意とされていることも有り、「第九」も合うと思います。ソリストは関西の第一線で活躍する歌手の皆さん。「第九」の前には、サン=サーンスのピアノ協奏曲第5番「エジプト風」を安達萌さんの演奏でお聴き頂きます。このボリューム感こそが大阪交響楽団です(笑)。華やかにベートーヴェンイヤーのラストを飾ります!

石川星太郎

石川星太郎

―― 最後に楽団長からのメッセージをお願いします。

二宮 クラシック音楽好きの一人の主婦 敷島博子さんがこのオーケストラを作って40年が経ちました。確かに創立当初は、迸る熱意に演奏技術が追い付かないところは有りましたが(笑)、歴代のシェフによる訓練の賜物で、オーケストラの演奏力は飛躍的に向上しました。特に、外山さんがミュージックアドバイザーに就任して頂いてからの4年間、今時珍しいほどの厳しいリハーサルを通して、技術面だけでなく、お客様に向き合う姿勢も大きく変わったように思います。昔よく聴いたよ!という方も、まだ聴いたことが無い!という方も、ぜひ今一度、大阪交響楽団の演奏を聴きにコンサートホールへお越しください。正直、少しばかり自信を持って皆さまをお誘い申し上げております。聴いてさえ頂ければ、必ず私たち大阪交響楽団のことを気に入ってくださるはず(笑)。皆様のお越しをお待ちしています。

私たち大阪交響楽団の演奏会にぜひお越しください! (C)飯島隆

私たち大阪交響楽団の演奏会にぜひお越しください! (C)飯島隆

―― 大阪交響楽団が関西のクラシック音楽シーンを更に盛り上げて頂くことを期待しています。二宮さん、ありがとうございました。

取材・文=磯島浩彰