新型コロナウイルスの感染拡大の影響により、中止が発表されたミュージカル『ジャージー・ボーイズ』がコンサートver.として2020年7月18日(土)(※)から上演されている。帝国劇場では座席の間隔を前後左右1席ずつ空けて上演されるほか、限定公演回におけるイープラス「Streaming+」でのライブ配信(7/18、19、20、8/1、2、4、5)も決定。今回は、そのライブ配信のための特別案内動画の撮影風景をレポートとともに、演出・藤田俊太郎へのインタビューをお伝えしたい。

※本インタビューは一部公演中止の発表前に実施いたしました。

藤田俊太郎

藤田俊太郎

この日の動画撮影は、朝早くから行われた。予定よりもだいぶ早く劇場入りした藤田は、動画撮影のための台本を声に出して、熱心に練習していた。最初に撮影したのは、ライブ配信のチケット購入方法をお客様に伝える場面。帝国劇場の2階にある喫茶室で、藤田はパソコンを前にして、実際に操作をしながら、丁寧に解説をしていく。

続いて、配信の開演直前に流れるOP動画の場面。喫茶室を出て、帝国劇場の階段を降り、そして光あふれる劇場の中へと入っていく。一応の台本はあるものの、藤田は撮影時、随所で自分の言葉で思いを伝えている。1、2分、沈黙して、考える。特に印象的だったのは、「帝国劇場の再開です」「最後のピースを埋めてくださるのはお客様です」という言葉だ。その重みと、込められた思いを噛み締め、そばで見ていただけなのに、胸が熱くなる。

光り輝く劇場の中へ

光り輝く劇場の中へ

撮影は順調に進み、1時間半程度で終了。『ジャージー・ボーイズ』の公演グッズのTシャツの色を替えてみたり、同公演のフェイスタオルを持ち込んで汗を拭いてみたり、藤田流の“小ネタ”が散りばめられている動画に仕上がっている。1度ならず、何度見ても楽しめるように工夫されているので、配信でしか見ることのできないこのスペシャルコンテンツも楽しみにしていてほしい。

Tシャツが公演回ごとに異なるというこだわりも(笑)

Tシャツが公演回ごとに異なるというこだわりも(笑)

続いて、藤田へのインタビューの様子をお伝えする。
 
ーーきょうの収録の感想はいかがですか。

作品の力になれること、僕にできることに一生懸命取り組ませていただいてます。​
 
ーーTシャツも替えられるなど、気合を感じました(笑)

歴代の『ジャージー・ボーイズ』のTシャツを持ってきました。ちなみに僕の私物です。

動画撮影の様子

動画撮影の様子

ーー『ジャージー・ボーイズ』という作品は藤田さんにとって、とても大切な作品のひとつだと思うのですが、改めて、思いをお聞かせください。

『ジャージー・ボーイズ』というのは改めて考えると、再生/再会/出会いの物語だと思うんです。グループの出会いと別れがあり、そして、ロックンロールの殿堂入りを果たしたときに、「ザ・フォー・シーズンズ」のメンバーが再会する。人生の再生/大切な人との再会を描いた物語です。その再会の瞬間を共有したその日、観劇されたお客様との出会いがある。​
 
今回、本編ではなくて、コンサートver.ではありますけれど、その「再会の物語である」という真髄は何も変わりません。また、一度は休止となった公演の復活、帝国劇場の再開と重なり、たくさんの方の思いが込められた公演になりました。​

……僕にとっての「再会」というのは、このカンパニーと2016年から公演を重ねておりますので、多くのプランナーやスタッフ、出演者、ミュージシャン、カンパニーのみなさんとの再会を嬉しく思うとともに、新しいカンパニーのみなさんとの出会いに感謝しています。一緒に作品をつくっていることを誇らしく思います。

藤田俊太郎

藤田俊太郎

ーー新型コロナウイルスの感染拡大の影響で、藤田さんご自身も公演が中止になったり、延期になったり、大変な思いをされたと思います。一方で、今回の『ジャージー・ボーイズ イン コンサート』のように、演劇を配信という形でお届けするという取り組みも始まりました。そういう現在の状況について、率直にどのように考えていらっしゃるのかを伺いたいです。

『ジャージー・ボーイズ』にしかできない配信コンテンツの形があると思っています。このコンサートver.は2018年に一度上演しています。本編の映像を舞台奥のスクリーンに投射しました。本編の魅力とコンサートでの楽曲のライヴがシンクロするつくりになっています。このシンクロをより深めることで、本編の芝居とコンサートがシンクロする、ライブ配信でしかお届けできない魅力が生まれると思っています。​

いままで『ジャージー・ボーイズ』をご覧になった皆様も、配信という形で新しい体験をしていただけるのではないかなと思います。世界中で上演されている『ジャージー・ボーイズ』の中でコンサートver.というのは日本のカンパニーだけが許諾をいただいているものです。ここに至るまでの東宝演劇部の皆様の尽力もありますけれど、2016年の初演にはじまり、これまで応援してくださった観客の皆様のご支持がこの配信につながっていることを改めて感謝したいです。先程の質問に対して、僕自身も新たな試みに挑戦もしていますが、現在の演劇の一つのかたち、つまり、劇場での観劇が叶わなくなりつつあったときに新しく生まれたコンテンツやメディアを検証、総括するには時間が必要だと思っています。この配信もその新しいコンテンツになることを願っています。

ーー劇場で見るものと、配信されるものはやはり違いますか。

そもそも演劇と、映画や映像というのは全く違うメディアです。それぞれ違った楽しみ方をしていただけるのではないかと思います。配信は、劇場に来ることが叶わないお客様に届けるという要素もとても大事なのですが、一方で、高いクオリティを求めています。
 
「撮影したものを、お送りしました」だけでは、とても『ジャージー・ボーイズ』のファンの皆さんには満足していただけないと思っていますので、お客様に喜んでいただけるような新しい表現のかたちを追求しています。​

配信でしか楽しむことのできない視点、劇場では見ることのできないカメラワーク……。フランキー・ヴァリ&フォー・シーズンズの真実の物語は光と影で構成されているわけですから、劇場が光だとすると、ライブ配信はその影の部分まで色濃く見ることができるのではないかと考えています。劇場でご覧になった方もぜひ、配信も見ていたけたらと思います。カメラワークは全公演違います。1回とて同じ公演は、僕のTシャツのように(笑)、ございません! 全公演見ていただいても、十分に楽しんでいただけるのではないでしょうか。

画面の確認をする藤田俊太郎(中央)。出演していないときはマスクをするなどして感染予防の対策を講じた。

画面の確認をする藤田俊太郎(中央)。出演していないときはマスクをするなどして感染予防の対策を講じた。

……と、心意気としては、思い切ったことを言いましたけれど、いままで『ジャージー・ボーイズ』をご覧いただけなかった、初めて見てくださる方もぜひ、この配信を通じて体験していただけたらと思います。ぜひ軽やかな気持ちで楽しんでいただきたいです。​

『ジャージー・ボーイズ』は、再生と再会、出会いを描いた作品であると繰り返し言ってきました。その再会は、ロックンロールの殿堂入りをするラストシーンに集約されています。今回は帝国劇場という殿堂に、観客の皆さんが押し上げてくださったと思います。今までの2016年、18年、『ジャージー・ボーイズ』を愛する皆さんの支持があったからこそ、今日この日を迎えられています。観客も皆様も大切な誇らしいカンパニーの一員です。どうか、楽しんでご視聴していただけたらと思います。

<追記>
7月18日(土)から21日(水)までの公演は予定していた公演のかたちで、劇場にお客様をお迎えすることが叶いませんでした。この場をお借りしてお詫び申し上げます。7月23日(木祝)からの公演は、万全を期してお客様をお迎え致しますので、是非劇場でも楽しんでいただけたらと思います。