SCANDAL WORLD TOUR 2020"Kiss from the darkness "Livestream
2020.8.21 

今年2020年2月にプライベートレーベル“her”からリリースした第一弾アルバム『Kiss from the darkness』を掲げ、3月から9月に渡って行う予定だったワールドツアー『SCANDAL WORLD TOUR 2020"Kiss from the darkness”』が新型コロナウイルスの影響で中止となってしまったSCANDAL。彼女たちがバンド結成14周年を迎えた記念日8月21日に、無観客配信ライブという形で、予定していたワールドツアーの一夜限りの再現ライブ『SCANDAL WORLD TOUR 2020"Kiss from the darkness "Livestream』を開催。日本国内はもちろん、海外52カ国に向けて生配信を届けた。この公演の模様を現場での生ライブとストリーミング、2つの視点からレポートする。

SCANDAL 撮影=ヤオタケシ

SCANDAL 撮影=ヤオタケシ

開演前、バンドセットの後方、舞台上では細長いいくつもの幕がユラユラと揺れている。それを取り囲むようにクレーンやレールといった大型機材を使ったものから、定点に設置されたものまで、驚くべき数のカメラがスタンバイ。一夜限りのツアー再現、そこにかけるスタッフたちの気合いが伝わってくるような緊張感あふれる場内。そのなかで、目に留まったのが2階席に置かれた巨大スクリーンだった。前回のインタビューで、生配信のライブイベントに出演したとき、送られてくるコメントを通してオーディエンスとのつながりを生で感じて感動したと語っていた4人。この日は、配信ライブだからこそできるスペシャルな映像でファンをワクワクさせながらも、この巨大スクリーンを通してメンバーと世界中の視聴者がリアルタイムでつながり、いつものSCANDALのライブ以上にお互いの存在、心のつながりを強く、愛おしく感じるライブを打ち出してみせた。

SCANDAL/HARUNA 撮影=ヤオタケシ

SCANDAL/HARUNA 撮影=ヤオタケシ

アルバム『Kiss from the darkness』のアートワークを引用したモダンなオープニング映像。その背景が、海底のようなブルー一色に染まると、ライブは「セラミックブルー」で幕開け。場内では舞台後方に次々とリリック映像が映し出されていくだけだったが、視聴映像ではリアルタイムでその文字がメンバーの上に重なるビジュアルエフェクトが加えられ、歌詞が立体映像となって画面から飛び出してくるような仕掛けで、初っ端から視聴者のど肝を抜いていった。いままで観たことがないようなSCANDALにドキドキしていると、「最終兵器、君」ではいきなりカメラがオンステージ。ギターレスで歌うHARUNAにグイグイ迫る。それに気づいたHARUNAはカメラ目線で手でピストルを作り“バンバーン”と視聴者のハートを見事に打ち抜いてみせた。

「瞬間センチメンタル」では「みんなの声聴かせて!」といつもと同じように視聴者を煽ると、コメント欄がシンガロングで埋め尽くされる。「すでにコメントがすごいね」といって、2階席のスクリーンに目線を送り、視聴者から届くコメントをメンバーがリアルタイムで見ていることを伝えたHARUNA。こうして1公演だけでもライブが届けられて嬉しいと話したあと「こういう状況になってしまって、ちょっとしんどいなと思うことも少なくないと思うんですが、この時間だけでも“あー幸せだった”と思えるライブにしたい」と意気込みを伝えた。

SCANDAL/MAMI 撮影=ヤオタケシ

SCANDAL/MAMI 撮影=ヤオタケシ

このMCからの「夜明けの流星群」がたまらなかった。聴き慣れたはずの、HARUNA、MAMI、TOMOMIが織りなすハーモニーや、《同じ空の下 君はひとりじゃない》という歌詞が、この状況下だからこそ胸をギュッと締め付ける。そうして《ねえ、覚えてる?》と優しく語りかける「記念日」では、幕が照明で白とピンクに染まり、ユラユラ揺れながら柔らかな光を場内に作り出すと、4人は出会った頃を懐かしむように穏やかな表情を浮かべた。《『きょうも、愛してる。』》と歌うエンディングがやってくると、ファンも同じ言葉をメンバーにプレゼント。見えないファンとの繋がりをスクリーンを通して感じながら、みんなと夜の街へ抜け出していった「NEON TOWN ESCAPE」は前半最大の見せ場となった。いつもタイトなリズムを刻むRINAのドラムが後ろ目に跳ね、TOMOMIと洒落たグルーヴを刻みだすこの曲は、冒頭から楽器隊がアドリブを奏で、ハッとさせられる。そうして、アウトロではMAMIのギターがフリーダムに炸裂。夜に絡み付くようなブルージーなソロに、アコギを弾きながらHARUNAが艶っぽくフェイクを重ね、大人なSCANDALの魅力で視聴者を誘惑。

そこから「下弦の月」で、ランデブーは月まで続く。幻想的な照明のなか、RINAがコーラスをとるシーンでは、天井、手元とあらゆるアングルからカメラがRINAを大フィーチャー。そして、曲終わりで舞台は暗転。このあと4人はフロントに出てきて椅子に座り、スタンドライトの灯りをつけ、アコースティックセットで「Departure」を披露。アルバムツアーで、ここまで本格的なアコースティックセットでパフォーマンスするのは今回が初だという。コメント欄には「アコースティック、好き」という文字が溢れる。

SCANDAL 撮影=ヤオタケシ

SCANDAL 撮影=ヤオタケシ

演奏が終わると、全員がスクリーンのコメントに釘付けになり、場内が静まり返った。普段のライブにはない光景に「いま、時が止まったね」とMAMIが笑う。「ライブも久々やし、配信ライブもこんなに大きいのは初めてで。アコースティックもここまでしっかりしたのは初めてで」と話しだしたRINAは、「バンドを14年やってきて、まだ新しいことがやれてるのが嬉しい」と笑顔を浮かべる。MAMIがいつもとは違うカメラワークの話題に触れると、TOMOMIは「なんか、テレビみたい」と素朴な感想を伝え、それに頷きながらHARUNAは「最終兵器、君」でカメラが寄ってきたとき「最後は自分から寄ってっちゃったもんね」と打ち明け、RINAは「今日はめっちゃカメラに囲まれてるから、恥ずかしいっ」といって両手で頬を包んだ。

こういうチャーミングなSCANDALを、メンバーの可愛らしい表情を間近に見ながらライブを堪能できるのも配信ならでは。そして、HARUNAが「この1公演でワールドツアーを網羅するから」といって海外の視聴者に向け、英語でカッコよく挨拶をきめた後も、「久々のライブで嬉しくて、一生しゃべれるね」とRINAがいい、なかなかトークが止まらない。それをTOMOMIが「今日はお洗濯日和ですね」と、「ランドリーランドリー」の演奏へ。TOMOMIの甘い歌声、MAMIが鳴らすグロッケンの音色に、コロナでピリついた心が洗い流されていく。カホンを叩いていたHARUNAが美しいウインドチャイムの音色で曲を締めくくったあとは、再びバンドセットにチェンジ。

SCANDAL/TOMOMI 撮影=ヤオタケシ

SCANDAL/TOMOMI 撮影=ヤオタケシ

いまだからこそ大切なメッセージとして届いた「ちいさなほのお」は、UKロックを感じさせるコード感、ギターのフレージングでじわじわとテンションを上げていく。その後、「Fuzzy」でバンドが開放感たっぷりに弾けだすと、コメント欄にはこの曲の《換気扇の下でキスをするたび》という一説が何度も書き込まれていく。そんなロマンチックな光景から、ファンキーチューン「FREEDOM FIGHTERS」で一気にギアを上げだした。「イェーイェー!」とHARUNAがたまらず叫び声をあげる。そうして、フロント3人がお立ち台に登り、MAMIの軽快なカッティングから、聴こえてきたのは「Tonight」だ。ハンドマイクのHARUNAがエフェクトボイスでメロディラップを歌うように早口でこの曲を畳み掛けると、画面上には再びリリックが重なり、グルーヴに合わせてパンパン映像も切り替わる。

このツアーで見せたかった最新のスタイリッシュなSCANDAL全開のアクトに、鼓動が高鳴る。そして、「マスターピース」で世界中に終盤戦突入の合図を飛ばしていったあとは、怒涛のロックチューンで攻めまくる。「A.M.D.K.J.」は“ソンソン”、「テイクミーアウト」は“パッパラー”、「Flashback No.5」は“三半規管”と、視聴者もコメントで一緒になってライブを盛り上げていくと「みんな最高ーっ!」とHARUNAが叫び、ドラム台の前にフロント3人が集合して曲を締めくくる。

これで終わりか、と思わせておいて、次に「SCANDAL BABY」が始まると視聴者は狂喜乱舞。この曲でいつもHARUNAにイチャイチャしにいくMAMIとTOMOMIが、この日はその瞬間だけフェイスガードを着けてHARUNA に接近。そうして、いつもの「SCANDAL BABY」のパフォーマンスをファンにちゃんと届けたあと、「一刻も早く、みんなと会えることを願っています!」とHARUNAが視聴者に語りかけて歌い出したのは「月」だった。本来はロストラブソング、なのに《離れ離れで思い合って、 それぞれの日々を照らしてゆこう》というフレーズにメンバーのいまの心の声が重なり、涙腺を刺激。感動の空気に包まれ、本編が終了した。

SCANDAL/RINA 撮影=ヤオタケシ

SCANDAL/RINA 撮影=ヤオタケシ

アンコール。ステージでHARUNAは「まだ簡単に“すぐ会おうね”、“いつでもライブに来てね”といえる状況じゃないけど」と前置きした上で「それでも、いつでも気持ちはみんなのそばにいるつもりだし。みんなの毎日に寄り添って生きていきたいと思うので、これからもよろしくお願いします」と伝え、何気ない日常の愛おしさをTOMOMIが歌う「Living in the city」と、豪快なギターリフで疾走感たっぷりに駆け抜けるロックチューン「SPICE」を初披露し、メンバーたちは名残惜しそうにステージを後にした。

その直後、映像を通して、結成15周年を迎える来年の記念日、2021年8月21日に大阪城ホールで『SCANDAL 15th ANNIVERSARY LIVE「INVITATION」』を開催することを発表。映像からは、次は絶対にみんなでここで会おう、だから来年の大阪城ホールに思いを寄せながら、それぞれの日々を生きて進んでいこう――そんなメッセージが感じられた。

取材・文=東條祥恵 撮影=ヤオタケシ