おうちをシアトリカルなエンタメ空間に! いま、自宅で鑑賞できる演劇・ミュージカル・ダンス・クラシック音楽の映像作品の中から、演劇関係者が激オシする「My Favorite 舞台映像」の3選をお届けします。(SPICE編集部)

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9月の「TAKARAZUKA SKY STAGE」​お勧め3作品の見どころ紹介​ by 藤本真由

 
【1】『カンパニー−努力(レッスン)、情熱(パッション)、そして仲間たち(カンパニー)−』『BADDY−悪党(ヤツ)は月からやって来る−』('18年月組・東京・千秋楽)​
【2】『白鷺の城』『異人たちのルネサンス−ダ・ヴィンチが描いた記憶−』('18年宙組・東京・千秋楽)​
【3】『BLUE・MOON・BLUE−月明かりの赤い花−』(’00年月組・宝塚)​

 

宝塚歌劇専門チャンネル「TAKARAZUKA SKY STAGE」の8月放送のラインアップより、見逃せない3作品の見どころをご紹介!

【1】『カンパニー−努力(レッスン)、情熱(パッション)、そして仲間たち(カンパニー)−』『BADDY−悪党(ヤツ)は月からやって来る−』('18年月組・東京・千秋楽)

『カンパニー -努力、情熱、そして仲間たち-』('18年月組・東京・千秋楽)  〜原作 伊吹 有喜『カンパニー』(新潮社刊)〜  ©宝塚歌劇団  ©宝塚クリエイティブアーツ

『カンパニー -努力、情熱、そして仲間たち-』('18年月組・東京・千秋楽) 〜原作 伊吹 有喜『カンパニー』(新潮社刊)〜 ©宝塚歌劇団  ©宝塚クリエイティブアーツ

2018年前半の月組の宝塚大劇場・東京宝塚劇場公演は毛色の変わった二本立てとなった。伊吹有喜の小説が原作の『カンパニー』は、最近の宝塚では少ない、現代日本を舞台とした作品。月組トップスター珠城りょうが演じる主人公はサラリーマンで、スーツにリュックという姿で登場する。月組トップ娘役愛希れいか演じるヒロインが、三波春夫の歌声で名高い1964年東京五輪のテーマソング「東京五輪音頭」を歌う場面もあった。

そして、幕間後の『BADDY』はといえば、すべての悪が鎮圧されたピースフルプラネット地球に、月から大悪党バッディ(珠城)が乗り込んできて、万能の女捜査官グッディ(愛希)と対決を繰り広げるという、これまた異色作。このショーを世に送り出した上田久美子は、演出家デビュー作となった『月雲の皇子-衣通姫伝説より-』が高く評価され、続く『翼ある人びと−ブラームスとクララ・シューマン−』で鶴屋南北戯曲賞の最終候補に。大劇場デビューを果たした『星逢一夜』も人気を博して中日劇場で再演され、以降も、『金色の砂漠』『FLYING SAPA−フライング サパ−』など次々と話題作を発表している。

『BADDY』はその上田が初めて手がけたショー作品なのだが、飲酒も喫煙も禁止の地球の秩序を乱すバッディを追い回すうち、グッディの中に怒りや憎しみといった感情が芽生え、その感情は、「♪活性化 活性化 活性化」との絶唱のうちに展開されるラインダンスによってひときわ激しく表現される。宝塚の舞台においてみんなが大好きなお約束であるラインダンスのユニークな活用である。やはりおなじみのトップコンビのデュエットダンスも、バッディとグッディの壮絶な最終決戦という趣向。そして、バッディが運よく?(悪く?) たどり着いてしまった場所とは? フィナーレでお確かめを。その際、手にしたシャンシャン(フィナーレで全員が持つ小道具)の粋な仕掛けにもぜひご注目を!

★放送:9月25日(23:30)

 

【2】『白鷺の城』『異人たちのルネサンス−ダ・ヴィンチが描いた記憶−』('18年宙組・東京・千秋楽)

『白鷺の城』('18年宙組・東京・千秋楽)  ©宝塚歌劇団  ©宝塚クリエイティブアーツ

『白鷺の城』('18年宙組・東京・千秋楽) ©宝塚歌劇団  ©宝塚クリエイティブアーツ

2018年の宝塚では、宙組公演『白鷺の城』(『異人たちのルネサンス−ダ・ヴィンチが描いた記憶−』と二本立てで上演)でもトップコンビが華麗なる“対決”を見せた。<本朝妖綺譚>と謳われたこの作品で、宙組トップスター真風涼帆が演じるのは陰陽師・安倍泰成。トップ娘役星風まどかが扮する妖狐・玉藻前と宿命的に出逢い、千年もの間、転生を繰り返しながら対決を続け、桜咲く「白鷺の城」こと姫路城で最終決着をつけることとなる。泰成は映画『陰陽師』の主人公・安倍晴明の六代目の子孫にあたるが、人形浄瑠璃や歌舞伎の『芦屋道満大内鑑』で取り上げられている“葛の葉伝説”によれば清明の母は狐、ということは泰成にも狐の血が流れていることになる。そして『白鷺の城』の泰成は、吉備真備、栗林義長(にも狐の子孫なる伝承がある)、陰陽師・幸徳井友景へと転生、玉藻前も殷王朝の悪女・妲己を経て再び玉藻前へと転生していく。

『白鷺の城』が上演された2018年は、平昌五輪でフィギュアスケートの羽生結弦選手が『陰陽師』の楽曲を用いたプログラム「SEIMEI」を滑って金メダルを獲得、陰陽師なる不思議な存在に世界的にスポットライトが当たった年でもある。『白鷺の城』は、『ヘイズ・コード』『エドワード8世−王冠を賭けた恋−』といった秀作を放ってきた大野拓史が初めて担当した日本物レヴューなのだが、大野はかつて『花のいそぎ』では超能力者とも言われる小野篁をフィーチャー、魔法使いの末裔同士が繰り広げるスクリューボール・コメディ『ロシアン・ブルー−魔女への鉄槌−』を手がけるなど、マジカルな存在をしばしば描いてきている。そんな大野は今年初めの東京宝塚劇場公演『El Japón(エル ハポン)−イスパニアのサムライ−』でも宙組を担当、慶長遣欧使節団としてスペインに渡り、活躍を見せる仙台藩士蒲田治道役を真風に宛て書きし、『白鷺の城』に続き、その男役としての魅力を引き出していた。

★放送:9月15日(18:30)

 

【3】『BLUE・MOON・BLUE−月明かりの赤い花−』(’00年月組・宝塚)

『BLUE・MOON・BLUE−月明かりの赤い花−』(’00年月組・宝塚)  ©宝塚歌劇団  ©宝塚クリエイティブアーツ

『BLUE・MOON・BLUE−月明かりの赤い花−』(’00年月組・宝塚) ©宝塚歌劇団  ©宝塚クリエイティブアーツ

ショーイリュージョン『BLUE・MOON・BLUE−月明かりの赤い花−』(『LUNA−月の伝言−』と二本立てで上演)で衝撃的な大劇場演出家デビューを果たした齋藤吉正。月組トップスター真琴つばさ演じるゲリラ戦士は、月明かりに照らされた砂漠を彷徨ううち、赤い花の美しさに魅せられてゆき――。妖しく揺れる“赤い花”役に扮するはトップ娘役檀れい。やはり戦士を翻弄する蛇ナーガを演じる紫吹淳が見せる踊りの、これまた妖艶な魅力。ナーガを取り巻く四匹のウサギ役で若手娘役たちがキュートに競演、大空祐飛、霧矢大夢、大和悠河と、後にトップスターとなった若手男役たちもフレッシュな魅力をはじけさせる。戦士姿の真琴が銀橋から登場し、THE ALFEEの高見沢俊彦が提供した主題歌を歌うオープニングから、すべてが流れるような音楽遣いのうちに展開される。そのめくるめく“流れ”こそ、齋藤作品の中毒的な面白さの根幹を成す。もっとも最近手がけた作品である、昨年の月組公演『I AM FROM AUSTRIA−故郷(ふるさと)は甘き調(しら)べ−』はウィーン発のジュークボックス・ミュージカル、日本の観客にとってそもそもはなじみのない曲揃いのこの作品でも、めくるめく“流れ”を作り出し、見事宝塚化した。

宙組トップ娘役花總まりがアイドル・ハナチャンに扮してキュートな魅力を爆発させるシーンであっと言わせた『満天星大夜總会 -THE STAR DUST PARTY-』。月組トップスター霧矢大夢にアニソン「魂のルフラン」を歌わせ、その後ろで夢幻的なラインダンスを展開した『Misty Station−霧の終着駅−』。何故かカタカナの「ラ」一文字だけが舞台上空に掲げられた雪組公演『La Esmeralda(ラ エスメラルダ)』。台湾でも上演されて人気を博した星組公演『Killer Rouge』――。独自世界で観客の心をがっちりつかんできた齋藤吉正、その原点である伝説のデビュー作をお見逃しなく!

★放送:9月7日(11:00)
 

文=藤本真由(舞台評論家)