これまでありそうでなかった親子演劇ユニット、その名も“東京No.1親子”。父・佐藤B作、息子・佐藤銀平により結成され、作・演出に福原充則を迎えて旗揚げしたのが2016年のこと。あれから4年、この困難な時代に負けることなく第2回公演を決行する。『夜鷹と夜警』の作・演出は、前回に引き続き福原が担当。物語の舞台となるのは地方都市の、とある町。恒例の夏祭りは利権まみれになっており、その開催前夜に起こる様々な出来事が描かれていく。出演はB作と銀平のほかに、前回にも出演していた安藤聖、福原作品の常連でもある村上航、東京ヴォードヴィルショーの喜多村千尋が顔を揃える。初日開幕まであと数日、まさに稽古真っ最中だという稽古場とリモートで繋ぎ、佐藤親子にこのユニットのこと、今回の新作舞台についての想いを語ってもらった。

ーーまずは、この“東京No.1親子”というユニットの旗揚げに至るいきさつをお伺いしたいのですが。

銀平:僕が、福原さんが主宰するベッド&メイキングスの芝居(『南の島に雪が降る』2014年)に出させていただいた時、親父が観に来て「面白かった」と言ってくれたので、それを福原さんに伝えたら「銀平ちゃんと親父さんとの二人芝居をやりたい」と仰ってくれたんです。それはぜひお願いしたいと思って、すぐ親父に伝えると「そんなことを言ってくださるなら、福原さんに乗っかろうよ」とすっかり盛り上がったのが、そもそものきっかけでした。どうせやるなら単発の公演でなくて、ユニットにして続けていこうという流れになり。この“東京No.1親子”というやたら強気なユニット名も、福原さんが考えてくれたんです。

B作:本当に拝見したお芝居がすごく面白かったので、この方が書いてくださるなら乗っちゃおうと思ったんですよね。第一回公演の時は、その福原さんの芝居が出来るという喜びだけがあって、別に息子と初共演する喜びなんて全然なかったですけど。

リモート取材の様子 (左から)佐藤B作、佐藤銀平

リモート取材の様子 (左から)佐藤B作、佐藤銀平

銀平:親父は取材になると、こういう嘘をつくんです。それまで、酔っぱらうたびに「銀平と一緒に芝居やりたいな〜」って言ってたくせに。

B作:そんなこと言わないよ。しょうがねえか、こいつと一緒でもって気持ちでしたよ。

銀平:取材の時は、恥ずかしいみたいです(笑)。

B作:いやいや、福原さんの作られたお芝居の迫力と野性味とたくましさに心魅かれましたし、演劇的にも図太く生きていそうな方だと僕はひとめぼれしたんです。その上、うだつの上がらない息子も一緒に使ってくださるのなら、これは渡りに舟だなと思ったわけです。

ーーその第一回公演『あぶくしゃくりのブリガンテ』をやってみての感想はいかがでしたか。

B作:それまで経験したことがないような、新たな演劇を体験させていただきました。なんだかものすごく、楽しかったんです。佐藤B作、この年齢でまたなにか新しいことに挑戦している感覚があって、そんなこと誰も言ってはくれませんでしたけど(笑)、自分の中ではそう思っていましたね。体力的にはキツイこともありましたけど、それがまた新鮮でした。

銀平:僕は今までやった演劇の中で、一番辛かったです。稽古場でマジで泣きましたから。「あ、ちょっと、ちょっと待ってください!」と言いながらも、涙がぶわーっと出てきてしまって。共演者の安藤聖ちゃんが「大丈夫ですか?」って同情していたくらい。ダメ出しも多かったですけど、なにしろ父親と一緒に芝居をやることは初めてで、その父のすごさと自分の不甲斐なさを目の当たりにすることも精神的にキツかったです。だけど作品自体はとても評判が良くて。僕もいろいろな方から「良かったよ」と言っていただけたので、このユニットはぜひ続けたいなと思いました。

ーー今回の第二回公演も、作・演出は福原さんです。新作の内容については、お二人のほうから何か注文、リクエストはされたんですか。

B作:一切、していません。他の出演者も福原さんに決めていただきましたし。

銀平:台本を読んだら前回とまるで違う世界観だったので、最初はすごくビックリしました。

B作:全然、違ったね。ちょっと難しそうな芝居ではあるけど、今の時代をとても良く表しているなという感じがすごくしました。特に新型コロナウイルスとかは出て来ないけれども、いかにも今の日本というか、同じ党が長く続いていい時代なのかどうかわからないような、みんなそれほど嬉しいこともないのに生きてしまっているような。そういう時代に生きている、普通の人々がテーマになっている芝居です。

リモート取材でもお二人の楽しい会話はつきません。

リモート取材でもお二人の楽しい会話はつきません。

銀平:大きなひとつの物語が一本通っているお話ではなくて、いろいろな人々が登場してさまざまなエピソードがいくつも展開していく構成になっているので、観ているお客さんがそこで自分なりのイメージを重ねながら観ていくような作品です。僕は最初に台本を読んだ時は、ちょっと一言で感想を言えないような気持ちになりました。今、稽古で福原さんのダメ出しを聞きながら、このセリフはこういう意味だったんだとか、この場面の狙いはそういうことだったのかと、いろいろなことがわかってきたところです。でも決して難しい話ではないので、僕自身も客席から観たら、俳優がうまく演じられていればきっとすごく面白いと思うんですけど(笑)。まあ、演じるほうはかなり大変な芝居ですね。

ーーなにしろ今回、B作さんが演じられる役柄は2役ですが、銀平さんは6役もありますしね。それぞれの役の設定など、詳細を紹介するとネタバレしそうなので避けますが。

B作:ひとつは親子役で、芯となる大きな物語の中で最初から最後まで、その親子という関係は続いていて。話の途中で僕は女性の役を演じるんですが、銀平はその間も他にいろいろな役をやるわけです。

『夜鷹と夜警』稽古模様 (左から)佐藤銀平、佐藤B作

『夜鷹と夜警』稽古模様 (左から)佐藤銀平、佐藤B作

ーー6役やるのは、かなり大変そうです。

B作:ええ、まだ1役もできあがっていないというのに、それは一番の問題ですよ(笑)。

銀平:でも一つひとつの役について、福原さんにじっくり付き合っていただいて稽古していますから。確かに今はまだできあがっていませんが、本番までにどこまで演じられるか、そこがとても重要なことだと自分でも思っています。

ーー今回は安藤聖さんと、村上航さん、喜多村千尋さんも加わっての五人芝居となりますが。この、お三方に期待していることや各自の魅力を紹介していただけますか。

『夜鷹と夜警』出演者

『夜鷹と夜警』出演者

B作:聖ちゃんは前回公演にも出ていただいた、本当にすごい女優さんです。瞬間的な芝居の反応が見事で、天性の勘が素晴らしくて。今回も、依然として冴えていますよ。村上くんとは僕は初めてご一緒するのですが、とても素敵な俳優さんと出会えたなと思っていて、ぜひ今度ウチの劇団のほうにも出てほしいくらいです。すごく優しくて、繊細な神経をお持ちで、なんにでも器用なんだけど芝居はまったくいやらしくない。いつも心を込めておやりになっている姿が、素晴らしいです。喜多村はウチの劇団の役者で、実はチョイ役でいいから出してくださいと僕のほうからお願いしたんですが、予想以上にたくさん出番があって(笑)。福原さんの優しさなのかな、チョイ役でいいって言っておいたはずなのに。絶対、いい勉強になっていると思いますよ。この芝居が終わった後に、喜多村がどこまで成長しているのか、今から楽しみです。彼女にとっては、本当にいい夏になると思いますね。

ーーでは最後に、お客様へお誘いのメッセージをいただけますか。

B作:このコロナ禍で大変な状況になっている世の中ではありますが、一瞬でもコロナを忘れられるような面白い芝居にしたいと思っています。劇場に来て良かったなと思うようなお芝居に、絶対に仕上げますのでぜひ楽しみに、ザ・スズナリまでいらしてください。もしも万が一、ダメだった場合は私がそのあと飲み屋にお連れしますので……。

銀平:だから、この時代に飲み屋に大勢では行けませんから(笑)。

B作:では、美味しいお寿司を……。

銀平:お寿司屋もダメです!(笑)。そんなものでごまかそうとせず、がんばって芝居してください。ただ今回は客席が通常の半分しか使えないので、もし迷っている方がいらっしゃったら、なるべく早めに決断して予約していただきたいです。まあ、配信でも面白さが伝わる芝居だとは思いますが、演劇はどうしてもナマの魅力がありますから。できれば、ナマで味わっていただきたいなとは思っております。

B作:劇場という同じ空間でお互いが今、生きているということを確認しようではありませんか! 俳優も観ているお客様も、ああ、生きていて良かった、自分にもまだこういう感性があるんだということが改めて確認できる、素晴らしいお芝居になるはずです。ぜひ、ひとりでも多く足を運んでいただけるとありがたいです。それで、もしダメだった時にはお寿司を……。

銀平:だから、それはダメですって(笑)。

最後までボケ続けるB作さんにツッコむ銀平さん。「東京No.1」という名も納得の仲の良い親子でした。

最後までボケ続けるB作さんにツッコむ銀平さん。「東京No.1」という名も納得の仲の良い親子でした。

取材・文=田中里津子