金に物を言わせ事件を解決してしまう型破りな刑事・神戸大助が人気を博した、筒井康隆作・伝説のミリオンセラー『富豪刑事』(新潮文庫刊)。“彼”が現代を舞台にして新たなストーリー&新たなキャラクターとともにより華やかに生まれ変わり、フジテレビ“ノイタミナ”枠ほかにて放送されたのが、2020年7月より始まったTVアニメ『富豪刑事 Balance:UNLIMITED』。この度、アニメのその先を描いた『富豪刑事 Balance:UNLIMITED The STAGE』が、2020年10月2日(金)〜11日(日)品川プリンスホテル クラブeXにて上演される。

今回、物語の主役でもある糸川耀士郎(神戸大助役)と菊池修司(加藤春役)の2名に直撃インタビューした。同じ事務所の劇団に所属している気心の知れたふたりは、壁一つないフラットな状態で稽古に入れた様子。アニメの思い入れのあるシーンや役作りに関しての話、そしてこの舞台のキーパーソンとなる舞台オリジナルキャラクターの話は必見! 舞台の初日を目前に控え、またアニメを見返したくなるかも……。

物語はアニメの続きから。自分と真逆な彼の役作りは難しい

ーー『富豪刑事 Balance:UNLIMITED The STAGE』の概要と演じられるキャラクターについて教えてください。

糸川:アニメのその後の世界を描いています。アドリウムの事件をきっかけにいろんな事件が起きていて、それを僕らが所属する警視庁「現対本部(現代犯罪対策本部準備室)」で解決していくお話です。ミステリーとして脚本もすごく面白いですし、演出・西田(大輔)さんのオシャレな演出もすごくマッチしていて、アニメのような臨場感で楽しめる舞台になっていると思います。僕が演じる神戸大助というキャラクターは掴みどころがなくてクール、何を考えているかわからないような大富豪の刑事。加藤春とは真逆な性格をしていて、一見噛み合わないようなタイプの人間ですが、物語が進むにつれてとても良いバディになっていきました。アニメを引き継いで神戸大助を作っていますが、この舞台ならではの関係性やその変化を見せられたらいいなと思っています。

(左から)菊池修司、糸川耀士郎

(左から)菊池修司、糸川耀士郎

菊池:『富豪刑事 Balance:UNLIMITED』の良いところは、めまぐるしい展開と爽快感。それも稽古を進めるにつれて表現できるようになってきていて、作品の世界にどっぷりハマれるようになっていると思います。僕が演じる加藤春という役は、正義感が強くて曲がったことが嫌いで突っ走ってしまうキャラクター。アニメでは神戸大助が「現対本部」に入ってきて、加藤と価値観は合わないものの、月日を経てお互いにバディとしてどんどん信頼関係を築いてきました。そのうえでの舞台なので、そういう信頼関係や絆というものも舞台上で見えてくるように作っています。

ーーそれぞれのキャラクターへの第一印象や自分と似ていると思うところは。

菊池:加藤の声をアニメで担当したのは宮野真守さんです。宮野さんはすごく声がきれいで、通ったお芝居をされていて、役もそういう突き抜けるような人物なんだなと思ったのが、一番最初に加藤春に抱いた印象でした。僕が演じるうえでも他のキャラクターとは頭一つ抜いて「前進力の強いキャラクター」ということを表現したいなとは思いました。頭より体が先に出ちゃうという部分は僕自身とも少し似ていますね。

糸川:僕は素の自分と神戸大助は真逆なキャラクターだと思いました。冷静なところとか、つかみどころがなく、でもちょっと抜けていたり、いじられキャラなところもある。そういう部分は、普段の立ち振る舞いからして僕とは真逆です。自分とかけ離れている彼の役作りは難しそうですが、その分演じるのはすごく楽しそうだなと。僕自身も年齢を経ていろんな舞台を経験して、神戸のような「存在感で魅せる」キャラクター、「立っているだけで絵になる」キャラクターを演じることで、ひとつ役者としても得るものがあるなと思いました。

ーー糸川さんと菊池さんは初共演でしょうか? バディとなる人物の配役を聞いてどう思いましたか?

菊池:同じ劇団に所属しているので、その劇団内の公演では何度も一緒に出ていますが、劇団外の舞台では初めてですね。

菊池修司

菊池修司

糸川:純粋に、修司は仲が良いので安心感がありました。修司とふたりでこんな素敵な作品でバディが組めてすごく楽しみですし、自分たちの劇団のメンバーとして、チャレンジな作品でもあるなと思いました。

菊池:少しの不安もなかったですし、逆に驚きのようなものもなかったくらい耀士郎くんが好きですし、信頼しています。耀士郎くんとペアでやるっていうのはすごくありがたくもあり、すんなり入れました。稽古場に入ってからも、すでにお互いを知っている仲なので最初から壁のようなものもない状態で始められています。

ハンバーグは好きだから、食べてあげてもいいよ!

ーーアニメについて伺います。面白かったお話やシーンなどがあれば教えてください。

糸川:僕はついこの前一緒に修司と見たんですが、第10話がとても印象深いです。加藤は過去の事件をきっかけに人を撃つことができないという、刑事として大事なところに闇を抱えているんですが、大助の一言で克服できるようになります。いつもとは違って熱くなっている大助もすごく良かったですし、ここまで積み上げてきたものが全てここに表れているなと思いました。大助の人間らしさ、温かさ、人としての部分が垣間見えたのがすごく素敵で、印象に残っています。

糸川耀士郎

糸川耀士郎

菊池:この舞台はアニメの続きなので、アニメでのお話も劇中に組み込まれています。そういうちょっとした一言や行動のアニメとのリンクにも気付いていただけると、より一層楽しめるのではと思います。

ーー大助が加藤の家に行くお話(4話)はふたりの仕事とは違う一面が見れて面白かったですよね。

菊池:いいですね〜! あれ僕も好きでした! 

糸川:僕も好き。

菊池:そこの関係性があるから、劇中のセリフの掛け合いとかでこういうシーンになるんだって思える……。僕らはアニメの一場面がお客さんの脳裏に浮かべられるようなお芝居をして、彼らの背景部分も上手く見せられたらいいなと思います。

ーー同じ第4話で、加藤が大助にご飯を作ってあげるとかもありましたね。菊池さんが糸川さんに作ってあげたいご飯は何ですか?

菊池:最近、僕、肉野菜炒めにハマっていて。めちゃくちゃ旨いんですよ!

菊池修司

菊池修司

糸川:うん、でもそれくらいは基本的に誰でも上手く作れるよね。

菊池:いやいや〜、僕のはちょっと違うんです! スーパーのお肉じゃなくて、お肉屋さんのお肉を使います。お値段もそんなに変わらないですし、そんなおいしいお肉料理を食べさせてあげたいですね。自粛期間で自炊することも増えていたので、料理の発見も多かったです。

糸川:ありがとう(笑)。僕は……。

菊池:いやいや、耀士郎くんの料理は遠慮します。噂によるとあまりよろしくないって聞くし(笑)。

糸川:なんでよ! 僕はマジで作ってるよ!? うーん、以前はお米も炊けなかったくらいめちゃくちゃ料理が下手だったんですが、この自粛期間で料理をするようになりました。昨日もご飯作って家で食べてるからね! 昨日はハンバーグでした〜。おいしかったよ! ちゃんとお肉をこねて、中にスライスチーズを入れて丸めて焼いて……食べるときに真ん中から割ったらチーズイン♪ めちゃくちゃレベル上がりました。お店で食べるハンバーグを追求したくて、頑張ってます。修司に食べてほしい。

菊池:ハンバーグは好きだから、食べてあげても良いよ(笑)!

「お金ってなぜ必要なの?」舞台の見どころは――

ーー舞台オリジナルキャラクターについて、ネタバレにならない程度に聞かせてください。

糸川:加藤と大助のバディと対になる人物が出てきます。

糸川耀士郎

糸川耀士郎

菊池:アニメと舞台の「加藤春」という人物を形成するのに大きな影響を及ぼした人ですね。すごく魅力の詰まっている役だと思います。

糸川:大助は富豪でお金やテクノロジーを駆使して事件を解決していきましたが、今回の舞台では大助の他にも富豪がいます。「お金ってなぜ必要なの?」、「大助にとってお金ってなんなの?」、「富豪ってなに?」、「お金ってなに?」というテーマを突き付けてくるキャラクターです。この物語の根底のようなものを提示するすごく大切な役だと思います。

菊池:個人的に思うのが、オリジナルキャラクターも含めてこの作品に悪者っていなくて、いろんな価値観やいろんな正義がぶつかり合う話なのかなとも思っています。それぞれの人生がぶつかり合った結果の事件なのかなと。

ーー稽古は順調ですか?

菊池:怖いくらい順調です(笑)。僕も耀士郎くんも品川プリンスホテル クラブeXの円形舞台を経験したことがあるので劇場に関しての不安はないですし、演出の西田さんも円形を最大限に使っていますし、周りも対応できるスタッフ・キャストが揃っています。順当だからこそ、ひとつふたつもっと上のクオリティのものを作れたらいいなと思います。

(左から)菊池修司、糸川耀士郎

(左から)菊池修司、糸川耀士郎

糸川:西田さんの演出が会場の円形を最大限に利用した演出になっていて、演じる側としても次はどんなシーンになるんだろう? ってワクワクするんです。舞台の「正面」という概念を壊して、どこの席に座っていても楽しめるように、味のある絵にしようっておっしゃっているので、今まで経験したことのないような独特な立ち位置や舞台の使い方をしてるので、演じる側もすごくワクワクします。自粛期間でしばらく舞台がなかったので、お客さんも久々の舞台観劇になる人も多いと思います。舞台ってやっぱりこういう部分が楽しいよねって感じてもらえたら嬉しいです。

ーー今作品は最新のテクノロジーも見どころのひとつですよね。

糸川:そこが西田さんの演出の真骨頂です。独創性や、独特な演出の仕方が、AI執事のヒュスクや大助のガジェットの部分にすごく良い化学反応が起きている。西田さん演出の、舞台ならではの表現や面白さも期待していてほしいです。

ーーファンの皆様にメッセージをお願いします。

菊池:僕個人としても半年ぶりくらいの舞台になります。この半年間悶々とした日々を過ごしながら、舞台って僕にとってもお客様にとっても大事なものだったということを痛感しました。そういった想いをこの作品に込めていきたいなと思います。素敵なスタッフ、素敵なキャストが揃っているので、『富豪刑事 Balance:UNLIMITED』が好きな人はすごく楽しめる作品になっていますし、一度見たら二度、三度と見たくなるような作品になっています。ぜひ楽しみな気持ちを胸に劇場に来てくださると嬉しいです。

糸川:『富豪刑事 Balance:UNLIMITED』のスタイリッシュなところや、かっこよくて華やかでおしゃれな部分を舞台でも存分に表現できていると思います。お客様にもこれが2.5次元舞台の醍醐味だなって思ってもらえるように僕らも必死に稽古して、良いものを届けたいなと思っています。ぜひ劇場に足を運んでいただけたらと思っております。

(左から)菊池修司、糸川耀士郎

(左から)菊池修司、糸川耀士郎

取材・文=松本裕美 撮影=寺坂ジョニー