大作ミュージカルに次々出演、次世代を担うミュージカル俳優としてメキメキと頭角を現している東啓介が、2020年11月28日に初のソロコンサートを開催する。それは、25歳の今だからこそできる果敢な挑戦、進むべき未来へと思いをつなぐ“新しい自分”への第一歩。「歌いたい」という思いに満ち満ちたスペシャルな時間が幕を開ける! コンサートに向けた意気込みを東に聞いた。


──ソロコンサート、楽しみですね!

「いつかできたら…」とは思っていたけれど、こんなに早く実現できるとは。 今、本当に嬉しいです! 当初は夏に開催できればと企画していたんですが、新型コロナの影響もあって11月の開催となりました。でも延期になった分、セットリストを見直したり、なにに向けてこのミュージカルコンサートをやるのか、と考えたとき、新しい東啓介、そして過去・現在・未来っていうテーマが見えてきました。それに沿って選曲しようという明確なラインができたので、延期になったからこそ見えてきたものがあったなと思っています。自分がこれまでやってきたことと今、そしてこれからをテーマに、「この曲を聴いたらこの役で見たいよね!」とみなさまに可能性を感じていただけるようなコンサートにしたいなって。

──では、この機会に改めてご自身の過去・現在・未来にも思いを馳せて?

考えましたね。『スカーレット・ピンパーネル』をやってから今年の『ホイッスル・ダウン・ザ・ウインド』、そして『ジャージー・ボーイズ イン・コンサート』を終えるまでを振り返っても、まるで昨日『スカピン』をやっていたような気持ちになるくらい、すごいスピードだったな…って。

──『スカピン』は2017年。“ピンパーネル団”の一員として出演、初めての本格的なミュージカルへの挑戦でした。

それまで2.5次元の舞台をずっとやらせてもらっていたところからの転換期。自分が行く道をひとつ切り替え、新たなチャレンジをしていくことを決めてからの日々──2019年の『ダンス・オブ・ヴァンパイア』では「こんなにも早く帝劇に立つことができた」と自分でも驚きでしたし、今日までずっと大きな作品に続けて立たせていただけているっていうのは…なんか…信じられないです。​


──デビューの頃から歌は好きで磨いていきたいとおっしゃっていました。

はい。高校生の時に初めて『レ・ミゼラブル』を観て、「うわ〜、すげえ!」って感動して。でもそこまで自分は歌が上手くないし、なんとなく目標にはしてたけれどそんなにすぐにはたどり着けるところではないので…この世界に入り、まずはできることをひとつずつやっていたという感じでした。僕、割と堅実派なんで(笑)。​

──では、そこからグッとギアが入ったきっかけというと?

「できない悔しさ」ですかね。最初のチャンスでもあった『スカピン』に出させていただいた時に…そのときはまだちょい尖ってたんで(笑)、舞台にいても袖で見てても悔しさを感じるんですよ。「短くてもソロ欲しいな」とかね。多分ピンパーネル団のみんなもそれぞれにそういう気持ちは絶対あったと思うんですけど…そこでひとつ目覚めたというか、より歌を練習するようになりました。あの苦い経験がなかったら、まだこんなに熱心に歌を勉強していなかったのかもしれないと思うこともあります。熱心、というか、「歌を突き詰めてもっと上手くなろう」って真剣に取り組んで、レッスン、レッスン、レッスン。​


──『スカピン』で演出をされていた石丸さち子さんとはその後も『マタ・ハリ』『5DAYS 辺境のロミオとジュリエット』『Color of Life』とタッグが続きました。この出会いも…

大きかったですね。自分が今までなんとなく「カタチ」でやり過ごしてきたことも多くあった中、石丸さんはそうじゃないところを目指して見放さず、とても丁寧に指導し続けてくださって…稽古場でなにをおっしゃっていただいたかは、もういっぱいありすぎて覚えきれないくらい(笑)。でも自分の中で今でも印象に残っているのは『マタ・ハリ』のとき。「あんなに最初の歌稽古で楽しそうにしてたのにどうしちゃったの?」って言われたのはめちゃめちゃ驚きました。ああ、石丸さんにはそう見えてたのかって。出演が決まって、「こんなにたくさん楽曲ももらえて、これ全部自分で歌えるんだ、楽しい楽しい!」ってやってる歌稽古が稽古場に移ったら突然…。緊張もありましたし、もう「なにしていいかわからない!」って思いで喉が開かなくて歌えなくなってしまって。それでさらに萎縮して、一方でガツガツし過ぎて空回っちゃってたのは自分でもわかりました。で、「あの時の東くんどこ行ったの? 捨てて来ないで!」と(笑)。

──それもまた貴重な経験ですね。

そうですね。石丸さんの現場は毎回「七転八倒ってほんと、こういうことなんだろうな」って思いながら対峙してます。でも、そのたび「絶対倒れねぇぞ!」って思う。バットは常に大振りでいきます。(笑)。基本はスパルタ、愛の鞭(笑)。でもそうやって見守り指導してくださる方がいなければ、自分は今ここまで来れなかったですし、一人で考え込んで達成できるモノでもないですから。​

──劇場が閉ざされていた自粛期間中にはオリジナルの楽曲「こえ」を発表されました。心のこもったふくよかな歌声が胸に沁みる、素敵な曲でした。

わー、ありがとうございます! 嬉しいです! いやぁ…もう本当に初めて作った詞、初めて作った曲なんですけど自分ではそんなに上手くできなかったというか、自信がなかったんですよ。盛り上がるような曲調でもないし、つらつらと思いを綴った曲なので。​


──歌詞も日記のようなリアルな気持ちが描かれていて。

そうなんです。自粛中はなんにもやる気が起きなくて、ただ家にいてボーッと過ごす時間が続いて「あー、こんなんだったらホントに病んじゃう」って思ってました(笑)。同時に「復帰できるのかな」っていう不安と怖さもありました。このスイッチの切れた自分にスイッチを入れ直すことができるのか──と。ただやっぱり「歌いたいな」っていう思いはすごくあって、でも今叶わないなっていうのも現実で。でもね、なぜか歌になると自然に気持ちが動くんです。声を出しながら「こうやって歌ってみたいな」とかって。目の前にピアノがあって、今までの自分の経験の中でできるのかって思いながら取り掛かって…あの時間はとても有意義でした。​

──内から出るものを形にしていくのは、デトックス効果もありますし。

それはもうめっちゃ思いました! 今を発散するというか、歌詞とかもどんどん出てくるんですよ。「なにもできない自分」とか「止まっている時間」とか。そんなネガティブな思考を文字で見て「自分って弱っちいな」って思いましたけどね。でもやっぱり今の時代は舞台に限らず配信や映像、いろんなところで自分を表現していけるアグレッシブさは絶対に必要だな、とも感じています。もっともっとたくさんの方に、こちらから会いに行かなくちゃって。​


──先ほども堅実派という言葉が出ましたが、確かにこれまでの東さんは「寡黙で穏やかでコツコツと歩む人」という静かな人のイメージがありました。

はい、そうでした。

──でもお話を聞いているとまさに「NEW ME」。今は有言実行の“攻め”のオーラが感じられます。

なんか…前までの自分はこの芸能界という世界にめちゃくちゃビビってて、「ひとつミスしたら終わる」って思ってたんですよね。自分からなにか「やります」って言ってできなかったときの責任が、自分でまだ取れなかったんです。でも今は違って、少しは自分に自信がついたのかもしれないですし、ミュージカルを頑張ろうという目標が定まり強く目指し始めたからなのかもしれないし…あとは、愛に気づきました。「ミスしたら終わる」なんていう、そんな冷徹な人はいないっていうのを知りました。昔はスタッフさんとかともあんまり喋れなかったんですけど、今は自分から率先して話しかけることができますし、ホントにねぇ、あの頃の俺はよくなかったなぁ〜って思いますよ(笑)。どこかで自分はひとつのコマなんだっていう意識があったんですね。でも「違う。人なんだ」って気付けた。うーん、なんで気付けたんだろう…でもやっぱり人との出会いとかふれあいとかですかね。ホントに周りが支えてくれてるんだってわかることができた。ま、自分に対しては甘いし厳しいし、呑気なんで「ま、いっか」って思う時も多いし、「いかんいかん、やらなくちゃ」って思う時もあるし。相変わらず波は結構激しいですね(笑)。​

──今は石丸さん演出のもと、明治座の『恋、燃ゆる。〜秋元松代作「おさんの恋」より〜』という時代劇のストレートプレイに挑んでいますね。東さんが演じるのは、西村まさ彦さん演じる永心の異母弟・政之助。

ホント、初舞台のような気分です。所作や、着物の着方、動き方、喋り方。なににおいても初めましてで、役に出会うまでの準備もたくさんありました。時代劇、難しいですね。政之助は複雑な役で…異母弟ならではのひねくれ方だとか、「実社会でもこういう人っているよね」っていうような、人間味のある存在。上にのし上がるために周りを蹴落とすというようなことをさらっとやってのける頭のキレる男なので、彼の生き方、人間力を見せられたらと思ってやっています。​


──そして『A NEW ME』へ。セットリストの過去パートでは『ダンス・オブ・ヴァンパイア』の「サラへ」、現在パートでは『マタ・ハリ』の「普通の人生」、未来に演じたい作品のひとつとしては『DEAR EVAN HANSEN』の「For Forever」のほか、これまで出演されたミュージカル作品のナンバーの数々が準備されていると聞いています。曲選びは楽しかったのでは?

楽しかったし、難しかったです。歌いたい曲があるからこそ、あれこれ悩みましたね。ミュージカルでいいなって思う曲って、だいたい歌い上げちゃうタイプの曲だし、あとはデュエットだったり曲自体が短かったり。コンサートというスタイルで歌える曲を揃えるのは意外と難しかったですが、周囲の協力もあって自分にとって大切な曲、大好きな曲、そして今後僕が挑戦してみたい作品の楽曲が幅広く揃いました。最近グランドミュージカルに続けて出演させていただいたことで、そこで僕のことを知ってくださった方もたくさんいらっしゃると思いますし、公演の中止や配信が主になることも多い中、こうしてホールで生でミュージカルナンバーを聴いていただけるこの機会に、ぜひ僕の歌声の温度、歌から伝えられるモノを全部伝えたいと思っています。「ミュージカルは好きだけど東くんのことは知らないし…」という方も、今後の僕に期待していただきつつ(笑)、もうただただ名曲を聴きにきてもらえたら。​

──まずは「歌」を届けたい、と。

はい! たくさん届けていきたいと思います。このコンサートは自分にとって「今、自分、ココです」っていう宣言ができる場所。お客様にも、ミュージカル界にも…ここで歌うことでなにかが届いていけば嬉しいし、その先になにかが実現したら素敵ですよね。とにかく今この時期にステージで歌えること自体が、僕にとって大きな喜び。そして今現在自分がやりたい曲を歌ってみなさんがどう感じてくださるのかなと思いますし、今回歌う曲がまた年を経た時にどう変わって聴こえるのかっていうのも期待していただきたいなって思っています。『A NEW ME』、是非楽しみにしていてください。​


取材・文=横澤由香  写真撮影=ジョニー寺坂