『大阪文化芸術フェス presents OSAKA GENKi PARK』2020.10.11(SUN)Chillin’ Vibes STAGE

『OSAKA GENKi PARK』2日目は前日よりも気候が良く、秋晴れの過ごしやすいお天気に。木々に囲まれたChillin’ Vibes STAGEも一層過ごしやすくなり、会場周辺には前日にはなかったエアーソファやカラフルなタープが会場を彩り、「Chill」にぴったりな空間に。5つあるステージの中でもスタート時間が最も遅いこともあって、ライブを待ちつつ芝生の上でのんびりとした時間を過ごす観客も多い。

●植田真梨恵

植田真梨恵

植田真梨恵

トップバッターの植田真梨恵はサウンドチェックでゴダイゴにJUDY AND MARY、プリンセス プリンセス、さらにはアニメ『おジャ魔女ドレミ』主題歌など世代を超えた楽曲をカバーし、観客を和ませる。本編では1曲目「heartbreaker」から、伸びやかで力強い歌声で瞬時に観客の視線をひきつけていく。シリアスなサウンドに乗せる高音域の歌声も血がしっかりと通ったのを感じ、耳にすんなりと馴染んでいく。時折足を舞台に踏み鳴らして楽曲に動きを出し、キーボードと2人でのステージとは思えないほど大きな存在感を打ち出していく。

植田真梨恵

植田真梨恵

次曲「Stranger」、漏れる吐息にもしっかりと色を感じる歌声を聴かせたかと思えば、「せーーの!!」と声をかけてギターをかき鳴らすと、途端に歌声はエネルギッシュになる。声の表情の豊かさに夢中になって聴き入っていると、「FRIDAY」でさらにアグレッシブさを増していく。華奢な姿からは想像できない変幻自在な歌声に驚く人も多く、会場に入った途端に足をとめて魅入る人の姿も。MCになると、またまた驚きが。「楽しい思い出が作れなかった夏なので、キラキラとした思い出を作りたい」と、久しぶりの観客の前でのライブに意気込みを語るも、その声はものすっごくキュートで、カラコロとした表情もまた魅力的だ。

植田真梨恵

植田真梨恵

ステージ後半は「ザクロの実」から。愛しくも切ない詞世界を、物語を読み描くように歌い、広い野外会場に色をつけていく。続く「勿忘にくちづけ」、爪弾くように音色を鳴らすキーボードに柔らかく優しい歌声が乗っかる。フレンチでも濃厚なキスでもない、心の底から充実する口づけを思わせるような詞世界に心癒される。「大切なものがずっと残っていきますようにと思って歌います」と、「FAR」へ。ギターの音色少ないなか、シリアスに歌い出す姿に思わずゾクリとさせられる。

植田真梨恵

植田真梨恵

「ひたすら音楽でアプローチするのを続けていきます」と、コロナ禍で自由に音楽を鳴らせない中でも自身の世界観をしっかりと打ち出していきたいと決意を語り、ラスト「変革の気、蜂蜜の夕陽」まで、心地よい歌声をめいっぱい響かせ観客を魅了した。

●GLIM SPANKY

GLIM SPANKY

GLIM SPANKY

早くから入場規制がかかるほどの盛況ぶりを見せたのがGLIM SPANKYだ。サウンドチェックでは暑い日差しに亀本寛貴(Gt)が思わず「夏フェスですね〜」と空を眩しそうに見上げる。「Singin’ Now」で始まったステージ、松尾レミ(Vo.Gt)のハスキーで唯一無二の歌声はもちろん、力強く刻むアコースティックギターの音色の主張が初っ端からたまらなくかっこいい!この日の2人は深紅のベルベッドやカーキのシャツと、いつもよりフォーキーな出で立ちでChillin’ Vibes STAGEにぴったりとはまっている。次曲「怒りをくれよ」はライブハウスで聴きなじんだ、いつもなら強い熱情を煽る楽曲だが、この日は会場に吹く心地よい風や広い野外の会場もあってか、松尾の歌声がぐっと遠くまで響き渡り、爽快感さえ感じさせてくれる。いつもとは違う、開放感ある環境でのライブ。その気持ち良さはメンバー自身もひしと感じているらしく、デュオでのライブながらバンド編成と変わらないテンションで演奏してしまったと、笑みをこぼす。

GLIM SPANKY

GLIM SPANKY

先日リリースしたばかりの新曲「東京は燃えてる」。歌詞にある東京という言葉をそれぞれが思う場所に当てはめて聴いてもらえたらと、アコギ1本と歌声で歌い上げる。待ちに待った新曲披露とはいえ、デュオでのアコースティックライブはやはり貴重だ。「幸せだな……」と、久しぶりの観客の前でのライブに思わず言葉を漏らし、自粛期間中にそれぞれの自宅で録音して楽曲を完成させたという「こんな夜更けは」へ。時代を切り取った、夜を思わせるスモーキーなサウンドは音を遮るもののない、野外の「Chill」な会場で聴くのも気持ちが良い。

GLIM SPANKY

GLIM SPANKY

ステージ後半、「地元の空気を感じる曲。記憶の中の風景を想像して聴いてもらえたら」と、地元・長野県を舞台にした映画『実りゆく』のために書き下ろした新曲「By Myself Again」を披露。牧歌的なサウンドは時代を巻き戻すような、どこか懐かしい心象風景を感じさせてくれる。この日のライブが今年初の野外でのライブだったという彼ら。新曲の披露はバンド編成でも経験がなかったらしく、緊張したと心情をこぼしつつ、次はバンドのツアーでまた大阪に戻ってきたいと意欲を語る。最後、大きく息を吸い込み、エモーショナルに歌い上げた「大人になったら」。丁寧に綴られる言葉のひとつひとつに心奪われ、思わず目頭が熱くなる。ライブハウスやバンド編成でのステージとの違いがより色濃く出た、特別なステージに観客からはたくさんの拍手が送られた。

●藤巻亮太

藤巻亮太

藤巻亮太

新旧様々な楽曲で会場を盛り上げたのは藤巻亮太。まずは1曲目「五月雨」。アコースティックギターと足元でリズムを鳴らすストンプボックスで軽快に音を鳴らし、柔らかくも力強い歌声で歌い上げていく。会場後方では芝生の上を裸足で踊る小さな子供もいて、ステージの「ミュージック&リラックス」のテーマにぴったりハマっている。心配していた天気も嘘みたく晴れ、待ちに待った有観客のライブに「日頃の行いが良かったのかな」とご機嫌に冗談も飛ばしていく。

藤巻亮太

藤巻亮太

「大阪に元気と初雪も届けたい。まだ少し暑いけど、季節を感じてもらえたら」と披露したのは「粉雪」。レミオロメンの名曲の披露に、フィールドからは大きな拍手が沸き起こる。バンド時代に大切にしてきた楽曲をソロでも聴ける嬉しさはもちろん、アコースティック版にアレンジしての演奏は貴重!夕暮れを迎え、少しひんやりとしてきた会場に美しいファルセットが響き渡る。サビ部分の遠く伸びていく歌声を聴きつけ、会場に走って駆け寄る観客もいる。次曲「マスターキー」では丸みを帯びた歌声にほんの少し甘さを足し、至福の時間を積み上げていく。

藤巻亮太

藤巻亮太

MCでは感染防止対策をしっかりと守ったマスク姿の観客が目の前にずらりと並ぶ姿を見て「笑ってる? 怒ってる? 楽しんでくれてる??」と、表情がしっかりと見えないことに戸惑いつつ、オーディエンスとの久々の交流を楽しむ彼。軽快にトークを弾ませながらも「ライブができる場があるだけで幸せ。拍手が聞こえるだけでもうれしい」と、約7か月ぶりの有観客でのライブにしみじみと思いを馳せる。そして「2020年は忘れられない年。雨の日も晴れの日もある。その日その日を自分らしくできたらという願いで作った曲です」と「日々是好日」へ。躍動感にあふれたキャッチ―なサウンドにつられて自然とクラップが起こり、大きな一体感が生まれていく。続く「雨上がり」もさらに軽快さが増し、藤巻がギターをかき鳴らすたび、近くにいた小さな子供がうれしそうに手を叩いている。

藤巻亮太

藤巻亮太

「今日を皮切りに色んなところでライブができて、またみんなに会えたら。最後におまじないのように」と最終曲「3月9日」へ。思い立ってもすぐに会えない、今だからこそより心に沁みる楽曲を愛おしそうに聴き惚れる観客の姿が印象的だった。

●ACIDMAN

ACIDMAN

ACIDMAN

Chillin’ Vibes STAGE2日目のトリを務めるのはACIDMAN。アコースティック編成での全国ツアーやコンセプチュアルなステージなど、これまでに何度と経験している彼ら。バンドが描く世界観を違った表情でも感じ取れると、バンドにとっても欠かせない表現となっている。彼らのアコースティックライブを経験しているファンも少なくないはず。それでも、久しぶりの観客の前でのライブ。今日の彼らは音にどんな色をのせ、どんな色を成していくのか。会場にはたくさんの観客が集まり、静かに彼らの登場を待つ。

空が深い夜の色に変わり、虫の音色も聞こえてくる。「素晴らしい景色です」と大木伸夫(Vo.Gt)が言葉を漏らし、1曲目に選んだのは美しく希望に満ちた言葉で綴られた「FREE STAR」。浦山一悟(Dr)のタイトなリズム、アコースティックでもしっかりと刻んでいく佐藤雅俊(Ba)のグルーヴ、優しいのにぐっと心つかんでくる大木の歌声、3人のプレイに恍惚の表情で魅入る観客たち。続く「シンプルストーリー」は夜の匂いを強めドラマチックに、ジャジーに攻め込んでいく。

MCでは大阪の積極的なエンタメへの動きに勇気をもらっていると語り、「奇跡のようなフェスをありがとう」と「アイソトープ」へ。ボサノヴァテイストにアレンジされた物憂げなサウンドに、大木が哀愁をもった声を重ねていく。「赤橙」では浦山が打ち出す、より一層柔らかなリズムが原曲のソリッドな印象を一変していく。これまで何度と聴いたアコースティックでのライブだが、時間や場所、色や匂い、たったひとつ環境が異なるだけで印象が全く違ってくるから面白いし、次はどんな音が鳴るのかと期待と興奮が止まない。

ACIDMAN

ACIDMAN

ライブ後半、台風が直前で回避したことに「岡本太郎さんのパワーが爆発したはず。大阪優勝!おめでとう」と喜びを語る大木。そしてライブができた喜びと、「今」その瞬間が奇跡だということ、その瞬間の美しさを感じ、最後の瞬間まで輝いてほしいと「ALMA」を披露。壮大な世界観を持つ楽曲は、この時間、この会場のために用意されたのかと思うほどぴったりとハマっていて、最高の曲陣に思わずぐっと拳を握ってしまった。

「最高の景色をありがとう。根拠はないけれど、みんなが大丈夫と思える曲を」と、何度も感謝の気持ちを伝え、最後に選んだ楽曲は「Your Song」。ステージにいる3人が音を鳴らせる喜びを感じる以上に、オーディエンスもそれを体感できる喜びを感じているはず。爪痕を残すでも、印象を残すでもない、自然と記憶に刻まれるライブはあっという間に終わりを迎え、アンコールを求めるクラップが鳴るなか、多幸感に満ちたChillin’ Vibes STAGEのステージが幕を閉じた。

取材・文=黒田奈保子 撮影=河上良