大阪のラジオ局、FM802が自信を持って1ヵ月間毎日、特定の楽曲をOAするヘビーローテーション。そのヘビロアーティストに、自身のルーツとなる楽曲のアンケートを取り、その話を交えながらFM802DJがインタビューする企画【FM802×SPICE ヘビロな人のヘビロ曲〜あの人のルーツはこの10曲〜】。今回は、2020年10月のヘビーローテーションアーティスト・竹内アンナにインタビューを敢行。10月7日(水)にリリースした自身4枚目となるE.P作品「at FOUR」に収録されている「+imagination」が10月度のヘビ―ローテーションに選ばれた。今回の対談はFM802で『EVENING TAP』(毎週月・火曜日18:00-21:00)と『SUPERFINE SUNDAY』(毎週日曜日7:00-12:00)を担当しているDJの浅井博章が、ヘビロ曲についてはもちろん、楽曲制作やライブを行うまでの話や、浅井が「乾いたスポンジのよう」と比喩する竹内アンナの音楽吸収率の速さを表すエピソードまで、ルーツ曲を元に話を訊いた。

【FM802×SPICE ヘビロな人のヘビロ曲〜あの人のルーツはこの10曲〜】

【FM802×SPICE ヘビロな人のヘビロ曲〜あの人のルーツはこの10曲〜】

●音楽の知識があったわけじゃなかったのに、漠然と「この曲すごい……」と感じた●

ーー竹内アンナさんの新曲「+imagination」が10月度のヘビーローテーションということで、今回色々お話を聞かせてもらおうと思います。 

よろしくお願いします!

ーーまず曲作りを始めた時期はいつ頃からなのでしょうか?

ギターを弾き始めたのが中学1年生で、初めて曲を作ったのは中学3年生です。もちろん当時は作曲の手法を知らなかったので、本当に手探りで。知ってるコードを並べていうところから始めました。​

ーーそういえば元々親御さんがすごく洋楽好きなんですよね。

母がすごい音楽が好きな人で。好き嫌いなく本当に何でも聴くので、私も小さい頃から母が作った新旧邦洋ごちゃまぜのプレイリストを聴いて育ちました。​

ーー音楽が凄く身近な環境で育ってきたアンナさんの気になるルーツ曲ですが、今回、10曲に絞ってくださっております。選ぶのは大変でしたか?

10曲に絞るとなると選ぶのが難しかったですね(笑)。印象が強い曲を選びました。

ーー前に僕の番組にお迎えした時にも好きな曲としてあげてくれていたアース・ウィンド・アンド・ファイアーの「セプテンバー」も入ってますね。この曲はアンナさんが生まれる遥か前の曲ですが、どのように出会ったんですか?

この曲は、物心付く前からずっと車の中で流れていたので、気づいたときにはそばにあった音楽です。どんなシチュエーションで聴いても必ずハッピーになれる曲で、すごく自分の音楽体験の原点になってると思います。

ーーダンスクラシックが音楽体験の原点なんですね。

そうですね。アース・ウィンド・アンド・ファイアーがキッカケでディスコやファンクに興味を持ちはじめたのですが、一方で小学生の頃はディズニーチャンネルが大好きで、ディズニーチャンネルスターの曲をずっと聴いていたんです。

ーーディズニーチャンネルスターというのは、ディズニーのドラマに俳優としても出てるアーティストのこと?

そうです。例えばマイリー・サイラス、セレーナ・ゴメスですね。そんななか、ある日CMで「めっちゃ良い!」と感動した曲が流れてたのですが、アーティスト名を見逃しちゃって。当時、小学生だったからスマホも持ってなかったし、パソコンで色々調べた結果たどり着いたのがテイラー・スウィフトの「ラブ・ストーリー」だったんです。やっとたどり着いた楽曲だから思い入れもありますね。

竹内アンナ

竹内アンナ

ーー洋楽中心だったのかと思いつつ、リストを見るとBUMP OF CHICKENの「カルマ」が入ってるのが意外だなと思いました。

BUMP OF CHICKENは中学受験で、ずっと家にこもって勉強していた時期があったんですが、たまに勉強が嫌になってYouTubeに逃げていた時期があって(笑)。その時に偶然出会ったのがBUMP OF CHICKENの「カルマ」だったんです。

ーー急に邦楽ですよね。

そうなんです。好き嫌いなく何でも聴くタイプとは言いつつ、洋楽寄りだった時期があったんですけど、「カルマ」に出会って、J-POPの素晴らしさとか日本語の美しさに気づいて、なんでもっと邦楽を聴いてこなかったんだろうと思いました。「カルマ」を聴いてから触れるジャンルが広がったし「音楽を聴くのが好き」から「音楽をやりたい」と思うようにもなったキッカケにもなった曲です。​

ーー当時「カルマ」を聴いてどう感じたか覚えてます?

イントロから一気に曲の世界観に引き込まれたというか。初めて聴いた時、鳥肌が止まらなかったのは今でも覚えていて、それぐらい自分にとってインパクトの強かった曲です。この時から、ギターが欲しいという話を親にして、受験が終わってからギターを買ってもらいました。

ーー練習のために聴いていた音楽はなんでしたか?

中学にギターをやっている先輩がいて、その方から教えてもらったビートルズですね。自宅のCD棚にあった青盤と赤盤を聴いていました。色々聴いて、そのなかでも衝撃的だったのが「ゲット・バック」で。

ーー青盤に入ってる曲ですね。

聴いた当時はまだ中1だったので、音楽の知識があったわけじゃなかったのですが、漠然と「なんかこの曲すごい……」と感じました。曲自体はめちゃくちゃシンプルなんですけど、景色が浮かぶ表現力というか、聴いただけで行ったことのない街の風景が浮かんで。初めて聴いたその一晩で40回は再生しましたね。

ーー「ゲット・バック」だけを40回?(笑)

そうです。もう本当にずっと聴いていました。

●人前で歌うのはむしろ苦手で提案された時も断ったんです●

浅井博章(FM802 DJ)

浅井博章(FM802 DJ)

ーーそれは相当ハマっていますね。中学に入ってギターに触れ、練習していくなかでビートルズにも出会い、音楽との触れ合い方にも変化が出てきたんじゃないですか?

本当にその通りで、CDを自分で積極的に買うようになりました。基本的にそれまでは母のCDとYouTubeで聴いてたんですが、YouTubeのオススメ欄からだけじゃなくて、自分からも新しい音楽を見つけに行きたいと思うようになりました。あと、とりあえず良い音楽を形として手に入れたいという所有欲が湧いてくるようになりましたね。

ーー初めて買ったCDは何でした?

初めて買うときは何が良いかお母さんに相談したんですけど「ギターやるんだったらこれ」と勧められたのがレッド・ホット・チリ・ペッパーズとニルヴァーナのベストでした。

ーーずいぶんまたオルタナティブなCDを(笑)。中学生の女の子にレッチリとニルヴァーナをオススメするお母さんはなかなか攻めてますね。その2組は今回選んでもらったルーツのなかには入ってないですね。

本当に10曲の中に選べなくて。ここに入ってないのだと、他にも洋楽だけじゃなくて、邦ロックもあります。当時見てたアニメの影響でGalileo Galileiもめちゃくちゃ好きでした。

ーー実はめちゃくちゃアニメ好きですもんね。ジャミロクワイとかマルーン5はCDを買っていくなかで出会ったのですか?

その2組は、自分でCDを買っていくなかで、ふと「せっかくこんなに家にCDがあるんならもうちょっとしっかり掘ってみよう」と思って、家のCD棚から見つけたものなんです。マルーン5の「マスト・ゲット・アウト」が収録されてる『ソングス・アバウト・ジェーン』と、ジャミロクワイの「ヴァーチャル・インサニティ」が収録されている『トラベリング・ウィズアウト・ムービング』は、本当にCDが擦り切れるくらい聴きました。

ーーやっぱりその2組も竹内アンナの楽曲に影響を与えていますよね。

そうですね。ジャミロクワイも思わず体を揺らしたくなるビートとか、すごくおしゃれなコード使いとかは、今もすごく自分の曲作りに生きてますし、マルーン5に関してもベースにあるすごくシンプルでキャッチーな音楽というものも自分の曲作りに影響を与えてくれているなと思っています。

【FM802×SPICE ヘビロな人のヘビロ曲〜あの人のルーツはこの10曲〜】

【FM802×SPICE ヘビロな人のヘビロ曲〜あの人のルーツはこの10曲〜】

ーーサウンド面のルーツの他に、作詞の面で影響を与えてくれた楽曲はありますか?

歌詞の書き方ですごい参考にしてたのが、知り合いに勧められたBONNIE PINKとLOVE PSYCHEDELICOです。

ーー日本語と英語のうまい混ぜ方とか、日本語を英語っぽくリズムに乗せる方法ですよね。

そうです。あとラップ要素の部分でいうと、影響が大きいのはK-POPなんです。母はK-POPも好きなんですけど、そこからのめり込んでいきましたね。

ーーお母さん幅広いな!(笑)

本当に(笑)。少女時代を好きになり、少女時代が所属している SMエンタテインメントのグループをどんどん掘り始めて、たどり着いたのがEXOで。ものすごく洗練されたサウンドともう一糸乱れぬパフォーマンスに、衝撃を受けました。もちろんファンとしても好きですが、表現する側の目線で観ても素晴らしい。K-POPってR&BやHIPHOPなど、色んなジャンルの音楽から影響を受けてるのですが、その色んな音楽ジャンルの混ぜ方とか、それをいかにキャッチーにして聴きやすくするかという面でとても勉強になることが多いんです。曲中にラップをうまく入れ込むことのカッコよさはEXOで学びました。

ーーラップ要素の原点がK-POPなのは知らなかった。本当に中学生時代にルーツとなる出会いが詰め込まれてますね。人前で演奏し始めたのはいつ頃からですか?

中学3年生の頃ですね。中学1年生のときからギターを教えてもらってる先生に、「そろそろ人前で歌ってみたら?」と提案されたことがキッカケでした。

ーー人前で歌うのは当時から得意だったんですか?

むしろ苦手でした。提案された時も「歌も下手だし、人前でできるレベルじゃないです」とお断りしたんです。でも「え? じゃあいつできるようになるの?」と言われて。「いつかやるんだし、今やってみれば?」という後押しが合って始めることが出来ました。とても緊張しましたし……緊張は今でもしてるんですけど、今はちゃんと楽しめる余裕が出て来ましたね。

●自分の中にあったシンガーソングライターの概念を崩してくれた●

竹内アンナ

竹内アンナ

ーーライブを始めると、またそれまでとは違う世界が広がってきますよね。

関わる人が一気に増えましたね。そのなかで出会った方に、歌い方の参考としてカーディガンズを教えてもらいました。

ーーなるほど。力強く歌い上げるのではなく囁くように歌う感じね。

聴いてみたら凄く好きなサウンドだったので、そこからスウェディッシュ・ポップにもハマっていきました。

ーーBONNIE PINKもスウェディッシュ・ポップと言うか、トーレ・ヨハンソン(スウェーデンの音楽プロデューサー)のプロデュースで音源も出してますから、通じるものが合ったのかな。

そうですね。軽やかさとか、心地よさの中に、ちょっとなんか不安定な感じがあるアンバランスさが良いんです。

ーー歌い方の参考はスウェディッシュ・ポップ。アンナさんは歌声も特徴的ですが、ギターの腕前も会う度に上達していてビックリさせられて。前から聞きたかったのですが参考にしているアーティストはいるんですか?

ギターは、高校2年生くらいのときに出会ったジョン・メイヤーの影響が強いです。ジョン・メイヤーがインストアライブで弾き語ってる映像を偶然見たんですけど、ギター1本なのに、出てる音もギター1本とは思えないし、指使いも見たことないものが多すぎて、ビックリしちゃって。当時の自分にとってギターは、歌うための一つのツールという認識だったんですが、ジョン・メイヤーは、歌うために弾いてるのではなく、それぞれが物凄いレベルで独立しながら、混ざり合ってるという感覚。それがめちゃくちゃ自分にとっては衝撃的で、自分の中にあったシンガーソングライターの概念を崩してくれましたね。それからは、こんなギターを弾けるようになりたいと、更にのめり込んで練習するようになりました。

ーー練習していくなかで、辞めたいと思ったことはありました?

それは無かったですが、手の大きさとかで物理的にできない壁はありましたね。負けず嫌いなので、発想を変えてなんとか乗り越えてやってきました。

ーーその努力をしつつ、路上でもライブを行い、2018年にメジャーデビュー。デビューしたことで変わったものはありますか?

サウンドプロデューサーの名村武さんとの出会いがあったり、デビュー前に『サウス・バイ・サウスウエスト』で知り合ったマルチクリエイターのISSEIさんだったり、出会う人の数が劇的に増えたことで、今まで全然自分の知らなかった音楽を知ることが出来ました。自分でも新しい音楽を探したりするのですが、出会う人から教えてもらう曲もすごく曲作りの糧になってるなと思います。

ーーここ数年はルーパーを使ったライブがトレードマークみたいになっていますよね。それも何かしらの影響があったんですか?

ルーパーは特に誰かの影響があったというよりは、2019年にリリースした「at TWO」というE.Pに入ってる「Free! Free! Free!」をライブで再現したいなと思ったことがキッカケでした。エレクトロニックな曲で、もちろんアコギアレンジも考えたんですが、せっかくやるんだったら楽曲の世界観を出来る限り表現したいなと思ってルーパーを使いはじめました。

ーー機材を使うのって知識も練習も必要ですよね。大変そうです。

練習は……しましたね(笑)。機材に詳しい方に教えてもらったり、動画を参考にしたり。

●素直に盛り上がれる曲を作ってみたいなと思っています●

浅井博章(FM802 DJ)

浅井博章(FM802 DJ)

ーーその「at TWO」以降、打ち込みも増えてきて、楽曲の幅が広がってきているなと思うんですけど、今回のヘビーローテーションになっている「+imagination」もまた今までとは違った要素がありますよね。

「+imagination」は、コロナで自粛していたときに、それまで手を伸ばせてなかった音楽を聴こうと思って、知り合いにハウスミュージックを教えてもらったんです。聴いているうちに、こういう曲作りたいなと構想するようになったのがキッカケですね。

ーー今はそういうハウスミュージックを作ろうというモードなんですか?

モードは気分によってコロコロ変わるので、「今はこのモード」というのがあまりなくて。制作期間の中でも色んなモードに切り替わって、結果的に1枚のE.Pに色んな曲が入っちゃうんですけど(笑)。

ーーアンナさんは乾いたスポンジに水を与えるように吸収が速いから、これからもどんどん楽曲の幅が広がっていきますね。これからまた挑戦してみたいなと思うジャンルや、参考にしたいアーティストはいますか?

ゲームなんですけど『アイドリッシュセブン』に今すごくハマっているんです。アイドルを育てるゲームなので、 いわゆるアイドルソングがいっぱい流れるんですよ。アイドルソングって素直というか、メロディーもサウンドも「ここが1番盛り上がるところ!」というのがすごく分かりやすくて。

ーーなんとなく分かる気がする。合いの手とかお客さんが一緒に歌うとことか、とてもハッキリしてますよね。

そうなんです! 今までそういうアイドル然とした曲には触れてこなかったので、難しいことをたくさんしようというモードから1回離れて、素直に盛り上がれる曲を作ってみたいなと思っています。『アイドリッシュセブン』オススメですよ。

ーー出た、竹内アンナの営業!(笑) 今日会うまでに『鬼滅の刃』全部観ましたよ。

本当ですか? 映画も観ました? 映画って……

ーー話し始めたら長くなるから! 

ハハハ!(笑)

ーー今日は竹内アンナさんのルーツを詳しくお聞きできて楽しかったです。ありがとうございました!

ありがとうございました! 

文=城本悠太 撮影=渡邉一生