2020年11月7日(土) から東京・PARCO劇場にて舞台『迷子の時間−語る室2020−』が開幕する。
本作は唯一無二とも言える世界観を持つ劇作家・演出家の前川知大が2015年に自身が主宰する劇団イキウメで上演した「語る室」をベースに、『抜け穴の会議室』以来10年ぶりの登場となるPARCO劇場のオープニング・シリーズに相応しい2020年版として新たに生み出した作品。
その作品の主演に、蜷川幸雄演出の『靑い種子は太陽のなかにある』以来の舞台であり、ストレートプレイ初となる亀梨和也を迎え、全く新しい世界を拓く事となった。
 
亀梨は失踪した子供の叔父で奇妙な幻覚に悩む警察官を、そして、警察官の姉で、失踪した息子の母親役を貫地谷しほりが務める。
さらに、父の死を知り実家を目指すヒッチハイカー役を浅利陽介、帰ることのできない未来人役に松岡広大、奇跡を信じて嘘をつき続ける霊媒師を古屋隆太、浅利演じるヒッチハイカーの妹で遺品から亡き父の秘密に迫ろうとする娘を生越千晴、そして、幼稚園送迎バスの運転手で失踪した弟の帰りを待ち続ける兄役を忍成修吾が演じる。

初日前日に同劇場にて会見とゲネプロ(通し稽古)が披露された。

会見前のフォトセッションでは亀梨が「渋谷だからギャル風で」と懐かしのポーズを見せて笑いを誘っていた。

ギャルポーズ、懐かしいですね(笑)!

ギャルポーズ、懐かしいですね(笑)!

前川知大

前川知大

会見で見どころは?と聴かれると前川は「失踪事件を経てこの7人が絡み合いそうで絡まず、でも深いところでとても絡んでいる事が徐々に分かるところ」と述べ、「難しく考えるよりは感覚で見てもらえるように作ったつもり」と語った。

亀梨は「僕自身としてはPARCOさんとお仕事をするのも初めてですし。PARCO劇場を使うのも初めて。ストレートプレイも初めて……と初めてだらけ。おまけに浅利くんはドラマで一度共演しましたが他の方は初めましてです。そんな方々と稽古場で素敵な時間を過ごさせていただきました。こういった状況の中、ステージに立たせていただけることに感謝しつつ観に来てくださる方々にもいい時間を過ごしていただきたい」と冷静な口調で話す。とはいえ、自身の警官姿について「警官姿は初めてではないですが、靴下の中にズボンのすそを入れるスタイルは初めてですね」と足を見せていた。

亀梨和也(中央)はズボンの裾inをアピール

亀梨和也(中央)はズボンの裾inをアピール

日々の苦労を聴かれると「苦労というよりは挑戦であり、発見であり、気づきをたくさん与えてくださるんです。おうちに帰ってからいろいろ振り返っていますね」と話す亀梨。すると浅利が「本番、寝不足でくるのはやめてくださいね!」と愛ある突っ込みをくらわせると、貫地谷も「(亀梨が)本番の一週間前からドキドキしているんですよ!」と暴露。
その言葉に亀梨は「おうちに帰ってお風呂に入ったり新喜劇の映像を観て気分転換しています。すぐ(ドキドキが)戻っちゃうんですけどね」と苦笑いを浮かべていた。

貫地谷しほり

貫地谷しほり

貫地谷は「憧れだった前川さんの作品に出られる事が凄く嬉しかった。そしてPARCO劇場には何度も足を運んでいたんですが、出演するのは初めて。いつか出てみたいと思っていたのですごく嬉しいですし、すごく素敵な人たちばかりなので毎日この人達が好きになっていました……これから嫌いになるかもしれませんが(笑)」と冗談を交えつつ口にすると、他メンバーから熱い視線を注がれる。その視線に慌てつつも最後は「懐かしい感じもありつつ、前川さんの時空を操る素敵な舞台になっています」と笑顔を見せた。

浅利陽介

浅利陽介

PARCO作品には出演経験がある浅利は「新しくなって見ての通り間口が広くなっています」と、さもPARCOの関係者のように語り出すと他メンバーが一斉に笑い出し突っ込むが、負けずに「PARCOのオープニングステージの一つに出たという事はもうPARCO作品のスタメンという意味合いがあると思っていいんじゃないかと。またPARCOで新しい舞台があった時はこの中の誰かが出ているんじゃないかと」とさらに話を膨らませていた。そして自身の役については「ゆる〜く出て、ゆる〜く去る役どころです。風のように流れる橋爪功さんのような存在感を目指しています」と最後まで笑わせていた。

松岡広大

松岡広大

松岡は「このキャスト、先輩方に囲まれて芝居ができるのがすごく嬉しいです。演劇ってやっぱりすごく楽しいな、日常には不可欠だなと僕は感じたので皆さんの生活圏に入っていけるといいなと思った作品です」と演劇愛を口にする。

古屋隆太

古屋隆太

古屋は「この作品自体、目に見えないけれど確実にあるもの、その人の人生にとても大切なものが描かれていると思っています。早く多くの人達に観ていただきたいです」とコメント。

生越千晴

生越千晴

生越は「舞台って稽古期間があってそこがすごく特別な時間だと思うんですが、7人がすごく深いところで繋がっていて、そこを作り上げる稽古が凄く素敵でした。それをお客様に届けるのが楽しみです。千秋楽までまだまだ新しい発見を繰り返しながら作りあげていきたい」と意気込みを見せた。

忍成修吾

忍成修吾

最後に忍成は「僕は初めての舞台がPARCOさんだったので、また新しくなった劇場で舞台をやれるのはすごく嬉しいです。前川さんと一緒にできるってどんな感じなんだろう、と興味深々でした。稽古では皆さんの役どころに個性が出てくるんですが、それがチームワークにも繋がっているのではと思いますし、本番の底力になるのではないかと」と期待を込めていた。

稽古場では皆でコミュニケーションをとるために、様々なゲームをしたそうだが、とあるゲームで亀梨は「自分が先陣を切ってつっこむんですが、つっこみ返されるとキュン!と仔犬感が出てしまって」と打たれ弱さを自白して照れ笑い。また皆がそれぞれニックネームを付け合っていたという事で、亀梨は「カズ」、浅利は「アチャリン」、貫地谷は「カンジ」、古屋は「ルッチ」、松岡は「マッコ」、生越は「オゴチときにファゴチ」、そして前川は「サク」、忍成は「オシュサマ」と紹介され「この後他の現場で会った時にどうしようね?」「オシュサマとか言ったらこの人たちは何?って思われそう」と顔を見合わせて笑いあっていた。

会見の後にはゲネプロが行われ、本番さながらの熱のこもった芝居が繰り広げられた。

【あらすじ】
田舎町、ある秋の日の夕方。
人気のない山道で、一人の園児と幼稚園送迎バスの運転手が姿を消した。
バスはエンジンがかかったままで、争った跡はなかった。
手掛かりはほとんどなく、五年経った今も二人の行方は分からないままだ。
消えた子供の母、その弟で最初に現場に駆けつけた警察官、消えたバス運転手の兄。
それぞれが思いを抱えながら向かえた五年目のある日、三人が出会った人たち……
奇跡を信じて嘘をつき続ける霊媒師、
帰ることのできない未来人、
父の死を知り実家を目指すヒッチハイカー、
遺品から亡き父の秘密に迫ろうとする娘。
彼らを通じて、奇妙な事件の全貌が見えてくる。
 

前川作品の魅力の一つである過去、現在、未来と時空を飛び越える作風は今回も健在。そのなかで “主演”ではあるが、亀梨は他のキャストとほぼフラットな立ち位置でこの物語を作るパズルの1ピースとなっており、等身大に近い普通の男を誠実に演じていた。

芝居中、まばゆい光に包まれるシーンがあり、その光の美しさに思わず息を飲んでしまった。あの光がどこから放たれているのか、その光はどこに誘おうとしているのか。そんな事を考えているうちに様々な伏線が徐々に明らかになっていく。非常に心地よい作品だった。

取材・文・撮影=こむらさき