おうちをシアトリカルなエンタメ空間に! いま、自宅で鑑賞できる演劇・ミュージカル・ダンス・クラシック音楽の映像作品の中から、演劇関係者が激オシする「My Favorite 舞台映像」の3選をお届けします。(SPICE編集部)

ホーム・シアトリカル・ホーム〜自宅カンゲキ1-2-3  [vol.41] <宝塚編>
12月の「TAKARAZUKA SKY STAGE」​お勧め3作品の見どころ紹介​ by 藤本真由

【1】『GOD OF STARS-食聖-』('19年星組・東京・千秋楽)
【2】『さくら−妖しいまでに美しいおまえ−』('07年星組・東京・千秋楽)
【3】『マスカレード・ホテル』('20年花組・ドラマシティ)

 

宝塚歌劇専門チャンネル「TAKARAZUKA SKY STAGE」の12月放送のラインアップより、見逃せない3作品の見どころをご紹介!

 

【1】『GOD OF STARS-食聖-』('19年星組・東京・千秋楽)

『GOD-OF-STARS-食聖-』('19年星組・東京・千秋楽)  ©宝塚歌劇団 ©宝塚クリエイティブアーツ

『GOD-OF-STARS-食聖-』('19年星組・東京・千秋楽)  ©宝塚歌劇団 ©宝塚クリエイティブアーツ

星組トップコンビ、紅ゆずる&綺咲愛里の退団公演として上演された『GOD OF STARS−食聖−』(スペース・レビュー・ファンタジア『Éclair Brillant』と二本立てで上演)は、宝塚作品としては珍しい、現代アジアを舞台にした作品である。上海出身の三つ星天才料理人ホン・シンシン(紅ゆずる)は、レストラン・チェーンの総帥として活躍していたが、裏切られ、築き上げてきたすべてを失ってしまう。そんな彼がシンガポールにたどり着き、そこでめぐりあった仲間たちと生きる力を取り戻していく様が、軽快でポップな音楽のうちに描かれる“アジアン・クッキング・コメディー”で、プロローグ&劇中登場するアイドル・グループが歌う楽曲は音楽クリエイター・ヒャダインによるもの。紅がこれまでの宝塚生活で経験してきたさまざまな作品のエッセンスもふんだんに盛り込まれていて、関西出身、笑いのセンスで知られた彼女の道のりを思い出と共に懐かしく振り返ることのできる、そのラストを飾るにふさわしい楽しい作品となっている。主人公が、“真・料理の聖人コンテスト”に勝つため、満漢全席の修行に行く先が、「少林寺」ならぬ「小林寺」というのも、宝塚歌劇団の創始者・小林一三の名にかけたと思しき痛快ギャグ。映像(奥秀太郎)を使ったここの秀逸な演出に、ぜひご注目を。

主人公が復活を遂げるにあたり、大きな支えとなるのが、シンガポールのホーカー(屋台村)で家族経営の店を守ろうと奮闘するアイリーン(綺咲愛里)の存在。料理は超絶ヘタだが、カンフーは得意の活発ヒロインで、ピンクのベロアのジャージ姿で大暴れする場面も。ピンクと黒とベージュの三色使いがおしゃれなワンピース&ヒール靴&コートのスタイリッシュなセットアップ、美脚が映えるキュートなフリフリアイドル風コスチューム等、目をひくコーディネートがずらり。有村淳が手がけた衣装にも大いに注目して観ていただきたい作品である。

放送:2020年12月20日(21:00) ※天飛華音、舞空瞳他出演の'19年星組・東京・新人公演の放送もあり

 

【2】『さくら−妖しいまでに美しいおまえ−』('07年星組・東京・千秋楽)


星組トップコンビ安蘭けい&遠野あすかのお披露目作品『さくら−妖しいまでに美しいおまえ−』(ミュージカル『シークレット・ハンター−この世で、俺に盗めぬものはない−』と二本立てで上演)は、4年ぶりの上演となった日本物ショー(作・演出は谷正純)。現在、東京宝塚劇場にて上演中の、月組公演『WELCOME TO TAKARAZUKA−雪と月と花と−』の千秋楽(2021年1月3日)で64年にわたる宝塚生活に別れを告げる、宝塚の日本物ショーにはなくてはならない存在だった専科の松本悠里も出演している作品だ。この華やかな作品では、染色家の久保田一竹(2003年没)が室町時代の技法を現代に甦らせた「一竹辻が花」で染められたあでやかな着物が着用されているのが見どころ。この着物が登場する“ボレロ”の場面にご注目を。

座付きの衣装デザイナーが毎公演華を競う宝塚のコスチュームだが、ときにはこうして外部デザイナーの作品が舞台を彩ることも。平成の初めには、人形作家・アートディレクターの辻村ジュサブロー(辻村寿三郎)が『春の踊り−恋の花歌舞伎−』(1989)など日本物作品でたびたび衣装を担当。現・宝塚大劇場こけら落とし公演で上演されたショー『PARFUM DE PARIS』(1993)の衣装は、今年10月に惜しくも亡くなった高田賢三の手によるもの。12月に新人公演の放送がある月組公演『シニョール ドン・ファン』(2003)は、現代イタリア・ミラノを舞台にファッション・デザイナーの主人公が活躍する作品で、コシノヒロコが衣装デザインを提供。下着ルックをはじめとする先鋭的なデザインで一世を風靡したフランス出身のジャン=ポール・ゴルチエは、花組公演『SPEAKEASY〜風の街の悪党たち』(1998)と星組公演『プラハの春』(2002年)の衣装を担当している。座付きデザイナーとは一味違った衣装の数々に注目しつつ画面に見入るのもまた一興。

放送:2020年12月9日(10:00)

 

【3】『マスカレード・ホテル』('20年花組・ドラマシティ)

『マスカレード・ホテル』 ('20年花組・ドラマシティ)  〜原作 東野圭吾「マスカレード・ホテル」(集英社文庫刊)〜  ©東野圭吾/集英社 ©宝塚歌劇団 ©宝塚クリエイティブアーツ

『マスカレード・ホテル』 ('20年花組・ドラマシティ)  〜原作 東野圭吾「マスカレード・ホテル」(集英社文庫刊)〜 ©東野圭吾/集英社 ©宝塚歌劇団 ©宝塚クリエイティブアーツ

映画化もされた『マスカレード・ホテル』は、連続殺人事件を追う刑事を主人公に描く東野圭吾の人気ミステリー小説。次に殺人事件が起きる場所として推測される高級ホテルでは緊張感が高まり、張り込む主人公の刑事と、彼を教育するフロントクラークのヒロインの二人は、ときに衝突しながら、次第に互いを認め合っていく――。谷正純が作・演出を手がけた宝塚版では、花組男役ならではの華やかな魅力と高い演技力を兼ね備えた瀬戸かずやが刑事・新田浩介役で主演、朝月希和がヒロイン山岸尚美役を演じた。ホテルを舞台にしたこの作品に出演するということで、二人は、昨年11月末に開業した「ホテル阪急レスパイア大阪」のオープニング・セレモニーにも、同ホテルの制服を着用して登壇。さすが男役、娘役ならではのきりっとした着こなしで、華やかなセレモニーに花を添えていた。作品の中で二人が着用したホテルの制服は、紫を基調とした舞台用のオリジナルのもの。主人公の刑事は、慣れない制服に最初は四苦八苦する羽目に。対照的に、優秀なフロントクラークであるヒロインは終始びしっと崩れない着こなしを見せていた。

宝塚歌劇の男役にとってある意味“制服”とも言えるのが、黒燕尾服。その着こなしには、男役としてのキャリアと技量がにじみ出る。同様に、スーツや軍服といったコスチュームも、きちんと着こなせなくてはならない。作中、瀬戸のスタイリッシュなスーツ姿に注目されたし。その一方で、娘役には、男役にとっての黒燕尾服のようないわゆる“制服”はないということを、このとき、朝月希和のホテルの制服姿に改めて気づかされた。それほどまでに、彼女のその姿は、緊張感がある、実にりりしいもので、ホテルウーマンとしての生き様を感じさせると同時に、そのまま、朝月希和の娘役としての生き様を雄弁に伝えていた。2021年には次期雪組トップ娘役に就任する彼女の雄姿をお見逃しなく!

放送:2020年12月13日(21:00)、17日(19:30)、20日(14:30)、22日(24:00)、28日(7:00) ※21年1月も放送予定あり

 

文=藤本真由(舞台評論家)