シング・ライク・トーキングの佐藤竹善が、日本のジャズ界屈指の実力派プレイヤーで構成されたピアノ・トリオと2014年から定期的にツアーを行ってきた佐藤竹善with The Jazz Creatures『Your ChristmasNight』。東京、横浜を経て15日の夜にビルボードライブ大阪で行われた公演は、新型コロナウイルス感染拡大の影響も踏まえてこれまでよりもじっくりと聴かせることに重点を置き、クリスマス・ソングやスタンダード・ナンバーに、近年のライブでは取り上げられることが稀だったレア曲を含む自身のオリジナル曲の数々を交えたスペシャルな内容で、ひときわ聴く者の心に響く貴重なステージとなった。

客席を見渡して「すごくいっぱいいる。ありがとうございます。久しぶり!」との挨拶代わりの短いMCを挟んで、ライブはクリスマス時期らしく「Winter Wonderland」から幕開け。曲の後半には観客に手拍子を求め、ソウルフルな高揚感をさらに高めていくグルーヴ豊かな演奏と熱唱でオープニングから圧倒すると、続いてはアコースティック・ギターを手にして14年に発表されたソロ名義でのクリスマス・アルバム『Your Christmas Day Ⅱ』に収録されたオリジナル曲「雪の星 ~Another Christmas Time~」を日本語詞のバージョンで。曲間の軽快なトークではいつも通りに和ませつつも、佐藤自身も今年は久々の大阪でのライブとあって、序盤からいつもとはやや違う熱量と求心力を伴った歌声が印象に残った。

続いて「もろびとこぞりて」を引用したコーラスから幕を開け、70年代のフォーキー・ソウル的な雰囲気で「Momento」をメッセージ性も豊かに響かせると、「しばらくやっていない曲をやってみようかな」と前置きして取り上げたのは、99年に発表したソロ作『Fact Of Life』に収録された当時のR&B〜クラブ・テイストの強い佳曲「Let Me In」。生演奏のジャジーなライブ・アレンジにより、ロバート・グラスパーあたりを思わせる最近のヒップホップなどを通過した新世代ジャズ的なグルーヴを感じさせるノリで過去曲を見事にアップデートすると、続いても07年発表のソロ作から今の世の中へのポジティヴなメッセージを含めて「In a Beautiful Seed ~種~」を。バックを務める3人がコーラスも巧みに兼任し、佐藤とのコラボで培ったジャンルレスな持ち味を窺わせた点も聴きものだった。

終盤は、今年の6月に亡くなった服部克久の作曲による、よく知られたスタンダードのような洒脱かつスウィンギーな名曲「Sunny Sunday Morning」を日本の音楽界を支えてきた偉人へのオマージュも込めて聴かせると、この編成の本領発揮といえるジャズ色の強い展開に。ピアノを務める宮本貴奈がリード・ボーカルも取り、ピアノ・トリオのみでスタンダード「Tea For Two」を軽妙に披露すると、本編のラストは宮本のリーダー作に佐藤がゲスト参加して歌ったビル・ウィザースの「Hello Like Before」からAORの不朽の名曲であるグローバー・ワシントンJr.の「Just The Two Of Us」へと連なる珠玉のメドレーを。アンコール前のMCでは、21日(月)に初のライブ配信も行うツアー最終日の相模女子大学グリーンホール公演では1stステージと2ndステージで選曲を変えて行ってきた内容の全曲を取り上げることが告げられ(※今回のレポートは1stステージのもの)、最後はクリスマスの定番曲「O Holy Night」の、この4人ならではといえる起伏に富んだアレンジの好演で締めた。

文:吉本秀純