2020.12.27(Sun)Hayami Saori STREAMING LIVE "glimmer of hope" for Streaming+

春から夏にかけて予定されていた5周年記念ライブツアー『Your Cities』がコロナ禍によって中止となった早見沙織が、12月27日に『Hayami Saori STREAMING LIVE "glimmer of hope" 』を開催した。

先日SPICEにて掲載されたライブ直前インタビューでは、「5周年の活動を踏まえた12月27日のライブとして考えているんですけど、(アーティスト活動で)いちばん最初の曲と最後に置かれている曲をくっつけることで、5年のすべてを包み込んだライブというタイトルになっています」と語ったように、今回のライブは5年の集大成を狙ったライブである。

また、早見沙織にとって初となるストリーミングライブの開催ということで、彼女やスタッフを含め「配信ということで映像の演出だったりカメラワークだったり、仕掛けみたいな部分は舞台監督さんたちとお話して凝った形になっているので、映像は観ていただけると嬉しい」とも語っており、大きな期待を抱かせるものだった。

18時ジャストに配信画面が切り替わる。オープニング映像が終わると、早見は黒いドレスを身にまとい、バンド隊4人含めた5人が円形になって見合わせるような隊形からライブは始まった。

5人それぞれが各メンバーに投げかける視線、表情、指先の動きまでもしっかりと目で追えるほどの臨場感だ。少し緊張した面持ちの5人だったが、「yoso」「メトロナイト」「水槽」の序盤3曲を通して緊張が解けていったのが伝わってくる。

「メトロナイト」「水槽」では黒田晃年によるギターが、「瀬戸際」では黒須克彦によるスラップと休符が効いたベースラインが、それぞれにバンドを引っ張っていく。スウィンギーなグルーヴをソフトタッチでアンサンブルしていく「ESCORT」では、伸びやかに歌い上げる早見。この辺りは少しづつメンバーの緊張がほぐれてきて、前半で一番の見せどころだったと言えよう。ライトメロウな楽曲が揃った前半では曲ごとに、青、赤、紫と基調となるカラーが変わっていき、その色はどれも光量は控えめかつステージを優しく彩っていたのが印象的だ。


それに続くのはエレクトロニカ楽曲の「mist」だ。後ろのカーテンには影絵となった街並みが映し出され。歌声とリンクして歌詞が流れていく。透明なライトがステージと5人にあたると、彼らの衣装とこの舞台が白黒を基調としたものということに気づく。早見のボーカルは先ほどから一転、声量を控えつつ、より優しいトーンへ声を変えていく、彼女のボーカリストとしての上手さが十全に発揮されていたシーンだ。

「ザラメ」の途中ではステージ片側のカーテンが開かれ、花道を通ってセンターステージへと歩んでいく。実は生配信していたステージが大きなホールのなかにあったことに気づかされる、ほとんど照明が消されており、ステージ周りにしか照明が焚かれていない。

ここまで一言もMCがなかったのだが、弾き語りの準備を兼ねてのMCが始まる。「今日は生配信ライブということで、音楽だけではなく、映像や視覚的にも趣向を凝らしているので、ぜひお楽しみください」とこのライブで施された狙いについて語り、そこから早見によるピアノとボーカルで「ブルーアワーに祈りを」「祝福」が披露されたが、個々のパートはまさに「映像演出やカメラワーク」の妙が差し込まれていたと思う。

ライブ映像でよく見る「横から演者を映す」画角だけではなく、斜め上や斜め下、同じ角度からでも遠くからと、様々な距離と角度から早見沙織のパフォーマンスを捉え、少し早いタイミングでスウィッチングしていくことで、彼女のソロパフォーマンスをよりドラマチックに映し出していた。

本来のライブ収録と同じくらいのカメラ台数を持ち込んでいるのだろうか。加えて生配信している会場がそもそも大きめで、花道の先にあるセンターステージ、しかも無観客という状況もあいまって、こういった演出を作り上げられたのかもしれない。芯を保ちながら柔らかく声を届けてくれる早見自身のボーカルも素晴らしい。


「やさしい希望 (Bossa Nova)」からは、バンドメンバー4人が横並びになっての演奏が始まる。「Akasaka5」では原曲よりも歌詞の登場人物にグっとよせるように、声色をかなりキュートにして歌ってみせる。ここまでの少しシックかつ大人びていたムードとは違った空気で、声色に合わせて自然と表情が変わるのも、ハッキリと見て取れるのが配信の良い所。

バンドメンバーによるジャムセッションとメンバー紹介を終え、ライブは終盤へ。「LET'S TRY AGAIN」からは白いドレスを身をまとって登場した早見は続いて「Jewelry」を歌唱。前半同様歯切れよく演奏する黒田のギターと黒須のベースがバンドを引っ張りつつ、早見の歌声もこの日一番の響きを聴かせてくれる。「だいじょうぶ!信じることがパワー」というこの曲の歌詞は、この2020年においては重みを伴った言葉として胸を打つ。


改めてバンドメンバー4人を紹介したあとに、「この画面には映っていないけれども、本当に多くのスタッフさんがこのステージに力を注いでくれています。本当にありがとうございます。」と早見は感謝の言葉を述べた。続けて「2020年はとても激動な一年だったと思います。これを見てくださっているかたの中には、新しい道に向かって歩き出したひととか、ちょっと歩くのを一旦お休みした人とか、それぞれの道に向かっていると思います。そんなみんなの日々の中で、早見沙織の音楽がちょっとでも明日の力になれれば、ささやかな優しい光になれれば、2020年を通してそういう風に思えるようになりました。」と語り、「garden」へと移っていく。

後ろのカーテンに花畑の映像が映し出される中、バンド演奏も相まって音源よりもタイトに鳴らされたこの曲は、ここまでのムードにはなかった力強さをあった。「ここは幸せの入り口 絡まった蔦を解いて 解いて その先へ」と伝えていくイメージは、コロナ禍がすべて終わったあとの世界への期待感を引き起こすようなものだった。

そしてこの日最後に披露されたのは、ライブタイトルにも使われている「glimmer」だ。「遠い空から光はそそぐ きっと きっと きっと いつかは指に触れるかな」という歌詞を、タメを効かしながら、ささやくかのように優しい歌声からグっと強くなっていく歌声、ラストのアカペラはこの配信ライブのハイライトだろう。「garden」では力強さを感じたが、「glimmer」はまさしく祈りを込めるかのような情感をたたえたボーカルで、見るものの心を強く打つ。

本編70分となった今回の配信ライブは、とても穏やかなムードのなかから希望に胸を躍らす高揚さまでもハッキリと描き出す、「希望のきらめき」と題されたライブにふさわしいものだったように思う。きっと起こりうるであろう未来に心が自然と動いていくような、希望の光を灯してくれたライブだった。


少し違う角度から話をすれば、ライブストリーミングで起こりそうな音と映像がズレもほとんどなく、アーカイブ配信では1080pの高画質映像で見れることで、かなり満足できる内容であった。

このライブを見ている方々がどのような環境で聴いているはそれぞれ違うだろうが、筆者は自宅のデスクトップパソコンにスピーカーをつないで鑑賞していて、ハッキリと各楽器の音が分かれて聴こえるレベルだったのは嬉しいところだ。「おうちのなかでゆったりと聴いていてほしい」という早見の言葉通り、かなり落ち着いた気持ちで楽しめる時間だった

舞台演出やカメラワークも素晴らしかった本公演だが、もしかしたらCD音源やライブを生で見るよりも、「声や音を存分に楽しみたい」「アンサンブルを楽しみたい」という早見沙織ファンや、彼女の音楽をより深く知りたいという方にとっては、この配信ライブは見逃せない一本なのではないだろうか。


レポート・文:草野虹