新春を飾るにふさわしいミュージカルコンサート『NEW YEAR'S Dream』が、2021年1月5日(火)に明治座で華々しく幕を開けた。

エンターテイナー玉野和紀(構成・脚本・演出・振付・出演)が趣向を凝らしたコンサートに集ったのは、大野拓朗、新納慎也、吉野圭吾、渡辺大輔、咲妃みゆ、平野綾、北翔海莉(男女別・五十音順)らミュージカル界で個性を発揮する豪華キャスト陣。玉野ワールド全開の本公演でも、それぞれの持ち味を存分に活かしたパフォーマンスを披露してくれた。その初日公演の模様をレポートする。

※以下、楽曲含むネタバレあり。ご注意ください※

幕開けは、玉野を中心に総勢8名のキャストがきらびやかな裃(かみしも)を身につけ登場。一人ずつ新年の挨拶を述べていく。華やかな舞台の幕開けに、いよいよ始まるコンサートへの期待がグッと高まった。

本公演は休憩ありの2部構成。1幕前半はミュージカルファンにはたまらない、怒涛のミュージカルソングコーナーから始まる。最初に全キャストが揃って歌う「FAITH」(ミュージカル映画『SING/シング』より)では自然と手拍子が沸き起こり、冒頭から舞台と客席の一体感が味わえた。その後はソロのビッグナンバーが止めどなく歌い継がれていく。

トップバッターの大野は、2020年12月まで自身が出演していた『プロデューサーズ』から「I wanna be a producer」を披露。ダンサーを従え、シルクハットと杖を手に軽快なステップを踏みながら、茶目っ気たっぷりの笑顔を見せた。

続く北翔が披露したのは、『メリー・ポピンズ』より「Supercalifragilisticexpialidocious(スーパーカリフラジリスティックエクスピアリドーシャス)」という意外な選曲。まるで早口言葉のような難解な魔法の言葉に、どんどん上がっていくテンポと会場のテンション。さらにタップダンスの披露もあり、遊び心満点の心躍る一曲となった。

2021年で芸能生活30周年を迎える新納は、白いファーショールを肩にかけて登場。その佇まいから、これから歌われる楽曲が何か察知したファンも多いのでは。新納は20年以上にわたって出演を続けている『ラ・カージュ・オ・フォール』から「ICH BIN WAS ICH BIN(ありのままの私)」を美しく、情熱的に歌い上げた。

ビッグナンバーはまだまだ続く。咲妃は『ウィキッド』より「魔法使いと私」を披露。世の中の不安を吹き飛ばすような力強い歌声を会場中に響かせる。未来への希望溢れる歌詞を、説得力あるパフォーマンスで聴かせてくれた。

明治座2021年1月『NEW YEAR'S Dream』舞台写真(左から渡辺大輔、平野綾、吉野圭吾、北翔海莉、玉野和紀、大野拓朗、新納慎也、咲妃みゆ)

明治座2021年1月『NEW YEAR'S Dream』舞台写真(左から渡辺大輔、平野綾、吉野圭吾、北翔海莉、玉野和紀、大野拓朗、新納慎也、咲妃みゆ)

颯爽とステージに現れた渡辺が歌ったのは、『モーツァルト!』から「僕こそ音楽」。赤い薔薇一輪を手に、低音から高音まで安定感のある歌唱を披露して客席を魅了した。

続いて平野は同じく『モーツァルト!』より、「ダンスはやめられない」を披露。先ほど渡辺が手にしていた薔薇の花を拾い上げると、舞台の下手から上手までをフルに使い、感情を爆発させたパワフルな歌唱で圧倒した。
1幕のミュージカルソングコーナーの締めを飾ったのは、ベテランの吉野。「キャバレー」(『キャバレー』より)を妖しく艷やかに歌い踊り、劇場を支配する。一瞬にして明治座が“キャバレー吉野”になってしまう様は流石としか言いようがない。

あまりに充実したビッグナンバーの数々に、ミュージカルファンならこれだけでお腹いっぱいになるのではないだろうか。しかし、それだけでは終わらないのが玉野ワールド。つい先ほどまでミュージカルスターとして輝いていたキャストたちが、ガラっと雰囲気を変え、J-POPや昭和歌謡を織り交ぜたショートコメディを展開する。

純喫茶Dreamのマスター、そこへバイト面接に訪れるワケアリな女性、にんじんを手に現れるテンション高めの八百屋、一見微笑ましいけれど心がすれ違っているカップル、リーゼントに学ラン姿のツッパリヤンキー、突如現れるベビーシッターなどなど……「え、あの人がこんな役を!?」というサプライズ満載のスケッチ・コメディ・コーナーだ。ミュージカルでは決して見ることができない新たな一面に驚かされること間違いない。

明治座2021年1月『NEW YEAR'S Dream』舞台写真(左から渡辺大輔、吉野圭吾、玉野和紀、大野拓朗、新納慎也、上段左から平野綾、北翔海莉、咲妃みゆ)

明治座2021年1月『NEW YEAR'S Dream』舞台写真(左から渡辺大輔、吉野圭吾、玉野和紀、大野拓朗、新納慎也、上段左から平野綾、北翔海莉、咲妃みゆ)

2幕はオリジナル・ショート・ミュージカル『浦島拓朗』から始まった。

とある浜辺で、いじめっ子(玉野・渡辺)がやたらと気の強い亀(吉野)をいじめているところへ浦島拓朗(大野)が現れ、亀を助ける。その御礼にと、亀が浦島拓朗を連れて行ったのは海の中の竜宮城、ではなく、陸にあるキャバレー竜宮城だった。そこには胡散臭さ満載のボーイ(新納)やウエイター(渡辺)、そして乙姫シスターズ(咲妃・平野・北翔)が待ち構えていて……!

日本人ならば誰もが知る昔話をベースに、J-POPや昭和歌謡をギュッと詰め込んだ非常にテンポのよいコメディ作品に仕上がっていた。こういうご時世だからこそ、いい意味で肩の力が抜けて笑える作品が必要なのだということが実感できる。

大いに笑ってリラックスしきったところで、再びミュージカルソングコーナーへと移り変わる。ここで、日本屈指のタップダンサーでもある玉野が『クレイジー・フォー・ユー』の「SLAP THAT BASS」の曲中で惜しみなくタップを披露。玉野がタップダンスを始めた途端に誰もがその華麗な足さばきに息を呑み、彼の足元に目が釘付けになるのがわかる。その後は『レ・ミゼラブル』、『RENT/レント』、『CHICAGO』などから珠玉のミュージカルソングが披露された。

2幕中盤にはトークコーナーも設けられている。玉野が中心となって新春ならではの話題が繰り広げられる中、渡辺の話を嬉しそうにイジる大野の姿が何度も見られ、『ロミオとジュリエット』で共演していた2人の仲の良さが伺えた。8名でのトークのあとは、北翔、咲妃、平野、大野、渡辺の5名がステージ上に残り、これまでの自身の出演作の思い出を振り返った。北翔と咲妃は宝塚時代に共演したオペレッタ『メリー・ウィドウ』、平野は初のミュージカル主演作となった『レディ・ベス』、大野と渡辺はそれぞれロミオ役とティボルト役で共演した『ロミオとジュリエット』を挙げ、これらの作品からそれぞれ楽曲を披露した。

明治座2021年1月『NEW YEAR'S Dream』舞台写真(左から、新納慎也、咲妃みゆ、北翔海莉、平野綾、吉野圭吾、階段左から大野拓朗、渡辺大輔)

明治座2021年1月『NEW YEAR'S Dream』舞台写真(左から、新納慎也、咲妃みゆ、北翔海莉、平野綾、吉野圭吾、階段左から大野拓朗、渡辺大輔)

上演時間は合計約2時間40分(1幕60分、休憩30分、2幕70分)。2021年1月11日(月・祝)まで明治座にて上演される。王道ミュージカルの楽曲はもちろん、J-POPから昭和歌謡、そしてコメディまで。ワンフレーズだけの短い楽曲も含めると全44曲あるというから驚きだ。芸達者なキャスト陣だからこそ実現できる、バラエティに富んだ濃密なコンサートとなった。なお、1月11日(月・祝)13時開演の千秋楽公演ではライブ配信(アーカイブなし)も行われる。
『NEW YEAR'S Dream』は、今こそ私たちに必要な笑いとエンターテインメントを与えてくれるコンサートだ。2021年は多くの人が笑って過ごせる年になりますように。そう願わずにはいられない。

取材・文=松村 蘭(らんねえ)