ギターをこよなく愛するギタリスト・野村義男が、沢山の仲間を呼んでおなかいっぱいの内容でお送りする対談形式のコラム。おかわり11杯目は2019年にリリースされたLiSA「紅蓮華」の作曲を手掛け、一躍注目を集めたシンガーソングライター兼作詞作曲家の草野華余子が登場。

野村:今回のゲストはシンガーソングライターの草野華余子さんに来ていただきました。初めまして!

草野:初めまして、宜しくお願いします!

野村:肩書はシンガーソングライターで良いんですか?

草野:元々はシンガーソングライター時々作詞作曲家っていう形を謡っていたんですけど、今はそれぞれが100%の活動で、完全に生活の200%が音楽なので。

野村:うんうん。

草野:だからもうシンガーソングライター兼、作詞作曲家という二足の草鞋でやらせて頂いてます。

野村: 1番いいパターンですよね、音楽にどっぷりな感じするじゃないですか。

草野:そうですね、プライベートはほぼないって感じにはなってます(笑)。

野村:え、プライベートって必要?

草野:2020年は睡眠時間すらなかったので、もういらないなとは思っています。おかげさまで書かせていただいた楽曲が、世の中で沢山聴いていただける状況になった時に、今の事務所が決まって、色々と発注いただいてみたいに重なりまして。

野村:良いっすねぇ!

草野:いや全然良くないですよ!(笑) 自分のアルバムで12曲作ろうと思ったら楽曲提供が10曲被ったりとかして。

野村:少し分けてください(笑)。

草野:いやいやいや、とんでもないです!

野村:じゃあアシスタントでどうですか? ちょっとだけギター弾けます!

草野:家によっちゃんがいるのは緊張して無理です!(笑)

野村:あれだよね『鬼滅の刃』の曲とか。

草野:はい、「紅蓮華」という曲の作曲をさせていただいてます。

野村:やっぱり色んなもの変わりましたか?

草野:言い方がアレですけど、孤独というか、制作の比重が多くなって一人の時間がすごく増えたんですね。

野村:それはコロナとか関係なく?

草野:関係なくですね。まぁ毎年50本から100本くらいやってたライヴがなくなったのは結構大きいんですけど。

野村:凄いっすね、多い!

草野:そんなことない(笑)。

野村:多いって!

草野:もともと私自身路上でのストリートライヴとかで活動しているアーティストだったので、ライヴでお客さんと喋ったり、ライヴ会場で色んなアーティストを拝見して、そこで入ってくるもので楽曲を書いたりしてたので。

野村:うん。

草野:1曲ヒット作を手掛けさせていただいたことで、本当に自分が音楽で生きて行く覚悟があるのかっていうのを問われたような1年というか。体力的にも辛い瞬間が昨年は凄く多かった気がします。

草野華余子

草野華余子

野村:どうやって乗り越えたんですか?

草野:寝ない。本当に泣きながら曲を書いてるような瞬間もあったんですけど。

野村:それは体がもたないし、アイデアも出ないよ。

草野:やっぱりだんだん神経が立ってくるとピリピリしてくるし。それで人に優しくできないことで自己嫌悪したりとか。

野村:わかる!

草野:そうなんですよ。フレーズが出てこなかったりするのは自分のせいだったりするんですけどね。昨年は曲を作る上でのスランプは特になかったんですけど、一人で過ごす時間が多過ぎてアレンジの段階で行き詰まったりは何回もあったので、結局そんな時は音楽を聴いて乗り越えたっていうのがありますね。

野村:それは外国のアーティストとか?

草野:そうです、昨年は結構UKの名盤が多かったので。打ち込みサウンドが凄く好きなので、デュア・リパとかマイリー・サイラスとか。あと、アダム・ランバートも!

野村:アダム・ランバートはクイーンでまたドッカンきちゃったもんね。

草野:新しいアルバムがすっごく良くて! 制作中はその3枚をずっと聴いてましたね。

野村:マイケル・ブーブレとか聴けばいいのに。

草野:あ、知ってるんですけど聴いたことないので、是非教えてください!

野村:もう凄く良いよ。僕マイケル・ブーブレって人の「ハリウッド」って曲が好きで、この曲かけたらもう何もしなくてもいいやって思っちゃうくらい素敵な曲なのよ。

草野:もう帰り道で聴きます!

野村:是非!(笑) じゃあ、ライブがなくなったのは辛かったかもしれないけど、自分の活動が前に進むという意味ではあんまりコロナ禍的な影響はなかったんだね。

草野:楽曲提供という作家仕事をやらせていただいてるおかげで感覚的にはあまり。さすがに3月や4月は一旦動きが止まってしまったんですが、5月くらいにこのままじゃ駄目だってなって、ギターとか含め機材に先行投資したり、制作環境を整えたりしましたね。

野村:うん。

草野:あと、5月以降はライヴというものはないけど、海外のアーティストさんが配信を沢山やってくれてたのもあって、毎日YouTubeにへばりついてました(笑)。

野村:ちゃんと勉強するという姿勢がえらいですね。

草野:いや全然!勉強というより、1番好きなことが仕事で娯楽というか。朝起きて、テイラースウィフトの新曲が出てるのを見つけて、コロナ禍でも2枚もアルバム出してるんだとか、最近のミックスはLowが減ってきてるなとか、朝一からリスニングのスピーカーをつけて聴きたいんです。iTunesのランキングとかを1位から100位まで聴いてみたり。

野村:それはやっぱ、自分が曲を作るってことに対してプラスになる?

草野:なりますね、影響というと難しいですけど。私もともと、高橋真梨子さんWinkさん、安全地帯さんとか歌謡曲がとにかく好きで、それこそ野村さんが一緒にやられてる田村直美さんもめちゃくちゃ聴いてたんです。

野村:あら。

草野:そういう歌謡曲的なメロディのものに、バックトラックはしっかり洋楽というのをミクスチャーするっていうのが私のテーマなので。新しいものは聴くけど、それに固執したり新しいことをやろうとかじゃなく、自分から出てくるものに海外のエッセンスを足して混ぜるっていう。

野村義男 / 草野華余子

野村義男 / 草野華余子

野村:今回のアルバムを聴かせてもらったんですけど、確実に僕は作れない曲でしたね、全曲。

草野:聴いて下さったんですね、ありがとうございます!

野村:いやいや、もちろん。本当言っちゃうと、うちの娘が大好き系の曲っていう感じが100%出てる。時代ってそうなんだな、もう曲なんか作るのやめよって思ったもん。

草野:いやいやいや、とんでもないです。勘弁して下さい!

野村:もう弾くだけで精いっぱいだとか思って。あれだよね、時代というか空気というか、そういったものを自分から放出するのが上手なんだなって。

草野:でも今回のアルバムを作る時に1番聴いてたのは、CHAGE and ASKAさんだったりとかで。結局80年代後半から95年ぐらいまでの音楽バブルと言われていた時代の楽曲が、どうしても1番グッとくるんですよね。

野村:へ〜。

草野:だから今回は結構歌詞の内容的にその時代の楽曲の歌詞をちょっともじって、各曲のエッセンスとして使ったりしてて。

野村:全部の曲にすごくキャッチーなところが必ずあるっていうのが、本当に素晴らしいと思いました。

草野:ああ嬉しいです、ありがとうございます。座右の銘にしてるのが「人生一曲の捨て曲もなし」なので、アルバム曲用に書いて下さいとか、カップリング用だから力を抜いていいとかを、何を言うとるねん!とずっと思ってたんですね(笑)。

野村:ああ、それ悲しいですよね。

草野:なので、毎回ベストアルバムだからって。その時に1番良いと思った10曲ないし12曲を入れてるので。

野村:でもベストなんて、聴いてる人が勝手にチョイスしてベスト盤作ればいいわけだからさ。そういうその考え方も間違ってないと思うし。

草野:とは言え、好きなアーティストじゃないアーティストのベスト盤はやっぱり聴くんですよね。どういうのがシングルなんだろうってその導入として。

野村:うん、うん。

草野:でも自分のファンの方に向けては、これはアルバム用の曲なんでっていう楽曲の作り方はできるだけせずに、愚直にやりたいなって思ってます。

野村:そういうストレートさが、皆が受け入れ態勢がある曲を作れるって事ですよね。僕なんか置いていっちゃいますからね、何しに来たんだよお前ら!みたいな(笑)。

草野:いや、そうなりたいなとは思ってたんですけど。私、結構気が弱いっていうか、自己肯定感がもともとあんまり高くなかったので。

野村:優しいんだよね、きっとね。僕は飴と鞭大好きな人間だから、ライヴとかでもアンコールは残業だから帰れよ!って(笑)。

草野:ドS!(笑) わたし浜崎あゆみさんのコンサートに10年くらい毎年行き続けてた時期があったんですよ。

野村:凄い、僕20年くらい行きましたよ!(笑)

草野:それはもうハイテンションで「よっちゃーん!」って叫んでました。

野村:いやいやいや(笑)。

草野:どこのプロジェクトにいてもムードメーカーとしての、役割を担われてて。

野村:たぶん、どんなユニット組んでもグループ作っても、都合のいい男なんだよ。あたしは。

草野:一人いると明るくなるみたいな(笑)。

野村:あたしはやつらにとって、どこでも都合のいい男。

草野:豪華な面々がやつら(笑)。『LOVE LOVE あいしてる』の番組ホストバンドで弾いてらっしゃった時が最初で、好きなアーティストさんが沢山出演していたというのもあるのですが、毎回アレンジして生演奏で盛り上げてるのが面白くて毎週観てました。

野村:まだ生演奏が生きてる時代だったからなぁ(笑)。

草野:言っちゃってる(笑)。

野村:えーっとね、その頃は近藤真彦とか、ribbon、chee’sとかのバンドサポートをやってた時代かな。

草野:そんなお方とまさかお話させていただけるとは、という感覚が未だに拭えないですけど。

野村:いやいやいや、そんなことないでしょ。単に長く居ちゃっただけの人なんだよ!

草野:最近というかこのアルバムでも結構書かせていただいた時に感じたことがありまして。何か大きな功績を残された方って、たまたまやってきたって仰る方が多いんですけど、やっぱり続けられないのが普通なんだなって思いました。

野村:それは続けようとするからだよ、だってそれしか出来ないんだもん。それだけじゃないかな。

草野:ふふふ、私もです。

野村:僕は休みが必要じゃない人なんで、コロナで休まなくいけなくなっちゃった時にちょっとバランス悪くなったもんね。それまでは月に1日あったぐらいだったのに。月に2日とかあると、このままお払い箱かなって不安になっちゃう人なの。

草野:確かに。たまに昔の知り合いとか、ファンの人とかから、華余子さんは沢山曲聴かれたからもういいでしょって書かれてたりするのを見かけるんですけど、こっちは毎日不安なんですよね。

野村:どんなにバァーって波に乗っていようが、不安な人は絶対不安だと思うから。やっぱ、やり続けなきゃいけないんだよ。走り続けなきゃ。

草野:うんうん。きっとそうなんですよね。

野村義男

野村義男

野村:自分の中の作りたいって意欲がちゃんと続いたじゃない。それが素晴らしいなと思って。

草野:結構ギリギリな瞬間はあったんですけど。

野村:僕やめちゃってたからさ、ライヴもレコーディングもないから曲を覚える必要もなくて。

草野:パタッと止まったんですか? 気持ち的にですか?

野村:40何年で初めて。なんかしなきゃいけないなと思って、プラモデルしようになっちゃった。

草野:あははは (笑)。でも、伝染病とかが流行った後に、芸術とか産業が発達するっていうのは、まぁ歴史上で何度も繰り返されてきていることなので。前はペストの後かな?

野村:100年くらい前かな。

草野:そうです。そのあとにフランスやイタリアの辺りで、芸術家が沢山生まれてきて、近代芸術が盛んになった流れがあるっていうのを、世界史が好きだから調べてたんですけど。

野村:うんうん。

草野:やっぱり全世界的にコロナの後に出たアルバムで、米津玄師さんとかもそうですが、かなりの名盤が生まれているのが、大きな刺激になりまして。

野村:じゃあこの後にまだ、音楽に限らず芸術がドカーン!って飛び出てくるかもしれないっていう感じだよね。

草野:っていう予感は凄くします。これ、作んないと死んじゃうんじゃないか、生死を問われるというギリッギリの崖っぷちになってやっと生み出すみたいなものが、このコロナ禍であるんじゃないかなと。

野村:今回のアルバムもそういう感じありましたか?

草野:かなりありましたね。書く内容が180度変わったというか、自分に対して真面目で厳しいタイプだったんですけど。あ、もともとのルーズな部分をなんとか制限して。なんとか社会に、適応できるように頑張ろうとずっとしてきたんですけど(笑)。

野村:うん。

草野:今回はそういう部分を全てとっぱらって、風の吹くままに生きてみたりとか、転がる石のようにっていうタイトルのアルバムなんです。なるべく、あるがままにって。

野村:はいはい。

草野:「Stray Dog Tag」って曲に書いた歌詞なんですけど、「あるがまま Ride on time」とか。とにかく自分がやりたいことを風の吹くまま、気の向くままにやることを許容する、許すっていうテーマでアルバムを作ったんですよ。

野村:2020年12月21日から、地球の周期が変わったの。

草野:知ってます! ふふふ(笑)。

野村:220年周期。前は土の時代で、風の時代になった。

草野:あ、鳥肌立った!(笑)

野村:こっから220年は風の時代なんです。

草野:良かった、やっぱり吹かれた方向に転がっていけってことですね。

野村:それで、みんながどんどん断捨離始めるんだって。飛べるように。

草野:断捨離のきっかけとしてコロナなんて絶対そうじゃないですか。

野村:たぶんあると思うね。僕も相当ギターを手放したし、身の回りのものいっぱい売っちゃったり捨てちゃったりしてるから。

草野:私も縁とか福とか恩とかを捨てきれなくて、断捨離がすごく苦手でした。昔の古い縁で、今は変わってしまった人に対しても愛着が捨てられないとか。で、例えば向こうはすごくグレたり悪くなっちゃってても、私は昔の思い出を引きずったままでアプローチしてしまうとか。

野村:うん。

草野:そういう人たちとの縁を自然に、もう言い方は悪いけど切ったじゃなくて手放す。コロナの影響で人に会う時間が限られたおかげで、本当に会いたい人、本当に聴きたい音楽、本当に食べたいもの、本当に着たい服、本当に話したいことがすごく明確になったのかな。2020年は我慢の、もうそれこそ土というか辛抱の年だったんですけど。

野村:1番最後だったからきっと重かったんだと思うよ。

草野:12月にそれがシュッと抜けたのを感じました。

野村:だから正しかったんじゃないですか。正しい風に、ちゃんと地球に乗ってるんだよ。

草野:それ超嬉しい。勇気が出る言葉いただきました。

野村: 1月27日『Life is like a rolling stone』リリースということで、皆さん是非聴いていただきたいと思います。あと言い残してることとかありますか?

草野:え……。

野村:アルバム買え!とか?

草野:いやいや(笑)。テレビで拝見していた、よっちゃんにお会いできて超最高でした!

野村:そんなことはない!(笑)

草野:最後の一言が一般人的で申し訳ないです。でも、インタビューの前にも沢山ギターのお話が出来て幸せでした。

野村:もうすっごい今自慢したいギターあるもん。

草野:ホントですか? じゃあ私も!

野村:じゃあそれは終わってからで(笑)。ということで、本日はシンガーソングライターの草野華余子さんに来ていただきました。ありがとうございました!

草野:ありがとうございました!

撮影=大橋祐希

野村義男 / 草野華余子

野村義男 / 草野華余子