おうちをシアトリカルなエンタメ空間に! いま、自宅で鑑賞できる演劇・ミュージカル・ダンス・クラシック音楽の映像作品の中から、演劇関係者が激オシする「My Favorite 舞台映像」の3選をお届けします。(SPICE編集部)

 

ホーム・シアトリカル・ホーム〜自宅カンゲキ1-2-3  [vol.44] <宝塚編>
2月の「TAKARAZUKA SKY STAGE」​お勧め3作品の見どころ紹介​ by 藤本真由

【1】『愛聖女(サントダムール)−Sainte♡d’Amour−』('18年月組・バウ・千秋楽)
【2】『復活−恋が終わり、愛が残った−』(’12年花組・東京・千秋楽)
【3】『ポーの一族』('18年花組・宝塚)

 

宝塚歌劇専門チャンネル「TAKARAZUKA SKY STAGE」の2021年2月放送のラインアップより、見逃せない3作品の見どころをご紹介!

 

【1】『愛聖女(サントダムール)−Sainte♡d’Amour−』('18年月組・バウ・千秋楽)

『愛聖女(サントダムール)−Sainte♡d’Amour−』('18年月組・バウ・千秋楽)  ©宝塚歌劇団 ©宝塚クリエイティブアーツ

『愛聖女(サントダムール)−Sainte♡d’Amour−』('18年月組・バウ・千秋楽)  ©宝塚歌劇団 ©宝塚クリエイティブアーツ

 2018年11月、宝塚歌劇団を退団した愛希れいか。6年7カ月にわたって月組トップ娘役を務めた彼女が、娘役としては異例のバウホール公演初主演を果たしたのが、キューティーステージ『愛聖女(サントダムール)−Sainte♡d’Amour−』である。“キューティーステージ”なるぶっとんだ角書、そしてタイトルにちゃっかり挟まっている「♡」からお察しの通り、作・演出は齋藤吉正。トップ娘役がバウホール公演に主演したのは元雪組トップ娘役月影瞳の『Over The Moon』(2001)以来、17年ぶりである。今回、千秋楽の模様が放送されるが、このころ日本列島は豪雨に見舞われ、筆者も、通常なら梅田から宝塚まで阪急宝塚線で30分あまりで着くところを、何とか動いているバスを乗り継ぎ4時間半かけてたどり着いた思い出がある。

 マッシュルーム・カットもキューティーに愛希れいかが演じるのは、15世紀のフランスを救った聖女ジャンヌ・ダルク。彼女は、タイムマシン開発中のドクター・ジャンヌ(白雪さち花)の実験に巻き込まれ、21世紀にタイムスリップしてしまう。そしてドクター・ジャンヌも15世紀にタイムスリップし、互いに珍騒動を繰り広げて――。現代に迷い込んだジャンヌ・ダルクは、“スタバ”ならぬ“スマダ(スマイル・ダック・カンパニー)”でバイトして自らが狩ってきたウサギのメニューを提供したり、天衣無縫な言動を見せる。しかしながら、歴史上、ジャンヌ・ダルクの運命は決まっている。そして、ドクター・ジャンヌを救うべく、彼女がとった行動は――。齋藤作品らしく、愛希をはじめとする月組娘役陣のはつらつとした活躍が楽しめる作品である。ちなみに愛希は退団後、『傭兵ピエール−ジャンヌ・ダルクの恋人−』(2003)でやはりジャンヌ・ダルク役を演じた花總まりと、『エリザベート』(2019)タイトルロールで華麗な競演を果たしている。

放送日時:2021年2月3日(24:00)、15日(14:30)

 

【2】『復活−恋が終わり、愛が残った−』(’12年花組・東京・千秋楽)

『復活−恋が終わり、愛が残った−』(’12年花組・東京・千秋楽)  ©宝塚歌劇団 ©宝塚クリエイティブアーツ

『復活−恋が終わり、愛が残った−』(’12年花組・東京・千秋楽)  ©宝塚歌劇団 ©宝塚クリエイティブアーツ

 『戦争と平和』『アンナ・カレーニナ』といった作品で名高いロシアの小説家レフ・トルストイ。その彼の代表作の一つである『復活』を舞台化したのが、ミュージカル・プレイ『復活−恋が終わり、愛が残った−』(レビュー・ファンタシーク『カノン−Our Melody−』と2本立てで上演)である。宝塚歌劇では1962年にも、春日野八千代と那智わたるの出演で、同じ小説を題材とした『カチューシャ物語』を星組にて上演している(作・演出は菊田一夫)。今回の花組公演を手がけたのは石田昌也。コミカルで軽妙な作風を得意としているが、今作においては文豪の重厚な長編小説に真正面から向き合い、凍てつくロシアの大地を寒い風が吹き抜けていくような雰囲気たっぷりの舞台に仕上げた。――19世紀末の帝政ロシア。青年貴族ネフリュードフ(蘭寿とむ)は使用人の娘カチューシャ(蘭乃はな)と恋に落ちるが、その恋をきっかけに、カチューシャは身を落としていくこととなる。そんなカチューシャと再会したネフリュードフは、彼女を救うために奔走し――。トップ娘役としては珍しい役どころを、蘭乃はなが体当たりで熱演。シリアスなムードの中、ネフリュードフの親友であるシェンボック役を演じた壮一帆が見せる軽妙な茶目っ気が清涼剤として効いている。

 ちなみに、宝塚歌劇が誕生した1914年(大正3年)、島村抱月率いる芸術座がこの『復活』を上演、ヒロイン・カチューシャを演じた松井須磨子が劇中「♪カチューシャかわいや わかれのつらさ」と歌う「カチューシャの唄」(作詞は島村抱月と相馬御風、作曲は中山晋平)共々大ヒットを記録している。トルストイはその4年前に没したばかりだった。宝塚では他にも、『戦争と平和』(1988−1989、作・演出:植田紳爾)、『Anna Karenina』(2001年、2008年、2019年、作・演出:植田景子)と、彼の作品を舞台化してきている。

放送日時:2021年2月24日(24:00)、28日(14:30)

 

『ポーの一族』('18年花組・宝塚)

『ポーの一族』('18年花組・宝塚)    原作/萩尾 望都「ポーの一族」(小学館フラワーコミックス)  ©宝塚歌劇団 ©宝塚クリエイティブアーツ

『ポーの一族』('18年花組・宝塚)  原作/萩尾 望都「ポーの一族」(小学館フラワーコミックス) ©宝塚歌劇団 ©宝塚クリエイティブアーツ

 永遠に生きる宿命を背負った吸血鬼一族を描く、萩尾望都の傑作少女漫画『ポーの一族』。その作品をいつかミュージカル化したいと願い、1977年に宝塚歌劇団に入団したのが小池修一郎である。1985年、彼は萩尾望都その人と出会い、いつか舞台化させて欲しいと申し出るが、それから30年以上の年月が流れた後、宝塚の舞台に遂にミュージカル・ゴシック『ポーの一族』が登場することとなった――原作者自身、舞台化を待ち詫びていたそうな。その間、小池修一郎は、『蒼いくちづけ』(1987年、2008年)、『薔薇の封印−バンパイア・レクイエム−』(2003年)等でも吸血鬼を取り上げてきている。

 時を超えて生きる主人公のエドガーを演じるのは、骨太なフェアリー・タイプの男役として人気を博した花組トップスター明日海りお。退団作『A Fairy Tale−青い薔薇の精−』(2019)でも青い薔薇の精を演じた。原作漫画の美を宝塚歌劇の方法論でもって余すことなく描き出し、花組生の適材適所の配役も楽しめたこの舞台。エドガーは明日海の当たり役となり、彼女は女優転身後第一作にも同じ役を選択、こちらの舞台は2月3日から17日まで東京国際フォーラムホールCにて上演される。

 原作とは異なり、心霊主義の世界で名高い実在の人物ブラヴァツキー夫人をオリジナル・キャラクターとして登場させ、ポーの一族と絡ませたところに、小池修一郎の潤色の妙が光る。心霊主義とは19世紀後半のイギリスを席巻した精神運動で、例えば『シャーロック・ホームズの冒険』で名高い作家のアーサー・コナン・ドイルもその信奉者の一人。産業革命の発展により近代化が進む一方で、心霊主義の諸現象に興味を抱く人々がいた、そんな時代背景を雄弁に物語る趣向となっている。物語の展開上も大きな役割を果たすこのブラヴァツキー夫人を演じて飄々とした味わいを醸し出す芽吹幸奈の演技をご堪能あれ。

放送日時:2021年2月21日(21:00)、25日(19:00)

 

文=藤本真由(舞台評論家)