現在、多くの美術館や博物館の各施設が、最新のデジタル技術を駆使したVRミュージアムや、YouTubeチャンネルで学芸員(研究員)のギャラリートークを配信するなど、オンラインを活用したコンテンツにも力を入れています。直接会場に足を運べなくても、PCやスマートフォンから作品鑑賞することで、学びを得られる機会が増えてきています。
今回紹介するのは、恐竜の全身骨格を360度さまざまな角度から閲覧できるVR特設サイト『ディノ・ネット デジタル恐竜展示室』。国内の博物館が所有する恐竜化石の3Dデータを計測し、細部まで再現された恐竜骨格のデジタルモデルを、手元で自由に動かして鑑賞できるVRコンテンツです。展示室では見られない貴重なアングルから観察できたり、博物館の研究者が監修したアニメーションでは “動く恐竜骨格” を楽しめたり。オンラインならではのVR展示を楽しめる本コンテンツの魅力をお伝えします。

ディノ・ネット デジタル恐竜展示室

ディノ・ネット デジタル恐竜展示室

デジタル計測したデータをもとに、化石標本をVR化

2021年1月19日に特設サイトがオープンした『ディノ・ネット デジタル恐竜展示室』は、国立科学博物館と凸版印刷株式会社の共同開発によって実現したもの。2013年より両社が取り組んできたVRコンテンツ『V×Rダイナソー(R)』では、国立科学博物館が所蔵する骨格標本の立体形状を、デジタル計測したデータを活用してきました。今回は新たに、北海道大学総合博物館、群馬県立自然史博物館、むかわ町穂別博物館が所蔵する恐竜化石の3Dデータも計測し、デジタルアーカイブデータを更新。本コンテンツでは、恐竜7種(9体)、魚竜、ワニ、哺乳類の化石標本を観察することができます。

アウロサウルスの計測風景 (写真=国立科学博物館・凸版印刷株式会社提供)

アウロサウルスの計測風景 (写真=国立科学博物館・凸版印刷株式会社提供)

総合監修者の真鍋真氏(国立科学博物館 標本資料センター・コレクションディレクター(センター長))は「恐竜を含め、生物に対する人間の興味に県境や国境が無いように、この取り組みは国境をも越えるものです」と、サイト内にてコメントしています。

アロサウルス全身骨格化石デジタルデータ (写真=国立科学博物館・凸版印刷株式会社提供)

アロサウルス全身骨格化石デジタルデータ (写真=国立科学博物館・凸版印刷株式会社提供)

ティラノサウルスやトリケラトプスといった、映画で何度も見たことのある有名な恐竜から、アロサウルスやパキケファロサウルスなど、名前の響きだけでもワクワクするような恐竜まで。自分の手元で恐竜骨格のデジタルモデルを自由自在に動かしていると、幼い頃に図鑑を読んでいた楽しさを思い出すようです。

ティラノサウルスとトリケラトプス (写真=国立科学博物館・凸版印刷株式会社提供)

ティラノサウルスとトリケラトプス (写真=国立科学博物館・凸版印刷株式会社提供)

恐竜の全身骨格を360度堪能!

サイト内のデジタルアーカイブでは、現在、計13体のデジタルモデルが公開中。気になる恐竜を選んでクリックすると、3Dモデルが読み込まれて画面上に恐竜骨格が表示されます。PCから鑑賞する際には、全画面表示がオススメ。手のひらマークのポインタを動かして、さまざまな角度からモデルを動かしてみると、思いがけないアングルで、見たこともない恐竜の姿を発見できます。

トリケラトプスの全身骨格を真下から眺める (ホームページより引用:国立科学博物館・凸版印刷株式会社)

トリケラトプスの全身骨格を真下から眺める (ホームページより引用:国立科学博物館・凸版印刷株式会社)

真下から眺めたり、恐竜の体の中を探索するように内側からのぞいて見たり。モデルを拡大すると、かなりリアルな質感も伝わります。

パキケファロサウルスのデジタルモデルは、質感がリアル! (ホームページより引用:国立科学博物館)

パキケファロサウルスのデジタルモデルは、質感がリアル! (ホームページより引用:国立科学博物館)

筆者が個人的に気に入ったのは、デジタルデータの影。思わずスケッチしたくなるような、恐竜骨格の神秘的な造形に惚れ惚れします。

ニッポノサウルスはデジタルデータの影も美しい (ホームページより引用:北海道大学総合博物館)

ニッポノサウルスはデジタルデータの影も美しい (ホームページより引用:北海道大学総合博物館)

骨格の特徴を学べる注釈つきモデル

デジタルモデルによっては博物館の研究者による注釈が設定されており、骨格上の番号をクリック(またはタップ)すると、恐竜骨格の特徴が表示されます。「恐竜の特徴」、「獣脚類の特徴」、「ティラノサウルス類の特徴」など骨格の特徴も細かく分類されていて、恐竜に関する知識が深まるはず。

ステノプテリギウスのデジタルモデル(注釈つき) (ホームページより引用:群馬県立自然史博物館)

ステノプテリギウスのデジタルモデル(注釈つき) (ホームページより引用:群馬県立自然史博物館)

たとえば、カマラサウルス亜成体(群馬県立自然史博物館所蔵)のモデルに表示される「マクロナリア類の特徴」は、以下のように記載されていました。

「目の穴よりも鼻の穴の方が大きい。それほど顕著ではないのは、この標本が若い個体だから、相対的に目が大きいのかもしれない」

カマラサウルス亜成体の特徴 (ホームページより引用:群馬県立自然史博物館 )

カマラサウルス亜成体の特徴 (ホームページより引用:群馬県立自然史博物館 )

思わず「へえ〜!」とつぶやくような解説もあるので、ぜひ色々な部位の注釈をクリックしてみてください。

動く恐竜骨格のアニメーションは必見!

トリケラトプス、ティラノサウルス、ティラノサウルス幼体の3体には、研究者が監修したアニメーションが設定されています。アニメーションにはいくつかパターンがあり、歩行姿や前足で地面を掻くような動作は、どこか動物的で愛らしくもあります。

ティラノサウルスのアニメーションは迫力満点! (ホームページより引用:国立科学博物館・凸版印刷株式会社)

ティラノサウルスのアニメーションは迫力満点! (ホームページより引用:国立科学博物館・凸版印刷株式会社)

咆哮が聞こえてくるような、迫力のある動きが見られるティラノサウルスのアニメーションは必見。個人的なオススメは、ティラノサウルス幼体(国立科学博物館所蔵)の歩行姿。本デジタルモデルは、まだ発見されていないティラノサウルス幼体の全身骨格を、計測データをもとに仮説的に推定するという、斬新な試みで制作されたとのこと。PC画面内で歩いている小さなティラノサウルスの姿は、いつまでも眺めていたくなるような可愛らしさがあります。

ティラノサウルス幼体の歩行アニメーションはクセになる可愛さ (ホームページより引用:国立科学博物館・凸版印刷株式会社)

ティラノサウルス幼体の歩行アニメーションはクセになる可愛さ (ホームページより引用:国立科学博物館・凸版印刷株式会社)

博物館や展示室を360度楽しめるバーチャルツアーも

特設サイトでは、国立科学博物館(地球館地下1階)、むかわ町穂別博物館、北海道大学総合博物館(恐竜展示室)、群馬県立自然史博物館(地球の時代)の4館の施設や展示室が、オンライン上で見学可能。誰もいない博物館のフロアを階層ごとにじっくり見られるので、貸切気分で鑑賞を楽しめます。

国立科学博物館(地球館地下1階) (ホームページより引用)

国立科学博物館(地球館地下1階) (ホームページより引用)

恐竜の足跡が床面に散らばる「むかわ町穂別博物館」や、巨大ワニの化石が展示されている「北海道大学総合博物館」など、各施設それぞれが個性的な魅力で溢れています。ぜひバーチャルツアーで体感してください。

むかわ町穂別博物館の床面には恐竜の足跡が (ホームページより引用)

むかわ町穂別博物館の床面には恐竜の足跡が (ホームページより引用)

さらに、恐竜骨格のVRコンテンツを活用したオンライン講座も行っています(全4回、有料配信)。特設サイトを閲覧して恐竜の面白さに触れたくなった方は、ぜひオンライン講座で当コンテンツの魅力をより一層楽しんでみては。

文=田中未来 画像=オフィシャル提供、ホームページ引用