2021年4月〜6月、東京・大阪・福岡にて、稲垣吾郎主演による舞台『サンソン−ルイ16世の首を刎ねた男−』が上演されることが決定した。

1月に舞台『No.9−不滅の旋律−』で、3度目のベートーヴェン役を演じた稲垣吾郎。人々の記憶に“稲垣吾郎ベートーヴェン”が定着したかと思う間もなく、今回、新たな役に挑戦する。それは18世紀パリに実在した死刑執行人シャルル=アンリ・サンソン。パリで4代目の死刑執行人として激動のフランス革命期を生きた人物で、実話をベースに物語が描かれる。

稲垣が演じるシャルル=アンリ・サンソンは、熱心なカトリック教徒であり「人間の生死を決められるのは神だけではないのか」、「死刑制度はなくさなければならない」と自問自答しつつ、自らの職務をまっとうしていた。世間からは忌み嫌われていたが、内心は完全なる死刑廃止論者で、当時、死刑は貴族なら斬首、一般庶民なら絞首というように、身分によって処刑の仕方が異なっていたが、サンソンは平等思想の観点からも身分の差が苦痛の差にならないよう、「誰にでも平等に苦痛を感じさせない死を」とギロチン(断頭台)の発明に一役買った人物でもある。その後、ギロチンの発明により処刑のスピードが上がり、サンソンは世界で2番目、総計2700名もの死刑を執行することになった。
シャルル=アンリ・サンソンは医師でもあったため、死刑執行人という運命を生きる彼の内面には常に「葛藤」がうごめいていた。冷静沈着さの奥底で、人間の存在の生死にまつわるその「葛藤」を稲垣が全身全霊で表現する。

そして、サンソンを取り囲む魅力的な人物を演じる出演者も決定した。フランス革命の中心とも言うべきルイ16世を中村橋之助。歌舞伎界を代表する若手の一人として中村はここ数年、歌舞伎以外の舞台作品に積極的に参加し、伝統と革新を常に思考する俳優として活躍している。
そしてさらなるエネルギッシュな群像劇の担い手として、テレビ、映画で頭角を表す若手たちが集結した。現代の若者の繊細な時代性を表現するとき不可欠な存在として橋本淳、ミュージカル&演劇、2.5次元作品から手応えを積み上げる牧島輝、映画、テレビドラマを中心に演技派の落合モトキ、個性的な役柄をシュールに演じてきた藤原季節、演技力をテレビ、舞台で縦横無尽に発揮する清水葉月。多くの映像、舞台作品に出演する重鎮・田山涼成。そして榎木孝明がシャルルの父親役を務める。

演出を手掛けるのは白井晃、脚本は中島かずき(劇団☆新感線座付作家)、音楽は三宅純。この3人のクリエイティブチームは、英仏の百年戦争を舞台に、運命の奔流に飲み込まれていくヒロインを描き出した1作目の舞台『ジャンヌ・ダルク』(2010初演)、そして楽聖ベートーヴェンの半生をその音楽と共に描き出した2作目の舞台『No.9−不滅の旋律−』(2015年初演)、そして本公演が3作目となる。

史実や実在の人物を基に、大胆な発想の飛躍に加え、一度聴けば脳裏に焼きつく心地よい台詞で劇世界を織り上げる中島は、冷静な死刑執行人シャルル=アンリ・サンソンを時代のスペクタクルとして繊細に描く。そして、パリを拠点に世界各国のアーティストと数多くのコラボレーションを行ってきた三宅は今回、全編書き下ろしによるオリジナルで挑む。夕景とともにパリの街を散歩するのが日課の三宅が、この街の空気を環境を時代の呼吸を、感性の音楽で表現する。音楽にも美術にも造詣の深い白井が、革命の混沌、群衆心理を一流のクリエイターたちと、どう表現するのか、期待が高まるばかりだ。


 
【STORY】
1766年、フランス。その日、パリの高等法院法廷に一人の男が立っていた。
彼の名はシャルル=アンリ・サンソン(稲垣吾郎)。パリで唯一の死刑執行人であり、国の裁きの代行者として“ムッシュー・ド・パリ”と呼ばれる誇り高い男だ。パリで最も忌むべき死刑執行人と知らずに、騙されて一緒に食事をしたと、さる婦人から訴えられた裁判で、シャルルは処刑人という職業の重要性と意義を、自らの誇りを懸けて裁判長や判事、聴衆に説き、弁護人もつかずたった一人で裁判の勝利を手にする。このときには父・バチスト(榎木孝明)も処刑人の名誉を守ったと勝利を祝う。
だが、ルイ15世の死とルイ16世(中村橋之助)の即位により、フランスは大きく揺れはじめ、シャルルの前には次々と罪人が送り込まれてくる。将軍、貴族、平民。日々鬱憤を募らせる大衆にとって、処刑見物は、庶民の娯楽でもあった。
己の内に慈悲の精神を持つシャルルは、処刑の残虐性と罪を裁く職務の間で、自身の仕事の在り方に疑問を募らせていく。
そこに、蹄鉄工の息子ジャン・ルイ(牧島輝)による父親殺し事件が起こる。実際は彼の恋人エレーヌ(清水葉月)への、父親の横恋慕がもつれた事故なのだが。彼を助けるべく友人たち、チェンバロ職人のトビアス(橋本淳)、後に革命家となるサン・ジュスト(藤原季節)らが動き、シャルルはそこでさらに、この国の法律と罰則について深く考えることになる。
さらに若きナポレオン(落合モトキ)、医師のギヨタン(田山涼成)ら時代を動かす人々と出会い、心揺さぶられるシャルルがたどり着く境地とは……。

稲垣吾郎 コメント

2015年から3度上演した舞台『No.9』に続き、白井晃さん、中島かずきさん、三宅純さんの手掛ける作品に出演できることをとても光栄に思います。
『No.9』で演じたベートーヴェン同様、今回も歴史上に実在した人物、シャルル=アンリ・サンソンを演じます。フランス革命期という激動の時代に、“死刑執行人“という生まれた時から決められた決して抗うことのできない運命を受け入れ、悩みながらもその仕事にプライドを持って生きてきた人物です。どれだけの重圧を背負っていたのか、今はまだ計り知れませんが、これから稽古を通して創りあげていくことで新しい自分と出会えることが楽しみでもあります。歴史の中で苦悩したサンソンの気持ちに寄り添い、伝えていきたいと思っています。
このような時代だからこそ、サンソンを通じて厳しい運命の中でも目を背けずに希望を見出す姿を皆様にお届けできれば嬉しいです。

中村橋之助 コメント

白井晃さんの演出、中島かずきさんの脚本でこれだけ大きな舞台に出演できるということで自分自身の熱量が上がっていくのを感じています。そして、子供の頃から「テレビの向こう側の人」として拝見していた稲垣さんとご一緒できることがとても嬉しいです。
僕の演じるルイ16世はフランス革命期に王位を継承し、最後は死罪となる人物。
白井さんの演出で彼の運命がどのように彩られるのか、そしてそれを演じることを楽しみにしています。自分ならではのルイ16世を演じたいと思っています。

演出:白井晃 コメント

死刑執行人でありながら死刑廃止論者だったという孤高の人物を通して、稲垣吾郎さんと共に再び新作を創れる喜びでいっぱいです。18世紀末のパリに生きたシャルル=アンリ・サンソンの苦悩は、激動の社会で生きる今の私たちと結びつくものが多いと感じています。歴史の闇で、あまり知られることのなかった彼の人生は、この先、私たちが向かうべき指針を与えてくれるようにも思います。私たちの心の平穏はどこにあるのか。そんなことに想いを馳せながら作品創りができたらと考えています。

脚本:中島かずき コメント

のちにギロチンと呼ばれることになる断頭台は、実は人道的で人民に平等な死刑を目指して作られた。しかしそれが結果的に恐怖政治の象徴になってしまう。
人のためによかれと思って作られたものが、結果的に人の脅威になる。それは現代にも通じる問題だ。
愚直に誠実にパリの死刑執行人を勤め上げたシャルル=アンリ・サンソンという男の人生をたどることで、人はその皮肉とどう対峙できるかを描くことに挑戦してみたい。

音楽:三宅純 コメント

世襲の『死刑執行人』という宿命、動乱の時代がもたらす過酷な試練、シャルル=アンリ・サンソンをめぐる数奇な史実を知って、僕は震撼した。パリの街が今までとは違って見えてきた。サンソンの生きた時代、カオスとデカダンス、彼の美学とリリシズムをどうやって音楽に投影するべきか、試行錯誤を繰り返している。白井晃さんの音楽構成案に繰り返し登場する「重低音」というキーワードを濃密に脳内ループさせながら。