サウナで心身ともにスッキリ「ととのった」状態で、アートを鑑賞することができたら……どんな風に見えるのだろう?
そう思いついたとして、まさか本当に、展覧会会場にサウナを造ってしまうなんて。アート集団・チームラボが派手にやってくれた。六本木の特設会場にて、2021年3月22日(月)から8月31日(火)までの期間限定で開催される『チームラボ & TikTok, チームラボリコネクト:アートとサウナ 六本木』の様子と見どころをたっぷりお届けする。もう最初に感想を言ってしまうけれど、これはすごく変テコで面白い!

会場は六本木の蔦屋書店のお向かいにある

会場は六本木の蔦屋書店のお向かいにある

ととのったこと、ありますか?

本展では、「サウナ→冷水シャワー→アート鑑賞しつつ休憩」を3セット繰り返すことが推奨されている。急激な体温変化で追い込まれて交感神経優位になった身体を休憩させると、今度は副交感神経が優位に変わる。繰り返すうちに、副交感神経優位のリラックス状態なのに、交感神経優位の脳内物質(アドレナリン、セロトニンといったハイテンションな物質)もちゃっかり分泌されている……という不思議な “全部乗せ状態” が訪れるという。サウナ界では「ととのう」と表現されている状態だ。ちなみに、この言葉が浸透する以前は「サウナトランス」とも言われていたそうな。

感覚としては、体はくつろいでいるけれど頭が冴えている、感覚が研ぎ澄まされた状態である。もちろん「ととのう」感覚がはっきりあるかどうかは個人差があり、必ずしも特別な境地が垣間見えるとは限らないけれど、それでも実際にサウナ愛好家たちの間で脈々と受け継がれてきた、心身をととのえる文化。チームラボは歴史を遡り、古くは室町時代の「淋汗茶の湯」にまでそのルーツを辿っている。

チームラボ《呼応するランプのアレイとスパイラル - ワンストローク, Metropolis Tokyo》 (C)チームラボ(写真=オフィシャル提供)

チームラボ《呼応するランプのアレイとスパイラル - ワンストローク, Metropolis Tokyo》 (C)チームラボ(写真=オフィシャル提供)

黒をベースにした会場内はかなり薄暗い。まずは、エリアを横断して無数のガラスのランタンが吊り下がった作品《呼応するランプのアレイとスパイラル - ワンストローク, Metropolis Tokyo》が出迎えてくれる。サウナ室への人の出入りをきっかけに、それぞれの部屋ごとの色で光が伝播していくインタラクティブな作品だ。

果たして、自分は具合よく「ととのう」ことはできるのか。そして「サウナ→冷水シャワー→アート鑑賞しつつ休憩」×3セットの先で観るアートは、一体どんな風に見えるのだろうか? 館内着とレンタル水着(無料!)に着替えて、いざサウナ室へ。

お好みの色と香りに包まれて……

Fire Redのサウナ室はほうじ茶のアロマ(写真=オフィシャル提供)

Fire Redのサウナ室はほうじ茶のアロマ(写真=オフィシャル提供)

展覧会の一部とは思えないほど、思いっきりサウナである。会場内には全部で7つのサウナ室があり、それぞれ異なった温度・湿度のバランス、さらに色や香りが設定されている。各室の扉前には解説のほかに「空きあり」「満席」といった混雑状況の目安が随時表示されるので、余裕をもって楽しめる部屋を選ぶといいだろう。

画像でも分かるように、更衣スペース以外は基本的に男女の別は無いので、老若男女が一緒に楽しむことができる。各自が身体を追い込んでいるので正直他人どころではないだろうが、ちょっと抵抗あり……という方は、7室のうち2つは女性専用となっているので、そちらを活用するのもいいだろう。

Static Pink(女性専用)は微かにジンジャーのアロマ(写真=オフィシャル提供)

Static Pink(女性専用)は微かにジンジャーのアロマ(写真=オフィシャル提供)

スタッフがサウナストーンにアロマオイル入りの水を掛けると、ジュワッと水蒸気とともに香りが立ち上って気持ちいい(これをサウナ用語で「ロウリュ」というらしい)! 香りを感じづらい場合はサウナの上段に座るとより分かりやすくなるそうだ。5〜10分を目安として、じんわり汗をかこう。

いざ、勇気をもって1分間

サウナに続いて、冷水エリアへ。ちょうど冷水シャワーブースの入口部分に、チームラボの作品《円相に迷い込んで》が展示されている。噴出するミストがスクリーンのようになって、映像を映し出す。公式ホームページなどで見られる作品画像がこちらだ。

チームラボ《円相に迷い込んで》 (C)チームラボ(写真=オフィシャル提供)

チームラボ《円相に迷い込んで》 (C)チームラボ(写真=オフィシャル提供)

またまた上手く加工して……とお思いだろうか。こちらの画像もご覧いただきたい。無料レンタルできる防水ケース越しに、筆者がスマートフォンで撮影したもの(無加工)だ。

チームラボ《円相に迷い込んで》

チームラボ《円相に迷い込んで》

本当にこんな感じなのである! サウナ後でぼうっとした頭で眺めると実に美しい。蝶々に誘われるように、シャワーへ。容赦無く冷水が出てくるが、なんとか1分間は堪えることが推奨されている。これは繰り返すたびに段々と平気になっていくので、最初の1回の勇気が肝心だ。ちなみに冷水シャワーエリアはもう一箇所あり、そちらでは《円相を通り抜けて》という作品を鑑賞することができる。

オーバーヘッドシャワー&肩下シャワーの2種類が用意されている親切設計。できるだけ髪を濡らしたくない場合は肩下タイプをセレクトしよう(写真=オフィシャル提供)

オーバーヘッドシャワー&肩下シャワーの2種類が用意されている親切設計。できるだけ髪を濡らしたくない場合は肩下タイプをセレクトしよう(写真=オフィシャル提供)

取材時には、レンタル水着の上から半袖・半パンの館内着を着用して臨んだ。館内着は恥ずかしくない程度の露出でありがたいのだが、冷水シャワー(男女の別無し)の際に着たままで浴びると、少し冷え込むかもしれない。思い切って水着で挑むのもいいだろう。

アート浴1:雨音の中で花になる

冷水を浴びた後は、いよいよアート鑑賞へ進もう。会場には3つのアート浴エリアがあり、3セットでそれぞれ違った作品を楽しむことができる。順路は特にないのだが、個人的にオススメと思う順で紹介したい。

チームラボ《降り注ぐ雨の中で増殖する無量の生命 - A Whole Year per Year》 (C)チームラボ(写真=オフィシャル提供)

チームラボ《降り注ぐ雨の中で増殖する無量の生命 - A Whole Year per Year》 (C)チームラボ(写真=オフィシャル提供)

まずは《降り注ぐ雨の中で増殖する無量の生命 - A Whole Year per Year》。ベンチに腰掛けて、視界の左右いっぱいのスクリーンを埋め尽くしていく花の一生を眺める作品だ。花は季節のものが数種類用意されているそうで、取材時には春の花を3種確認することができた。この映像はもともと作ってあるものをループ再生しているのではなく、鑑賞者の位置や動きを踏まえてリアルタイムで生成されているのだという。

チームラボ《降り注ぐ雨の中で増殖する無量の生命 - A Whole Year per Year》 (C)チームラボ(写真=オフィシャル提供)

チームラボ《降り注ぐ雨の中で増殖する無量の生命 - A Whole Year per Year》 (C)チームラボ(写真=オフィシャル提供)

花の輪郭は淡い金色で縁取られ、いつかどこぞのお寺で見たような屏風を思わせる。感覚が研ぎ澄まされた状態で眺めると、その金色がより強く輝いて見えてくるのだとチームラボのメンバーが解説をしてくれた。心を空っぽにして眺めていると、足の先から血がジワリと巡っていく感覚と、目の前で植物が葉やツルを広げていく姿がリンクする。

アート浴2:ロマンティック過ぎるクリスタルな雨

チームラボ《生命は結晶化した儚い光》 (C)チームラボ(写真=オフィシャル提供)

チームラボ《生命は結晶化した儚い光》 (C)チームラボ(写真=オフィシャル提供)

そして、なんという写真映えぶりだろうか! 鏡で囲まれた空間に光の雨が降り注ぐ《生命は結晶化した儚い光》では、空間全体を眺めるのはもちろん、その雨の中に入っていくことが可能だ。輝く結晶に触れると、全体の光の方向や強さに刺激が加わる。ここは会場の中でもおそらく最も人気の高いフォトスポットになることだろう。

チームラボ《生命は結晶化した儚い光》 (C)チームラボ(写真=オフィシャル提供)

チームラボ《生命は結晶化した儚い光》 (C)チームラボ(写真=オフィシャル提供)

光の雨は私たちが浴びている電気信号のようにも見える。自分という存在は大きな連続性の中にいて、すべては見えないところで作用しあっている……そんなメッセージを読み取れる作品だ。しかしまた単純に「きれい!!」でも正解だと思う。心身を解放することで美しいものをより一層美しく感じるということこそ、今回のチームラボの狙いそのものなのだ。

アート浴3:色彩と形態の新しい把握

3つめの《空中浮揚》はぜひ最後に、最も感覚がととのってきたタイミングで鑑賞してみてほしい。光る球体が中空に浮いているだけの、シンプルながら奥深さを感じさせる作品だ。風船のような球体は、上がったり下がったり、静止したりを繰り返す。血流のせいか脳内物質のせいか、見たこともないほど鮮やかな色を感じて驚いた。

チームラボ《空中浮揚》 (C)チームラボ(写真=オフィシャル提供) 上昇しているときは赤く光る

チームラボ《空中浮揚》 (C)チームラボ(写真=オフィシャル提供) 上昇しているときは赤く光る

糸で吊っているわけでなく、モノが重力を無視してただ浮いているという状況は、目の前にしてみると軽く混乱する。柔らかく、たまに地面に触れると軽くボヨンと弾む球体は生物の卵(らん)そっくりだ。さらに、じっと見つめていると急に奥行きが掴めなくなり、目の前に “球” ではなく二次元の “円” が口を開けているようにも見えてくる。

チームラボ《空中浮揚》 (C)チームラボ(写真=オフィシャル提供) 下降するときは青く光る

チームラボ《空中浮揚》 (C)チームラボ(写真=オフィシャル提供) 下降するときは青く光る

足元がふわふわするような、大声で笑いだしたいような状態はしばらく続いた。これが「ととのう」なのだろうか! 体験時間は入館から退館までで100分。それこそサウナの12分計のように、時計の針があっという間に進むのだった。

温水シャワー・更衣室には各種アメニティを完備。体験後はストレス無く六本木の街へと戻っていけるのがうれしい(写真=オフィシャル提供)

温水シャワー・更衣室には各種アメニティを完備。体験後はストレス無く六本木の街へと戻っていけるのがうれしい(写真=オフィシャル提供)

暮らしに花を咲かせましょう

最後に、会場外で楽しむARコンテンツを紹介しよう。本展のメインパートナーであるTikTokとチームラボが連携した新作《生命はどこであろうと強く咲く》は、ARビデオフィルターを使い、鑑賞者のいる場所をどこでもアート空間に変えてしまう作品だ。

《生命はどこであろうと強く咲く》teamLab and TikTok,2021(写真=オフィシャル提供)

《生命はどこであろうと強く咲く》teamLab and TikTok,2021(写真=オフィシャル提供)

カメラを向けた場所で、次々と花が生まれては散っていく。その空間の広さや太陽の位置によって、花の大きさや光の当たり具合も変化するところが心憎い。展覧会公式サイトを介してTikTokアプリをダウンロードして行くと、本展のチケットが500円引きになるキャンペーン(先着1万名)も実施中なのでお見逃しなく。

夜の六本木ヒルズに咲かせてみた

夜の六本木ヒルズに咲かせてみた

『チームラボ & TikTok, チームラボリコネクト:アートとサウナ 六本木』は、「美術館・宮殿などの “高級な場所” でアートを鑑賞するのではなく、自らが “最高の状態” になってアートを体験する」というチームラボのユニークな実験だ。現代アートの展覧会会場にサウナがあることはこの先滅多に無いだろうから、8月末までの会期中にぜひ体験してみてほしい。自分にとって思いもよらない思索や、見たこともない色彩と出会えるチャンスかもしれない。

文・写真=小杉美香 写真(一部)=オフィシャル提供