アコースティックライブ「LiVE is Smile Always〜unlasting shadow〜」  2021.3.14

悲しみ、葛藤に包まれた夜から、希望の光が差し込む朝、そして、新しい明日へーー。3月14日に配信されたアコースティックライブ『LiVE is Smile Always〜unlasting shadow〜』でLiSAは、まるで1本の映画を観ているかのような、豊かな物語を描き出してみせた。その根底にあったのは、“この状況をみんなで乗り切り、未来に向かって進んでいきたい”という決意だったと思う。

この配信ライブは、2月22日に東京・Zepp Hanedaで行われた公演を映像化したもの。約1年ぶりに観客の前で歌ったLiSAは、喜びや感動を露わにしながら、エモーショナルなステージを展開。選曲、アレンジ、演出を含め、有観客ライブの新しい在り方を示してみせた。

最初に聴こえてきたのは、静かに降る雨の音。野間康介(Key/Pf)による繊細なピアノなフレーズが広がるなか、LiSAがゆっくりとステージに登場し、<雨の雫みたい 迷いながら 落ちていく>というフレーズとともに、最初の楽曲「ASH」(シングル「ASH」/2017年)を披露する。最後の<こんな世界で 何を刻めるのだろう 僕たちの 今>という歌詞は、先が見えない現状と強くリンクし、早くも大きな感動を生み出した。

「こんばんは、LiSAです!」と挨拶した彼女の目には溢れんばかりの涙。「みんなの拍手をもらったら、感動してしまって。ここで歌える大切さ、感動を全員に届けます」という言葉とともに放たれたのは、「紅蓮華」(シングル「紅蓮華」/2019年)。昨年以降、いろいろなメディアで耳にした楽曲だが、ピアノ1本のシンプルなアレンジにより、この楽曲が持つ普遍的なメッセージがまっすぐに伝わってきた。視聴者からの「アコースティックの方が迫力がある」というコメントが示す通り、彼女の歌の強さをダイレクトに体感できるパフォーマンスだったと思う。

「聴かせる曲、たくさん持ってきました。みなさんにも力を貸してもらわないといけないところも多々あります、OKですか? 愛と思いやりを持って、ここにいるみんなで最高に楽しい1日にしましょう。ピース!」という言葉、そして、アコギ、ドラム、手拍子が気持ちいい一体感を生み出した「BRAND NEW YOU」(シングル「dawn」/2021年)の後は、深い感情が刻まれた楽曲が続く。打ち込みのトラックのなかでLiSAがグロッケンを演奏、無数の星を想起させる照明とともに幻想的な雰囲気を作り出した「変わらない青」(シングル「crossing field」/2012年)。ジャズのテイストをたっぷり含んだピアノが響き、肩を露わにしたLiSAがピアノの上で横たわりながらセクシーなパフォーマンスを繰り広げた「蜜」(アルバム『Launcher』/2015年)。楽曲の世界観に寄り添った演出とステージングは、彼女の高いエンタ—テインメント性を改めて証明していた。

圧巻だったのは、この後のバラード3曲。冒頭でサビのフレーズ<じっと見つめた キミの瞳に映ったボクが生きたシルシ>をアカペラで歌い、オーディエンスの感涙を誘った「シルシ」(シングル「シルシ」/2014年)。真っ赤な照明、深紅のムービングライトのなかで熱唱、コーラスのNonaとのハーモニーによって楽曲のスケール感をさらに増幅させた「炎」(シングル「炎」/2020年)、そして、ピアノ、アコギ、パーカッションの有機的なアンサンブルと<私の願いはただ‥/どうか貴方が幸せでありますように>という祈りが共鳴した「unlasting」(シングル「unlasting」/2019年)。この3曲はすべてアニメ作品のタイアップ楽曲だが、現在の社会のムードとも強く重なり、よりリアルなメッセージ性をまとまっていた。共通しているのは、“どんな状況になっても、自分自身の生をしっかりと刻んでいきたい”という切なる願い。濃密な感情を放つLiSAの歌声に対し、視聴者からもすさまじい数の感動コメントが寄せられた。

しなやかなドラム、観客のハンドクラップ、バンドメンバーの<Welcome to the dawn of a new era>というコーラスに導かれた「dawn」(シングル「dawn」/2021年)からライブの雰囲気は一変。舞台全体が明るく照らされ、まさに“夜明け”を感じさせるシークエンスへ移行した。

「幕が明けました! 今回は“unlasting shadow”というタイトルで、1年半前から準備をしていました。最初は暗いところから、どんどん明るくなっていくイメージでまライブを作っていこうと、練り練りしました。1年経って、徐々に暗いところから、明るい感じになってまいりましたね!」「ここからは希望を込めて、会いたい人に会えた!ということも込めて、ポップなメドレーにまいりたいと思います!」

というMCを挟み、「KiSS me PARADOX」(シングル「crossing field」2012年)からはじまるメドレーへ。人気曲「オレンジサイダー」(シングル「Rally Go Round」/2015年)、初期の名曲「妄想コントローラー」(ミニアルバム『Letters to U』/2011年)、ライブアンセムの一つである「say my nameの片想い」(アルバム『LANDSPACE』/2013年)、NHK『みんなのうた』で放送された「リングアベル」(シングル「リングアベル」/2017年)などを繋ぎ、華やかで前向きなムードを生み出していく。LiSAのポップサイドを集約したこのコーナーも、今回のライブの大きなポイント。「無事、完走できた! 詰め込むの大変だったー! ここのリハ、めちゃめちゃやりました」と笑顔で観客に話しかけるLiSAも、このライブを全身で楽しんでいるようだった。

LiSAが叩くスネア、バスドラのリズムに合わせて、観客が手拍子で応える“コール&レスポンス”からライブは終盤へ。心地よい解放感に満ちたバンドサウンド、圧倒的なポジティブに貫かれた歌が響き合う「Rally Go Round」(シングル「Rally Go Round」/2015年)、<今日の日を楽しもう精一杯>という約束をテーマにした「やくそくのうた」(シングル「紅蓮華」2019年)によって、アコースティック・ライブの概念を超えるような高揚感を生み出した。

「ここにいるみんなが叶えてくれた今日です。本当にどうもありがとう。できることは少しかもしれない。一歩一歩かもしれない。だけど、きっとね、この先には最高の未来が待ってると私は思ってます」という真摯な言葉に導かれた本編ラストは、「ハウル」(シングル「unlasting」/2019年)。オーガニックな音響、きらびやかなライティング、<今日を越えていけ/枯れるまで吠えてやれ>というラインが一つになったこの曲は、時間をかけて練り上げてきて、この日のライブのスタイルを象徴していたと思う。

アンコールを求める手拍子に導かれ、白いドレスに身を包んだLiSAが再びステージに登場。「今年2021年4月で私は10周年を迎えます。この10年、いろんな人に出会いながら、いろんな出来事に出会いながら、喜んだり、泣かされたり、いろんな思いを感じさせてもらいました。それは、そのときどきにいてくれた、みんなが作ってくれたサプライズのような、希望の光のようなものだなったなと思います」と語り掛けたあと、新曲「サプライズ」を披露。さらに「アコースティック・ライブだけど、最後、元気にいっちゃうよ!」と「best day, best way」(シングル「best day, best way」/2013年)でナチュラルな一体感を演出し、ライブはエンディングを迎えた。

配信では終演直後のLiSAのコメントも。「新しい形、新しい一歩を進めた気がしました。ライブできるなと思ったし、こうやってみんなと作るライブもアリだなって」と嬉しそうに語る彼女自身も、この先のライブに対する確かな手ごたえを感じていたようだった。この時代におけるライブのスタイルを示すと同時に、10周年のアニバーサリーに向けて最高のスタートとなる、意義深いライブだったと思う。

取材・文=森朋之  撮影=Viola Kam (V'z Twinkle)