2021年夏、オフ・ブロードウェイミュージカル『The Last 5 Years』が小林香による新演出で上演される。2021年6月28日(月)〜7月18日(日)に東京・オルタナティブシアターにて上演、その後は大阪公演も予定されている。

本作は2001年にアメリカ・シカゴで初演されてからオフ・ブロードウェイへ進出し、その後世界各国で上演され、2014年には映画化もされた人気作だ。日本で2005年、2007年、2010年に鈴木勝秀演出で上演されている。作詞・作曲・脚本は『パレード』や『Songs for a New World』で知られるジェイソン・ロバート・ブラウンだ。
最大の特徴は、二人の男女の5年間の愛の軌跡がそれぞれの視点、かつ異なる時間軸で進んでいく点にある。女優の卵のキャシーは未来から過去へ、小説家のジェイミーは過去から未来へ。よくある男女のすれ違いを斬新な構成とドラマチックな音楽で鮮やかに描き出す本作に出演するのは、木村達成×村川絵梨、水田航生×昆夏美、平間壮一×花乃まりあという3組の魅力的なペアだ。

今回は同じジェイミー役を務める木村達成、水田航生、平間壮一の3人に話を聞いた。ビジュアル撮影時の思い出、新演出版への期待、それぞれの作品への意気込みを語る彼らから、全くタイプの異なるジェイミー像が浮かび上がってきた。

ーーまず、出演が決まったときの心境を教えてください。

平間:出演が決まる少し前にたまたまミュージカルのサントラを調べていて、「この曲いいじゃん」と思って聴いていたのが『The Last 5 Years』の曲でした。「自分もこんな風に歌えるようになったらいいな」と思っていた矢先にやらせていただけることになったので、かなり焦りがありましたね。これから頑張ります!

水田:お世話になっている山本耕史さんや事務所の先輩の村川絵梨さんが出演していたので、作品のことは知っていました。耕史さん自身もこの作品が好きで、すごく曲がかっこいいという話も聞いていて、「まさかその役を自分がやるなんて!」というのが一番最初に思ったこと。出演のことを耕史さんに伝えたら、「本当に難しいぞ」とプレッシャーをかけられました(笑)。どこまで高めることができるか恐怖を感じつつ、自分に期待を持ちながら稽古していきたいです。

木村:映画版のアナ・ケンドリック(キャシー役)とジェレミー・ジョーダン(ジェイミー役)がうますぎてすごいプレッシャーを感じましたが、舞台にぴったりな作品だと思いました。僕と一緒にペアを組む村川さんは2010年にこの作品に出演されていたので、そこは安心しました。ビッグナンバーばかりですし、意外とデュエットが少なくソロ曲が多いんです。素敵な瞬間を作れたらいいなという気持ちと、二人芝居で歌い上げることのプレッシャーを感じています。頑張らなきゃなという気持ちですね。

木村達成

木村達成

ーー今回は3組のペアで上演するという点がすごくおもしろいですよね。同じジェイミー役をこのメンバーでやると知ったときはどうでしたか?

平間:全員役者さんでよかったなぁ、とまず思いました。『お芝居の延長線上で歌う』ということを大事にされる方々だなと感じたので、安心感がありました。

水田:僕は知っている人でよかったなというのと、逆に知っている人だからこそ、あの二人はどうやってやるんだろうという興味もあります。ただ、僕は同じ役の人の芝居はあまり観たくないタイプなんです。興味はあるけれど、それに影響されちゃうのが怖い。でもこの二人なら、マイペースにやれる気がするなと思いました。

木村:僕も二人とも知っている方なので楽しみです。もし二人の芝居を観るのであれば、ジェイミー役の彼らではなく、その相手役のキャシーの二人を観てみたいなと思いました。自分が一緒に演じている村川さんのキャシーと、他のキャシーはどう違うんだろうっていう。でも、やっぱり自分と同じジェイミー役の二人を観るのは抵抗ありますね(笑)。

平間:そうだね、キャシーなら観たいかも。

水田:でも、僕はちょっと飲んでからじゃないと観れないな。それくらいがちょうどいいかも。自分は千秋楽を終えて最後にどちらかのペアがやっているとき、一杯ひっかけてから昆ちゃんと観ようかな(笑)。

ーー先日素敵なビジュアルが公開されましたが、ビジュアル撮影のときにそれぞれ相手役の方とお話はされましたか?

木村:話すとかより恥ずかしいという気持ちが勝ったかな。フルーツの食べさせ合いみたいなことやらなかった?

水田:僕は生ハムとかチーズでやったよ。

木村:その食べさせ合いが恥ずかしかったな〜。撮影中は動いているけど、実際に撮る瞬間は静止画になる。だから「あーん」ってやって、口に入るか入らないかという瞬間で止まらなきゃいけないのが一番恥ずかしかったです。ド緊張(笑)。

平間:めちゃくちゃよかったよ、写真。

(左から)木村達成、平間壮一、水田航生

(左から)木村達成、平間壮一、水田航生

木村:本当?

平間:撮影の一番手だったもんね。だから「どんな感じだったんですか?」って見せてもらったの。

木村:撮影中は「あいつこういうのできないんだ」って舐められちゃいけないなと思って、余裕な感じで「あ、了解です。ここでこうやればいいんですか?」と平静を装っていたんです。こんなところで恥ずかしがっていたら今後うまくやっていけないなと思って、あえてガンガンいきました! でも、そこに行き着くまではちょっと時間がかかりましたね(笑)。

ーー相手役の村川さんの印象は?

木村:僕は元々野球をやっていて、以前村川さんが出演されていた野球のドラマを見ていたこともあって、ちょっとミーハー心が出ちゃいました。「この人と一緒に恋人役やるんだ!」っていう。だから緊張したんだと思います。

平間:あはは(笑)。

水田:ミーハー心から緊張したの?

木村:そう! 普段そういう気持ちになることってあまりないんですけど、当時の記憶が蘇って……。

水田:印象じゃなくないそれ?(笑)。

ーー(笑)。平間さんは、花乃まりあさんとの撮影いかがでしたか?

平間:空気が丸くて、近寄ったときに刺々しさがない方だなぁと感じました。僕もこういう写真はあまり撮ったことがないから緊張するだろうなと思っていたけれど、意外と緊張せずに最初からガッツリ触れ合っていけたかな。でもそれは花乃さんの空気感がそうさせてくれたわけで。これはうまくやっていけそうだなと思いました。

水田・木村:さっすが!

ーー水田さんは昆夏美さんとの撮影でしたね。

水田:僕は3番目の撮影だったんです。しかも二人の撮影から少し期間が空いていたので、二組の写真がセレクトされている状態だったんです。完璧にできているものを見たのでプレッシャーを感じました。しかも壮一くんがカメラマンさんに「航生はこういうの大丈夫だから」と言ったらしくて、何が「大丈夫」なのかと(笑)。でも昆さんはほぼ同い年で本当に気さくな方だし、「共通の知り合いが多過ぎて初めましてじゃないみたいですね」「緊張するね〜」「これでいいのかな?」と話しながら、とても楽しい撮影ができました。撮影のあとも「もう敬語はやめようよ」とか、会って最初にするような会話をクリアできたので、稽古場では最初から割と踏み込んで話ができるんじゃないかなと思います。

水田航生

水田航生

木村:羨ましい! 「敬語やめよう」のくだり、僕もやればよかった……。

水田・平間:ははは(笑)。

木村:「なんて呼んだらいいかな?」とかいうやつでしょ?

水田:うん、やってないの?

木村:やってない。やればよかった〜!

ーー既にみなさん本作の過去の公演映像や映画版をご覧になっていると思います。その中で一番最初に感じた作品の魅力はどんなところでしょうか?

木村:ストーリーの中で、どこかしらみなさん共感できるポイントがあると思うんですよね。僕たちは日本人で彼らはアメリカ人ですけど、男女で起こり得ることで共感することがあると思います。そういうところが、お客様の心をグッと引き込んで前のめりにさせるスパイスのひとつなのかな、と。

平間:一番の魅力は曲じゃないですか。言ってしまえば、物語の中でジェイミーとキャシーはすごく人間味のあることをしている。すれ違いや、誰かが悪いわけではないようなことなど、ストレートプレイでやったらより深い人間らしい話になりそうだけど、そこをあえて音楽で表現しているのがこの作品の魅力かなと思います。

水田:「人間って完璧じゃないよね」ということが、作品全体を通して思うことです。完璧じゃない様を役者さんたちが完璧に演じているということも、この作品のおもしろさだと思います。こねくり回したテーマではないですし、エゴや嫉妬、浮気心など、人間味のあるところが一番の魅力だと思います。

ーーご自身が演じるジェイミーという人物については、どう捉えていらっしゃいますか?

平間:“男”って感じですね。ジェイミーという人間というよりは、思うがままに進んでいる男。女性はこういう男嫌いなんじゃないかなっていう(笑)。

水田:でも、女性って本能的なものでジェイミーのような男に興味が湧いてしまうんじゃない? アグレッシブな感じとか、後先考えずに進むところとか。

平間:確かに。でも絶対キャシーの友達はジェイミーのこと大嫌いだと思う。「あいつはやめときな」ってきっと言われてる(笑)。

水田:うんうん。ジェイミーのイメージとしては、“バカ男”っていう感じですね。

ーー木村さんはどうですか?

木村:共感できる部分が多いので、文化はあまり関係ないんだなって思いました。アメリカンドリームを掴んだときに周りが見れなくなっていくジェイミーの気持ちも、それに対するキャシーの嫉妬もわかります。理解している分、お客様に明確に伝えることが可能なんじゃないかなと思っています。

(左から)平間壮一、木村達成、水田航生

(左から)平間壮一、木村達成、水田航生

ーー本公演は小林香さんによる新演出となりますが、その点についてどんな期待をされていますか?

水田:以前の公演では鈴木勝秀さんが演出されて、脚本自体も男性が書いたものなので、男目線の脚本を男の方が演出する良さがあったと思います。今回は(小林)香さんが演出することによって、これまでの日本版にはなかった視点や、違った角度で演出されるのではないかと期待しています。香さんはとても広い視野を持ちつつ細かい演出をしてくれるのですが、基本的には自由にやらせていただける演出家の方です。自分もしっかり意見を伝えて、ディスカッションの時間を大事にしていきたいなと思います。

平間:役者には感覚派の人や、すごく緻密に組み上げていく人などいろんなタイプがいて、その全ての人たちを相手にしてきたんだろうなというのが香さん。特に僕は感覚派よりで、台本を元に言葉で説明するのが苦手なんです。でも「なんか今こう感じたんですけど」と言うと、香さんは一つひとつ整理してやってくださるんです。全くタイプが違う6人の役者をどう作ってくれるのかなという期待もあります。香さんは愛を持って作品に挑んでいるイメージがあるので、新演出の『The Last 5 Years』も楽しみしかないですね。

木村:僕にとっては初めましての演出家さんなので何もわからないんですけど、優しく、ときに厳しく接してくださるとありがたいです(笑)。あとは、稽古の中でゾーンに入れるような演出があったら嬉しいなと思います。僕、作品によってゾーンに入る瞬間があったりなかったりするんです。感覚が研ぎ澄まされるような瞬間。そんな瞬間が多ければ多いほど素敵な作品になると思うので、楽しみにしています。

ーー二人の男女の5年間を描くのがこの作品の特徴だと思うのですが、5年という年月をみなさんどう捉えていますか?

水田:キリがいいなって思います。この仕事を始めてから、5年刻みで役者をやるかやらないかを毎回考えているんです。5年で自分が何をしてきたか、5年経った今何を思っているんだろう、ということを再確認する機会。だから、5年刻みで人生を考えてきた僕にとって、この作品はちょっと運命的なものを感じます。

ーーちなみに、今の水田さんはその5年区切りでいうとどのあたりなのでしょう?

水田:今始まったばかりですね。10代のとき、20歳になったら役者をやるかやらないか決めようと思って、その次に25歳のときに考えて、そして今30歳でまた考えて。

平間:じゃあ、やめなかったんだ?

平間壮一

平間壮一

水田:やめなかったねぇ。余命5年で生きてる感じだよ。

木村:すごいねえ。でかめのセミだね。

水田:何でそこセミなの?(笑)。

ーー(笑)。平間さんと木村さんはいかがですか?

平間:自分的にはあっという間というか、短いなという感じ。自分自身、根っこにある部分がぶれていないんです。アンサンブルをやっていたときから時が経って、今やっていることは全然違う。けれど気持ち的には別に変わっていないんです。女性と付き合うにしても、5年とかいくことが当たり前で付き合っていきたい。5年ってすごい時間だとは、あんまり自分の中で思っていないかもしれないです。

木村:5年は短いようで長いですね。僕は今1周回って、5年前の23歳くらいのテンションに戻っているような気がします。当時、理由はないけど自信があるという、例えようのない湧いてくるものがあったんです。そこからいろんな作品を通して、「ちゃんとやらなきゃ」とか「理由のない自信なんてダサいな」とか考えて、なんだか自分が自分でなくなっていくような瞬間がありました。それがすごく嫌で。だから、今の気持ち的にはまた23歳くらいの感覚に戻っています。説明のつかない自信みたいなものって、1周回って最強なんじゃないかなって。子どもみたいかもしれないけれど、そういう考えってジェイミーという役にも結構ハマっていると思うんです。

ーーそれでは最後に、一言ずつメッセージをお願いします。

木村:尖った、この5年間を経て根拠のない自信を会得した木村を、ぜひ劇場で堪能してください。

平間:傷の舐め合いをしに観に来てください。「そうそう傷ついたことあるよね」と、みんなで共感できる空間になればいいなと思います。

水田:作品を観て何かを感じ取ってもらいたいです。人の心に触れることによって、観た人のそれぞれの日常の幸せや尊さを感じていただければ。エンターテインメント性にも富んでいる作品だと思いますので、ぜひ劇場に足をお運びください。

(左から)平間壮一、水田航生、木村達成 

(左から)平間壮一、水田航生、木村達成 

■木村達成
スタイリスト:部坂尚吾(江東衣裳)
ヘアメイク:齊藤沙織
衣裳:トップス ¥37,400、パンツ ¥31,900(INVERT / AMAN 03-6418-6035)、シューズ ¥70,400(JOSEPH CHEANEY)

■水田航生&平間壮一
スタイリスト:岡本健太郎
ヘアメイク:菅野綾香(ENISHI)
 

取材・文 = 松村 蘭(らんねえ)  撮影=池上夢貢