オンライン演劇を主軸に活動する創作集団・劇団ノーミーツは、2021年5月4日(火)深夜24時から5月5日の日の出にかけて、特別公演『夜が明ける』を公演した。深夜からの配信にもかかわらず同時視聴数は650人を超え、公演が終わる5時には視聴者370人とともに、『夜明け』を迎え、「待つことを教えてくれてありがとう」「猛烈に救われた」「こんな風に夜明けがくるまで火を焚いていたい」など、多くの共感の声が届いた。

舞台は浜辺、波打ち際。ある男が深夜、焚き火をしながら「夜明けを待っている」。



最初に通りがかり声をかけたのは浜辺の近くに暮らす隣人。明るく、親しげに話しかける彼は自分なりの「待ちのスタイル」があると話す。接客業をしていた彼はコロナ禍で状況が一転し、「このままじゃだめだ」と周りに働きかけ続けたが、変わらない状況にやるせなくなり昔のことを考えて逃避しているのだと明かした。隣人は男が夜明けを信じて「待ち続ける」姿を羨み、「待つしかないね」と話しながら一緒に火をくべて、去っていった。



次にやってきたのは、ギャラリーを運営する女性。アーティストを支援していた彼女は、コロナにより仕事が無くなる。もちろん、支援していたアーティストたちも輝く場所を失ってしまった。「あるのに無くなってしまった。この夜の海のように、暗くて見えない。今止まっている時間って、この先々まで止まるのかな」とこぼす彼女。最後に、夜が明けたらやっぱり仕事がしたいと話して立ち去った。



さらにやってきたのは、会社員の男性。彼は「待つことがそわそわする」と話す。コロナ禍で時代が大きく変わった中で何をしたらいいか分からず、ゲームにも打ち込めない。最近、安心したのは教習所に行ったとき。「やることが決められたことに安心した」のだという。男とともに火を囲んで対話する中で彼が見つけたのは「みんなで一緒に待ったらいい」ということ。いつか夜明けが来るなら待てると話し、彼は仕事に戻っていった。



最後にやってきたのは、スマホを手にした女性。突然撮影しながら話しかける彼女は、夜明けを待ち続ける男に対して「待つことが苦手」だと話す。彼女は不意に「先程2年付き合った彼氏に振られた」と打ち明ける。移動が制限され、会えない中でも我慢して待ち続けていたところ、振られてしまったのだという。「やりたいことがたくさんあった」と彼との未来が無くなったことに絶望しながらも、今自分の「やりたいこと」に忠実に生きると誓い宣言し、明るく彼のもとを立ち去った。



一人、薪割りを続ける男。火をくべるが、少しずつ火が小さくなり、空が白み始める。



男の体力が尽きかけてきた瞬間、最初にやってきた隣人が戻ってくる。「ずっと待っていたの?叶いませんなあ」と笑いながら、彼の薪割りを手伝いはじめ、続々とこれまでの登場人物が戻ってくる。女性が持ってきたマシュマロを焼いて、これまでバラバラだった登場人物たちが接点を持ち始め、談笑するうちに、いつの間にか、夜は明けた。夜明けを見届けて、人々は静かに去っていった



■劇団ノーミーツのメッセージ(クリエイティブディレクター・鈴木健太)

夜が明けました。
およそ5時間の生配信公演。
300人以上の方に5人の夜明けを見届けていただき、キャスト・劇団員一同感謝の気持ちでいっぱいです。
正直、夜が明けるのかもわからない世界。それでも、みんなで必死に小さな火を灯し続けることができたら、少しだけ前向きになれるかもしれない。というか、今はそれしかできない。
この企画はゴールデンウィークの直前に立ち上がりました。企画から稽古、公演日までわずか一週間。社会情勢に対するある種の絶望と、それでもどうにかして前向きな気持ちになるために、自分たちに課した作品でした。
この作品の主人公のように、これからも小さく弱々しい火を灯し続けながら、もうしばらく夜明けを待つことにします。