1907年にニューヨークに設立された米国の民間非営利団体(NPO)ジャパン・ソサエティー(JS)が、1年4カ月ぶりに劇場での公演再開。2021年6月23日(水)〜27日(日)ニューヨークのジャパン・ソサエティー内にて、VR (バーチャル・リアリティ)演劇公演『ダークマスター』が上演される。

元精神科医にして、劇作・演出家であるタニノクロウによる『ダークマスター』は、自己と他人、他者による支配、さらに他者が自己の中で同化していく様を描いた実験的演劇。狩撫麻礼の原作による同名短編漫画をタニノが脚色・演出し、2003年の初演以来、日本各地とフランス、オーストラリアなどで上演されてきた。

もともとは生の役者が出演する舞台作品としてニューヨーク公演が予定されていたが、コロナ禍の影響でオリジナルの形での公演が困難となった。そこで、JS芸術監督と共にVRバージョンでの公演の可能性が模索され、2020年10月の東京芸術劇場での上演を経て、ついにニューヨークでも『ダークマスター』VR公演が行われる。

本公演では、観客はそれぞれ個別のブースの中でVRゴーグルとヘッドホンを装着し、主人公の視点を共有しながら、劇的世界を疑似体験するが、VR映像以外にも他の観客とともにライブとしての演劇体験が味わえる様々な仕掛けが施されている。ネット映像によるリモート・ワークが一気に普及したソーシャル・ディスタンス新時代に相応しく、興味深い作品といえるだろう。

 (c) Keizo Maeda

(c) Keizo Maeda

JSでは、2014年にタニノクロウ率いる庭劇団ペニノによる公演『だれも知らないあなたの部屋』の北米ツアーをプロデュースし、米国各地で大きな反響を呼んだが、その大成功を受けて本公演で7年ぶりのNY再訪となる。英語公演で、各公演定員10名で上演される。

公演概要
ある食堂にふらりと訪れた“あなた”は店の「マスター」から月給50万円で、この食堂をやってくれないかと強引に頼まれます。調理経験がないという“あなな”に、店内に取り付けられた小型カメラとイヤホンを使って指示を出すから大丈夫だと説得するマスター。イヤホンからの指示に従って調理をし、マスターに操られるままに店を切り盛りしますが、最初の出会い以降、マスターはイヤホンから指示を出すだけで“あなた”の前に姿を表しません。マスターからの声によりリモートでコントロールされる“あなた”。そして次第に“あなた”の人格と肉体に変化が起こり始めます。